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第46話 魔剣ライトニング


魔道具の店を出たエルザとシンディは、手早く市を巡って野菜や調味料などを買うことにした。もう、ずいぶんと遅かったので、店仕舞いをしている所も多かったが、どうにか夕飯の材料を買うことが出来た。



「手早く料理して出発しましょうか」


「ええ、そうね。でもエルザ。あなた一体、どんな武器を買ったのよ?」


「うーん、そうね……殴れる魔法杖……かな」

「な、なんか物騒ね!」


「後であなたにも渡したい魔道具もあるから」


「私の分も買ってくれたんだ」


「そりゃ、そうよ」


そんな話をしながら、エルザとシンディは帰り路を急いでいた。


実はこの2人、偶然にも同じ歳だったので、堅苦しいしゃべり方はやめようということになって、くだけた調子で会話していた。


そんな話をしながら歩いている時、突然、路地裏から女の子の悲鳴が聞こえた。


「キャーッ! 嫌!」


「おとなしくしろ! この!」


「嫌よ! 嫌よ! やめて!」


「うるせえ!」


声のする方向へエルザは走った。

するとそこには、数人のチンピラに絡まれた少女の姿があった。


少女は手に持っていた袋をすでに奪われていて、せめて自分だけでも逃げ出そうと、両手を伸ばしてもがいている。


エルザは思わず駆けだしていた。


だが、エルザがそばに近づく前に、チンピラは少女の服をビリビリと裂いて、少女の白い太ももが露わになっていた。


それを見てエルザはカッと血が上った。


「てめえ……その子を離せっ……」


エルザはそう呟きながら足を振り上げ、男の背中へ蹴りを入れていた。


「ちょっとその子を離しなさい!」

「その子を離しなさいっ!」


「ぎゃふっ!」


2人分の蹴りを食らった男は吹っ飛んで倒れ、蹲ったまま呻いていた。


ふと横を見ると、エルザが蹴った男に、エルザと同時に蹴り入れている金髪の女がいた。……同じような台詞を吐いたからか、その金髪の女はエルザをじっと見た。……なんだか嫌な感じである。


蹴飛ばされたチンピラの仲間は、すごい形相でエルザと金髪の女を睨みつけた。


「なんだてめえは!」

「お前も一緒に身ぐるみ剝がされたいか!」

「キャンキャン泣かせてやろうか!」


盗賊たちが吠える、吠える。


エルザはイラっとしながらいい返した。


「面白いわね、泣かせてみなさいよ……」

「泣かせてみなさいよ……」


売り言葉に買い言葉……思わずエルザが言い返すと、またもや同じような台詞を吐いた金髪の女だった。金髪の女はギロリとエルザを睨みつけた。


「おい!真似すんな!この、赤髪!」

「はぁ?!」


エルザの顔面が硬直していく。


「あんたなんか、初めから眼中にないわよ。あっちへ行きなさいよ」


エルザがそう言うと、金髪の女は柳眉をキリリと吊り上げた。


「あっちへ行けだと? 生意気な! お前があっちへ行け!」


エルザは疲れていたせいか、金髪の女の態度にイラッとしてしまった。


「こいつ……なんか腹立つわ」


「エルザ!そんなことで怒っちゃだめ!」


「わかってる……わかってるけどっ」


そんなエルザに、金髪の女は拳を振るってくる。


「あぶなっ!」


「ほう、避けたか、なかなかやるな」


エルザも拳を握りしめて、金髪の女に振るった。


「あんたね、殴る相手間違ってない?」


エルザは金髪の女の方へ向かって拳を振るう。


エルザの拳はなかなかの速さだったと思うが、金髪の女はそれを軽く躱す。すると、その拳は、女の影に隠れていたチンピラの顔面に叩き込まれたのだった。


「ぐあっ!」


鼻血を吹いて、ひっくり返るチンピラ。それを見たチンピラの仲間は、一斉に襲いかかって来た。


「おい、相手はたった2人……しかも女だ! ビビってんじゃねえぞ!」


チンピラの1人が声をあげた。


「みんなでかかれっ!」

「おう!」


チンピラの掛け声とともに、周りにいた5名ほどいたゴロツキが、一斉に襲いかかって来たのである。


それを見て、金髪の女はニヤリと笑った。


「女相手に総出でくるかよ、情けねえな!」


そういう金髪に、よせばいいのにエルザは嫌味を言う。


「怖いならすっこんでなさいよ!」


「お前、なんか腹立つわ……これでも食らえ!」


金髪はそう言ったかと思うと、エルザに向かって回し蹴りを放った。そんな蹴りはエルザには効かない。


エルザは軽くスウェーバックしてその蹴りを躱したのだが、そこへ運悪くゴロツキが総出でかかって来ていたのである。金髪の蹴りは、見事にゴロツキの脇腹へと突き刺さった。


「よくもやったわね!」


エルザ渾身の拳が金髪に飛ぶ。だが、中々の体捌きだ。金髪は半身でエルザの攻撃を躱したので、後ろのゴロツキへと突き刺さってしまう。


「ははは、なんだそのパンチは。ハエが止まるぜ……ヘブッ!」


金髪が油断した隙に、エルザの第2撃が金髪の頬へとヒットした。


「ちょっとどいてよ! チンピラがあなたに隠れて見えないじゃない! 邪魔なんですけど!」


エルザがキレ気味にそう言うと、金髪の額に青筋が浮かんでいた。


「やってくれたな!」


金髪の女が蹴り返すと、エルザは華麗にそれを避けたので、彼女の蹴りは後ろのチンピラの、呆けた顔面へ炸裂した。


「がはあっ!」


「どこ狙ってんのよ!」

「避けるんじゃねえ!」

「避けるわ、普通」


金髪は、再度エルザへと蹴りを連発する。

だが、それをエルザは足さばきでうまく躱していく。


一体、誰が誰と戦っているのか、よくわからない空気が場に流れていた。気がつくと、エルザと金髪、それからチンピラたちという、三つ巴の戦いが繰り広げられていた。


とはいえ、基本的にエルザも金髪も強いので、結局のところチンピラがだけがその数を減らしていく……。


そして、気がつくとその場に立っているのエルザと金髪だけ。多くチンピラたちは、2人の女に殴られて道ばたで伸びていた。


ガシャン、ガラガラ……


そして、最後のチンピラが殴り飛ばされ、周囲に積み上げられ箱のようなものを吹き飛ばして、箱もろとも崩れ落ちた。


道ばたで呻いているチンピラたち。


「……オエッ」

「駄目だ、ゴフッ!」

「げええっ……」


そんな彼らを後目に、まだ戦い続けるている女2人……。


「お前ら、いい加減にしろ!」


戦おうと接近する二人の間に、大きな買い物袋が投げ込まれた。

二人はそれを躱すように飛び下がると、その声のする方向へ顔を向けた。


「シンディ?」


「エルザ! もうチンピラは全滅してるよ!」


「あ……」


すると、金髪の女は突然大笑いしだした。


「なるほど、エルザというのか。……私の名はザカ。ちょっとムシャクシャしていたが、おかげで随分と気が晴れたぞ。なかなか面白い遊びだった」


エルザはがっくりと肩を落とした。

そして、その姿勢のまま、シンディを見た。


「もう、なんだか疲れたわ……シンディ、襲われていた女の子は大丈夫だったの?」


「ああ、家まで送り届けて来たよ。それで、帰ってきても、あんたたち、まだやってるんだから。これから天上の樹に上るっていうのに……」


シンディの言葉に、ザカの目がキラリと光った。


「天上の樹だと?」


(女二人組で、日が暮れるこれから天上の樹へ登るとは……まさかこの二人が標的の女なのか?……)


ザカの脳裏に、一瞬、そんな考えがよぎった。


「もう帰ろう、エルザ」

「そうだね……」


エルザとシンディは、先ほど投げた袋から零れ落ちた野菜などを拾い始めた。すると、ザカも一緒に野菜を拾ってくれている。


「さっきは悪かったな」


ザカはそう言って拾った野菜を袋に入れた。


「気にしてないわ。……だって、あなたも、あの女の子を助けたかったのでしょ?」


エルザがそう言うと、ザカはフッと笑った。


「……じゃあな、エルザ。次に会った時は、冷たいビールでもご馳走させてもらおう」


「期待しないで待ってるわ。まあ、2~3日もすれば、私の顔なんて忘れちゃってるわよ」


エルザはそう言って肩をすくめた。


「ははは、お前みたいな強烈な女、忘れるかよ……じゃあな」


ザカはそう言うと、エルザに背中を向けて去って行った。


しばらく歩いてから、ザカは一度振り返って、エルザが歩いていく背中を見た。


「エルザか……なかなか良い剣士だな。……例の襲撃にからんでそうな気もするが、シャドウを抜けた私には関係のないこと……。逆にエルザに、奴らの襲撃を知らせたところで、怪しまれるだけだ。まあ、ここはこのまま去るのが正解かな」


ザカは、そう言いながら去って行った。





時間は少し戻って……。


エルザたちが魔道具を買いに出かけた後、納屋では、セラスとアルマが、馬車から魔剣や魔道具、金貨などを運び出していた。


「とりあえず、盗賊どもが入ってきたら厄介だ。私たちは隠ぺいの魔法で隠れられたとしても、魔道具などが盗まれては堪らないからな。ちょっと重いが手伝ってくれ」


「はい、このくらい大丈夫ですよ」


そう言いながら、セラスたちはテーブルのある部屋の床下を剥がして、床下へ荷物を降ろしていく。量は大したことはないが、金や剣など、金属のものが多いので、運ぶのには骨が折れるのだった。


ほとんど運び終わったと思った頃、アルマは外に人の気配を感じていた。アルマはすぐさま、セラスの元へと駆け寄った。


「セラス様……誰か来ます……」


「なんだと!」


ここがばれたのか? なぜだ……。もしかして、メラーズどもに後を付けられていたのだろうか。


「アルマ! とりあえず床下に隠れるぞ」


「はい!」


2人は物音を立てないように、そっと床下へと入って行った。そして、剥がした床下を元通りに置いて、外の様子に聞き耳を立てた。


アルマは手を差し出して、セラスへ言った。


「セラス様……隠ぺいの魔法を発動します……私の手を握ってください」


「ああ、こうか?」


セラスがアルマの手を握ると、アルマは隠ぺいの魔法を発動する。これで、周囲の人や動物は、二人のことを認識し辛くなってしまった。これは魔道具の効果ではなく、アルマ個人が持つ魔法なので、効果が持続する時間も、桁違いの長さである。


しばらくすると、外から話声が聞こえてきた。


「……頭領。人の気配がありませんね……」


「そうか……じゃあ、ロイド……中へ入ってみるか。……誰もいないなら、扉から入ればよかろう」


「は……ではこの裏口から……」


ロイドという男がそう言うと、カチャリと小さな音を立ててロックが外れ、ギーッと木が軋む音を立てた。そして、頭上の床を鳴らす音が、コツコツとこちらへと向かってきていた。


「メラーズからの話では、ここなのじゃろう? しかし、お貴族様がこんな粗末な小屋に来るとはな」


「は……ジェームズが後を付けていたらしいので、ここで間違いありません」


(ジェームズだと!)


セラスは心の中でつぶやいた。ジェームズといえば、メラーズ男爵家の家宰である。そいつが絡んでいたとなると、リールまでの行動が筒抜けだったのが頷けるというものだ。


「……頭領、納屋に馬車が」


「やはり、ここに隠れておるようじゃの……今はおそらく、町へ買い物でも行っておるのじゃろう」


「待ち伏せしますか?」


「そうだな……女どもが帰ってきたら、その時に不意打ちで一気に倒してしまおうか」


「はい……その前に、私は2階の様子を見て参ります」


「うむ……」


そういうと、ロイドは2階へと階段を登って行った。


セラスは思った。今、1階には、頭領と呼ばれる男一人だけになった。


ここで、今、攻撃するべきか。


それとも、エルザを待ってから、二人の背後を撃つべきか。


(もしかしたらチャンスなのか?……しかし、不意打ちが失敗したら。一気にこちらが不利になってしまう)


しばらくすると、頭領がテーブルの方へと歩いて来た。セラスたちのいる頭の上あたりである。

そして、頭領は、テーブルの椅子を引いて腰をかけたのである。

セラスには、頭領が何をしているのかわからなかったが、何やらカサコソ音がするので、テーブルの上のメモなどを物色しているのだろう。


「これは!」


突如、頭領が声をあげた。


「この文様は……なぜ、この文様の絵がこんなところに……」


この男は何をそんなに驚いているのだろうか。セラスは、そんな驚くようなものを、テーブルの上に置いた覚えはない。あったとすれば、エルザの腕に刻まれた黒い鳥の文様の紙くらいなものだ。


(もしかして、あの黒い鳥のような文様に、何か心当たりがあるのだろうか)


セラスはそんな予感を感じながら、聞き耳を立てていた。


「どうかなされましたか? 頭領」


「おお、ロイド。これを見ろ、ほら」


「これは……ヤタガルの証!」


「この絵がこんな所にあるとは……もしかしたら、奴ら、メラーズの奥方の秘密を知ったかもしれぬな」


「メラーズの奥方が、証を刻んでいるのでしたね?」


「ああ。だからワシらは、あやつに逆らえんのだ……あの強大な力でもって、ルフラの民が人質にされているのだからな」


「ヤタガルの証とは、そんなに強大な力を持つのですか」


「ワシも実際に魔法を使った所を見たわけではないが……周囲にあふれる魔力を吸い尽くし、強大な魔法を放つことが出来る魔力回路だといわれている。……だが、その代償として、寿命を縮めるという副作用があるがな」


「力を得る代わりに、命を削らねばならないとは……これを作った古代人も、残酷な作りにしたものですね」


「ああ。じゃが、それが古代人の考えた抑止力というものじゃろう」


「だが、それを気にしないのがメラーズの奥方なのですね?」


「ああ。あの女はもう年増だからな……寿命などいらんのじゃろう。裏で夫を操り、強大な権力を握りたいのかもしれん」


そこで、二人は押し黙った。


「外から足音が……誰か来ます……」


「ん? ただの通行人だろう?」


セラスは思った。もしかして、エルザたちが帰って来たのか? それともただの通行人なのか……


もしエルザが帰って来たのなら、攻撃の絶好のチャンスだ。


なにせ、敵はセラスの頭上にいる。攻撃すれば、大きなダメージを与えられるだろう。


(よし、やるか!)


セラスは攻撃を決意した。


セラスは剣をそっと抜いて、魔力を込めていく……。セラスの剣の魔石に、赤い光が宿ってきた。


(お願いだ、数秒でいい、この魔剣の帯びた魔力に気付かないでくれ!)


セラスはそう願ったが、二人はさすがに隠密である。


床下に何かあると思った瞬間、テーブルから飛びのいていった。


「ロイド! 罠じゃ!」

「!」


だが、その瞬間、セラスは床板を突き破って飛び出した。その姿は女ながら鬼神のようであり、その形相は必殺を決意した、魔獣のようであった。


セラスは飛び出すと同時に、横一文字に剣をふるった。


そして、その剣からは、飛びのく二人の体を吹き飛ばすほどの、国宝級の炎がらあふれ出たのだった。


「はあああっ! 燃えよ、グラムドレイクっ!」


二人が炎の向こうに見たものは、鬼であった。


「どわああっ!」

「なんじゃと!」


二人の体へ横なぎに、炎の刃を飛ぶ。


「ぐわああっ!」

「うぬぬ!」


二人は咄嗟に、マジックキャンセラーを発動させるが、この国宝級の炎を消し去ることはできない。


セラスの炎は、1発目の攻撃で屋根を吹き飛ばし、2発目で納屋を半壊させていた。


耐火コートを着ていたため、なんとか持ちこたえた二人は、セラスへ反撃を開始することにした。だが、彼らへ与えたダメージは相当のものだったようだ。


ロイドは半身が焼けただれ、頭領も下半身がひどい火傷を負っていた。だが、セラス自身も手負いの身。戦いはセラスに有利というわけではない。


「おのれ、なんという魔剣を持っているのだ。お前がセラスだな? よくも汚い不意打ちを」


「黙れ! おぬしらこそ、待ち伏せして一気に殺すとかほざいていたではないか! 女相手に情けないとは思わんのか!」


セラスはそういうと、休む暇も与えず斬りかかっていく。


だが、相手はシャドウのNo.1とNo.2。

そう簡単に倒されるものではない。


そこへロイドが魔剣・ウェイステッドを抜いて、セラスめがけて魔法を発動させていた。


「くらえ!」


ロイドの魔剣が発動し、状態異常の魔法がセラスを襲っていた。


「うわあああっ! ……なんだこれはっ!」


まるで電撃が走ったような衝撃がセラスの体を駆け巡り、四肢は硬直し、床へぶっ倒れたのだった。


「あががが……」


それを見た頭領は

「相変わらずお前の魔剣は容赦がないのう……」


ロイドはそれを聞きながら、魔剣を構える。


「ではとどめを差します……」


そしてロイドは魔剣をセラスめがけて突き刺した。

だが、セラスは、必死の形相でそれを躱し、剣はセラスの脇の下を通って床を突き刺していた。


「ぬおおお!」


セラスは両手で、剣を握るロイドの腕を掴んだ。


「まだ動けるのか! 往生際の悪い!」

「うーっ! うーっ!」


ロイドの魔剣は床に突き刺さったままだ。その剣を持つ腕にセラスがしがみついているのだ。ロイドはセラスを振りほどこうと、必死で腕を振った。だが、セラスは離さない。その顔は、まさに鬼のようである。


それを見ていた頭領はあきれ返って

「ロイド。何をやっているじゃ。さっさと殺してしまわんか」


「はっ、申し訳ないです、只今!」


そう言って、力づくでセラスを床へ叩きつけようとした時。

ロイドの背中から腹へ、剣が貫いていた。


「ゴフッ!」


ロイドが振り返ると、少女が剣を持ってロイドを突き刺していた。


アルマである。


「セラス様! 離れて!」


その言葉を耳にした瞬間、セラスは大きく倒れ込むように後ろへ転がって行った。


そして、アルマが叫んだ。


「爆ぜよ! ライトニング!」


その言葉を合図に、魔剣・サンダーストライクから強烈な電撃が走った。


「な、なんだと!」


その場にいた全員が耳を疑っていた。だが、それは、紛れもなく国宝級の魔剣・ライトニングなのだった。


そして、アルマが爆ぜよと叫んだ瞬間、ロイドの腹部は爆散した。


「ぐあああっ!」


ロイドは上下二つに分断されたまま、床へと倒れ落ち、あたり一面に血と臓物をまき散らした。

それを見たダイカンは、不利を悟って建物の外へと飛んだ。


「覚えておれ!」


ダイカンは、セラスの方を振り返って言った。


「おのれセラス……よくもロイドを!」


そう言って、ダイカンは歯ぎしりした。


「私を恨むのはお門違いだ! すべてはお前のせいだなのだぞ! くそ爺! こいつが死んだのは、お前のせいだ!」


セラスはそう叫んだ。

ダイカンは、悔し気に振り返ってセラスを睨むと、そのまま背中を向けて去っていった。


その背中を見送ると、セラスは膝をついて大きく息を吐いた。


そして、しならくして呼吸が落ち着くと、ゆっくりと起き上がってアルマのもとへと歩いていった。


アルマは、初めて人を殺したからか、それとも恐るべき魔剣を使った恐怖からかなのか、ガタガタと震えていた。


セラスはアルマをそっと抱きしめた。

アルマはセラスを見た。


「アルマよ……ありがとう。私は君に助けられた」


セラスのその言葉を聞いて、アルマは泣いた。大きな声を出しながら。


「怖かった……怖かったです、セラス様!」


そうやって泣くアルマを、セラスは抱きしめたのだった。



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