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第52話 地獄の三兄弟






エルザは急降下していた。


後10秒。


あと10秒以内になんとかしなければならない。


エルザは落下しながら、さきほど倒した男のことを思い出した。


「そうだ、あの男のパラシュートはまだ使えるはず」


エルザは男のもとへと向おうと降下速度をあげた。


だんだんと、男の姿が大きくなっていく。……男はすでに、絶命して脱力しているようだった。


時速200km/hで落下しながら


エルザは、風の抵抗などを利用して、慎重に速度を落としていく。向きなどを微調整しながら、最後はぶつかるように死体へと抱きついた。


「ぐあっ!」


エルザは、かつてないくらいの力でその男を抱きしめていた。そして、すぐさま自分とその男とを、手荷物袋に使っていたカラビナで結合すると、パラシュートの紐を引いた。


パラシュートが開いた。


「くっ!」


すごい勢いで上へと引っ張り上げられる。


エルザは、男にしがみつく力を強めた。



重量が重いことと、パラシュートを開くタイミングが遅かっためか、落ちるスピードが速い。


急速に地面が近づいてくる。


エルザが男と向い合せで落下していることや、男がすでに死亡していることもあって、まともな着地が期待できない。



できるだけ着地の衝撃を回避して、転がりながらうまく勢いを殺せるように、エルザは少しでも良い位置取りを探そうと体を動かしていた。


地面が接近してきた。


芝生に覆われた、勾配のない広い空間が広がっていて、障害物がないことがせめてもの救いだ。


エルザは男の死体ごと、地面に着地することになった。


意外と速度が速い。


滑るように着地することは出来ず、エルザはゴロゴロと地面の上を転がり続けた。


エルザは体を丸くしているが、死体である相方は、地面との衝撃に翻弄されて暴れ回る。


2人の体にパラシュートのコードが絡みつき、エルザは転がっていく。、エルザの体も予想外の衝撃を受けたりしていた。


そのうち転がる速度も収まってきて、やがて止まった。エルザはまとわりついているパラシュートのコードを小刀で切断し、それからゆっくりと立ち上がった。


だがその時、左足に激痛が走り、思わず地面に手を突いてしまった。


「まずい! 折れた?!」


左足の側面が、足首から脹脛、太腿に至るまで腫れあがって熱を持っていた。


どうやら骨は折れていないようだったが、左足全体が腫れて膝を曲げることも難しい感じだった。


「やばい……あいつが降りて来てしまう……」


遠くからシンディが駆け寄ってくる。そして、エルザに向かって何か叫んでいるようだった。


エルザが声のする方を見ると、シンディは空中へ向かって矢を放ち始めた。


上空から、バグがが降りて来ているのである。


しかしシンディの矢はバグに届くことなく、バグを逸れて飛んで行った。


エルザは叫んだ。


「シンディ! 逃げて。 そしてセラス様と合流して! ここは私が足止めするから!」


だが、シンディは心配そうな顔を向けてエルザを見る。


「でも!」


そんなシンディを見て、エルザは頼みこむように言った。


「お願いシンディ! ここは私に任せて、早くセラス様のもとへ! お願い!」


エルザは声をあげた。


「もし、あなたまで怪我をしちゃったら、誰が薬を王都に届けるの!」


そういうと、シンディはしばらく逡巡した後、頷いて走り出した。


「わかったよ! その代わり、絶対死んじゃダメよ! エルランディ様は、あなたにとっても大切な人なんでしょ!」


エルザはそれに、手をあげて答えた。


ああ、生きて帰るつもりだとも。


だが、相手がそう簡単には逃がしてくれそうもないけれど。


それに、近接戦闘になったら、シンディは、あの男に必ず殺されてしまうだろう。


もちろんそれは、左足が機能しないエルザだって、たいして変わりはないのだが……。


バグは、エルザを目視で確認すると、彼女の方へゆっくりと歩いて行った。


エルザは足の痛みを堪えながら立ち上がった。そして、剣を抜いてバグが近づくのを待った。


顔が見えるくらいまで近づいてくると、黒い戦闘服を身にまとい、変な形の刀を持っていることがわかった。何か仕掛けがありそうな、L字型の剣である。エルザはどんな戦い方をするのか想像もつかなかった。


バグは筋肉質の痩身で、身長は180cmほどありそうだ。金髪に白い肌が輝いて見え、青い瞳から発せられる刺すような視線が、エルザを貫いていた。


エルザは、自分に向かってくる金髪の男の黒い姿を見ながら、ジョーとかいう黒い斧使いのことを思い出していた。


「あの状況で生きて帰るとはな。たいした女だぜお前は……本当に驚いたぜ」


エルザは微笑みをたたえながら、


「あなたたち一体何者なの? 私……あなたのお仲間から、散々虐められているんだけど。ご覧のとおり、もうボロボロよ」


バグはニヤリとしながら、鼻をフンと鳴らした。


「それは、お前が殺されそうなことをやって来たからだろう」


エルザは上目遣いにバグを見ながら笑った。


「私が悪いって言いたいわけ? まさか。先週田舎から出てきたばかりなのに」


すると、バグはカラカラと笑って


「まあ、いずれにせよ、俺たちは敵同士。お互いの正義も違う。残念だがおしゃべりはこの辺にして、そろそろ斬りあうことで決着をつけよう」


バグはそういうと、剣を立て、両脇を閉じて構えた。


エルザは肩をすくめた。


「見逃してくれそうにはないわね。ボロボロだけど、タダで命は上げないわよ。腕の1本くらいは頂くつもりだから覚悟してよね」


そう言ってニヤリと笑った。


バグは目を大きく見開いた。そして、ニヤリと顔をゆがめた。


「面白い。俺の腕が奪えるものなら奪ってみろ。後で口だけの女だったと、がっかりさせるなよ?」


そういうとバグはエルザの方へと走り出した。そして正面からエルザへと斬りかかってきたのである。


変なL字形なので、先端は奥に引っ込んでいて、斬り合いには向いてない剣だとエルザは思う。形状的に、まっすぐの剣に比べて、先端が相手に届くのが遅い。


エルザはカウンターを狙う作戦で、剣を青眼に構えた。


バグの剣筋は見たことのないものだった。だがエルザはそれを冷静に見て躱しつつ斬る、攻防1動作に徹した。


斬撃を受けてから攻撃に移るとなれば、攻撃まで2動作が必要となる。だがエルザは、相手の攻撃を躱す動作が攻撃の動作を兼ねているので、1動作で防御と攻撃出来るわけである。


剣の速度を速めるには限界がある。達人の早い動きには、素人には気付かぬ工夫があるのだ。


バグは鼻を鳴らした。


「フン。動きが違うな。言うだけのことはある」


そう言うとバグは、怪我をした左足側から攻めてみることにしたが、エルザは動かない左足を軸にして、体捌きのみでバグの斬撃を躱し、前に出ながら攻撃の手を緩めないので、軽はずみな斬撃では、逆にバグが斬られてしまうほどだった。


こういう熟練の剣士は油断できない。しかし、それはバグにとって特別なことではなかった。上級者の闘いともなれば、こういう精練された技のしのぎ合いだからだ。


いつまでも、このような攻防が続くかと思われた時、突如、バグが斬撃を放ち、その勢いで刀身が外れてエルザの元へ飛んで来たのである。


「うわっ!」


エルザはのけぞるようにして躱して地面へと転がり、ひとつ前回りをするとそのまま立ち上がった。


バグが一文字に振った斬撃は、まるで剣全体が伸びたかのようにエルザへと向い、離れたその刀身はブーメランのように弧を描いて、バグのもとへと帰って行った。


一般的に、ブーメランは孤を描いて飛ぶものなので、武器として使用するには、攻撃の正確性や、投擲後の回収に難がある。


だがバグは、己の身に宿す風魔力を注いでブーメランの軌道をコントロールし、磁石か鉄を引き寄せるように、ブーメランを手元へ集めているのである。


だが、からくりがブーメランだとわかると対処はある。


なぜなら上段からの斬撃では、ブーメランが地面に突き刺ささってしまうからだ。ほとんど横からの斬撃、または下段からの切り上げるかになるだろう。


バグのブーメランはもう、エルザには当たらなくなっていた。


「なんだ、もう対応したのか」


バグは少しあきれた顔を見せた。


「足を怪我している割には動けるじゃないか。では、これならどうだ」


そういうと、もう一度、ブーメランの斬撃を放ってきた。


エルザはそれを当然のようにかわしたのだったが、そのかわした先に小型のブーメランが2枚飛んで来ていたのである。


「ぐぁっ!」


エルザは2枚の小型ブーメランと接触し、斬り裂かれてしまう。あの大振りな刀身ブーメランは、囮なのか。


エルザは歯噛みした。


バグは笑っていう。


「これは避けられなかったか。では次は3枚だがどうする?」


どうするも何も、どうやって放っているのか全然読めない。だから目視か勘で避けるしかないのだが、反射で対応するには限界がある。1枚を剣ではじいても、もう1枚が斬りかかってくる。ブーメランが2枚でも斬られているのに、3枚ともなれば対応は難しくなるはずだ。


バグは3枚の小型ブーメランを斬撃を放ってくる。エルザは小型ブーメランを避けきれず、何度も斬られてしまう。


「だいぶ血が出ているな。もう、そろそろ終わりか?」そういうと、バグはまた斬撃を放ってくる。   


バグが放った刀身ブーメランは、エルザへと向かった。


エルザは飛んで来るブーメランを、上から剣で、こん棒のように思い切り振って叩き落とした。刀身ブーメランは地面へ突き刺さった。


その瞬間、エルザは地面へと寝転がり、転がりながらバグの足を横なぎに切った。


「くうっ!」


バグは後ろに飛び上がって躱すしかなかったが、空中というのは動きが予測されやすい悪手である。


エルザは転がりながら、逃げ惑うバグの足を執拗に狙って斬撃を繰り返した。


バグは、刀身の無くなった柄をエルザの顔へと投げつけ、大きく後ろへ飛び下がった。


エルザはそれを剣で弾き飛ばし、ゆっくりと起き上がった。


「苦戦しているようだな、バグ」


エルザは声のする方へ目を向けると、パラシュート降下場の外から、2人の男が入ってくるのが見えた。その男もバグと同じく黒い戦闘服を着ている。どう見ても只者ではない。


そう声を掛けられたバグは、振り返って2人の男を見た。


「兄者! 遅いじゃないか!」


すると、2人の男は余裕の表情で笑った。


「すまんすまん。お前なら倒すだろうと思って、のんびりと構えておったのだが、手こずっているようだな。その女、ちょっとは振れるのか?」


「兄者! 侮ってはだめだぞ」


バズは警告するが、ガイは笑いとばした。


「フン! たとえどれだけ強かろうと、俺たち3人がかりで戦えば一瞬で終わるだろう。ましてや手負いの女剣士。どれほどのもんだっていうんだ」


ガイはそう言うと、ニヤリと笑った。


「ケツから剣を突き刺してやるぜ!」


そう言うと、ガイはバグに言った。


「さっさと剣を拾ってこい。女のトドメを差すぞ」


ガイはそういうと、3人で構えを取った。


「それでは行くぞ!」

「おう!」

「おう!」


3人は一気にエルザとの距離を詰める。


足の動かないエルザは、能動的に動けず、相手の攻撃を待つしかなかった。


「食らえ! 風刃12連爪!」


そう言うと。3人は同時に刃を振るった。この技は、1人4枚の刃を同時に飛ばし、大3枚、小9枚のブーメランを、一気に敵にぶつけるという恐るべき技である。


いくらエルザほどの剣の達人といえども、この死角なしの攻撃を避ける術は見つからなかった。


エルザは大きく∞マークのような軌道で刃を振って、出来る限りの風刃を打ち落とそうとしたが、あらゆる角度から、わずかにタイミングをずらして繰り出されるブーメランたちをすべて打ち落とすことは出来ず、小さい刃が3枚ほどエルザの体に突き刺さった。


そこへ、三兄弟が駆け寄って来て、3方向からエルザを取り囲み、全身の骨を打ち砕かんばかりにタコ殴りにしたのである。エルザは体を丸めて防御を取ったが、腕6本足6本からくる攻撃を防げるはずもなかった。


エルザは散々殴られた挙句、ようやく剣を振るって三兄弟を遠ざけたが、その際、ガイによって蹴り飛ばされ、発着場の端にあった岩壁に激突した。


エルザは岩壁に背中をつけたまま吐いていた。胃が痙攣して、よだれが口から垂れ流しになっている。


「俺たちがなぜ、地獄の三兄弟と呼ばれているか教えてやろう。なかなか死なせてもらえない……地獄のような痛みが続くからだ。今は死にたくないという気持ちで一杯だろうが、あと10分もすれば気も変わるだろう。……おそらくお前から懇願することになるだろうぜ。早く殺してくれってな」


エルザは岩壁に背を付けながら、三兄弟を睨みつける。荒く呼吸を繰り返し、体中に足りてない酸素を吸い込む。こんな時、リリスの言っていた窮地を逃れる力技があったらどれだけいいか……エルザはそんなことを思い出していた。


「クソみたいな話をベラベラと……何の自慢? ハッ! 笑わせるわね! 自分で地獄とか……言ってて恥ずかしくないわけ?」


エルザはそう言うと、血の混じった唾液をペッと吐いた。


それを聞いた三兄弟に額には、怒りの青筋が浮き上がっていた。


「半分、死にかけているくせに、口だけは良く回るじゃないか。吹けば倒れそうなくらい、フラフラなくせして、良くそんなデカい口がきけたもんだぜ……」


ガイがそう煽ると、エルザは剣を上段斜めに構えをした。エルザの目はまだ死んでいない。


「来い! クソども!」


「言ったな! 女!」


3人はL字刀を振りかざし、風のようにエルザへと接近すると、一斉に剣を振り下ろしていく。


「うおおおおっ!」


エルザは吠えた。そして、痛めた足を軸にグルリと回転しながら、巧みに剣をかいくぐると、ガキィーン!と金属音をさせながら、レイの剣を馬鹿力で弾き飛ばした。レイは体勢を崩しながらも剣を振るうが、エルザは飛びのいて躱す。


「ぬおおお!」


エルザは追撃の剣を振るが、そこへガイとバグが斬り込んでくる。エルザはガイの剣を躱し、バグの剣を受け、力任せにバグを押し飛ばした。


「ええええぃ!」


「うわっ!」


バグは突き飛ばされたようにたたらを踏んだが、そこへエルザの伸びてくる突きが入った。


「あっ!」


バグは危うい所で剣を跳ね上げ、辛うじてエルザの剣を躱す。そこへ、レイがエルザの腫れた足を蹴り飛ばした。



「うううっ!」


エルザの顔が苦痛に歪んで、倒れ込んでいく。


「もらった!」


3人同時に倒れ込んだエルザを斬ろうとした時、エルザの剣が竜巻のように回転して、3人の剣をはねのけ、攻撃のため、前のめりになっていた3人組は、危うく斬られそうになっていた。


「この女、本当に足がやられてるのか!」


「本当は男じゃねえのかよ! まるでゴリラのような怪力だぜ」


男たちは舌を巻いていた。


「兄者! あれをやるしかねえぜ」


「あれか……いくか」


「おう!」


3人の男たちはエルザから距離を取って、エルザの周りを取り囲んだ。


エルザは距離を取られるとどうしようもない。何かを企んでいるようだが、追いかけて蹴散らすということは、今のエルザには出来なかった。



しばらくして、3兄弟は滑らかな滑るような動きでエルザの周りを走りだしたのである。


「なにこれ……動きが読めないわ……」


3人とも、足の動きが全く読めない。ありえないタイミングで方向を変えたり、地面を蹴ったそぶりもないのに跳んだりして見せた。


「これは……一体……。浮いているのか?」


エルザは目を凝らして動きを読もうとしたのだが、わからなかった。そして、突然、エルザに向かって滑るように接近してくる。


エルザはカウンター狙いで中断に構えた。


そこへ、レイが目つぶしの閃光弾を放り投げて来たのである。強烈な閃光が、目の前でほとばしる。エルザは薄目をしたが、視界は奪われてしまって、何も見えなくなってしまった。


真っ白な視界の中に、ぼんやりと浮かぶ黒い影……。


3人いたはずが、見えている黒い影は1人だけだった。


エルザは、とりあえずその、黒い影に横なぎに刃を振るう。


だが、その黒い影はエルザの剣を躱し、飛ぶようにふわりと浮いたので、エルザもそれを追って上方へと剣を伸ばす。


すると、上へ飛んだ黒い影の後ろから、また別の影が剣を突き入れてきたのである。もはや、閃光弾の光に惑わされ、緑やオレンジの、いくつもの男の影が視界に浮かび、エルザの剣は翻弄されていく。


「あっ!」


エルザは体を半身にしながらその突きを躱したのだが、果たしてその影は、本物だったのか……それとも残像なのか。


閃光弾に目をやられたエルザには、全くわからないのだった。エルザは思わず目を閉じてしまった。


髪を逆立て、神経を研ぎ澄ます……かつて、ブラックウルフと戦った時のように、隠ぺいの魔法使いとも戦ったことがあるエルザである。目には見えなくとも、息遣いや体温、風の動きなどで察することの出来るものもあるはずだった。


「ぬおおおっ!」


エルザは歯を食いしばって、風の気配を探った。そして、その動きを読んで剣を振るったのである。ガキィン!と刃が打ち合い、打ち合った瞬間、剣をさばいてレイの鼻を斬っていた。


「何ぃ!」


なんとかレイの剣をはじいたエルザだったが、もうあまり力が入らないようで、脇を絞めて剣の柄をヘソに当て、体軸を使って剣を振り回した。そして、迫り来るバグの剣をガキィン! とはじいていた。


「よくもレイを斬りやがったな!」


ガイの剣がエルザの体へと突き刺さる……そして、レイの剣も、バグの剣もエルザを斬りつけていた。


ガイの剣は、エルザの胸を。レイの剣はエルザの背中を……バグの剣はエルザの上腕を突き刺していたのである。


「ああ!」


ガイの剣は、エルザの防具によって上に滑り、エルザの肩当てを斬り飛ばす。エルザの肩が切れて血が飛んだ。


レイの剣は背嚢を切り裂き、中身が溢れ飛ぶ。


バグの剣はエルザの上腕を突き刺し、エルザの真っ赤な鮮血が飛び散った。


「ああっ!」


エルザは咄嗟にバグを蹴り飛ばして、刺された上腕から剣を抜き、そのまま背後のレイへぶつかって倒れそうになった。エルザが片足でたたらを踏んでいると、ガイが横っ腹を蹴り飛ばした。


エルザは吹き飛ばされ、奥に鎮座していた大きな岩へと背中からぶつかった。


そして、その時、大岩で頭を強く打ったのである。


岩で額を切ったエルザは、瞬く間に顔面が真っ赤に染まった。


「うう……」


目に血が入って何も見えない。


エルザは腕からも血を流していて、血をまき散らしながら立ち上がった。


そこへ、地獄の3兄弟が再度突進を仕掛けてくる。


「今度こそ最後だ!」


「いい加減死ね!」


「風魔法、業風!」


ガイそう言うと、エルザの周囲で風が荒れ狂い、エルザは大岩に押し付けられるように身動きが取れなくなった。エルザは思わず声をあげた。


「きゃああっ!」


その声を聴いたガイは、ニヤリと笑う。


「いい悲鳴だエルザ……」


エルザの血が風で舞い、身動きが取れなくなったエルザの体へと、地獄の3兄弟の剣が伸びた。


その時、一陣の風が吹いてレイの側頭部へ斧が突き刺さったのである。


「なあああっ!」


レイの血しぶきが、業風に煽られて霧のように舞った。


「レ、レイっ!?」


「兄者!」


驚く間もなく、エルザと兄弟たちの間へ斧がもう1本飛んできて、地面へと突き刺さった。


ガイとバグは、風の力で後ろへ飛んた。


そして倒れたレイを見て、それから斧を投げた男を睨みつけた。


「誰だ手前は!」


「よくもレイを!」


兄弟たちは今にも泣きださんばかりに唇を噛んだ。


一体誰がやってきたのか……エルザは額から流れる血を袖口で拭ってから見たのだが、そのやって来た人物を見て血の気が引いた。


そこに、馬に乗って現れたのは、黒い鎧を着たの男、ジョーであった。


無理無理。


地獄の3兄弟に加えて、さらにジョーだとは……。


いくらなんでも、絶望的だ。


エルザは血を多く失ったのか、青かった顔色は、段々と青白くなっていくのだった。



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