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第42話 美魔女ベルメージュ



メラーズ男爵家にある大浴場に1人、美しい女が湯に浸かっていた。浴場には大理石の床板が敷かれ、美しい彫刻が立ち並んでいる……まさに贅の限りを尽くした作りの浴場である。



大浴場の大きな窓からは、明るい満月の光がふり注いでいて、湯船に浸かるベルメージュの美しい裸体を照らし、湯船の床に美しい曲線の影を落としていた。



だが、そんな穏やかな月明りとは正反対に、ベルメージュの瞳には、野心が燃え上がっていた。実は彼女こそが、エルランディ暗殺の黒幕で、この王国に混乱をもたらそうと暗躍する、指導者なのだった。



この贅沢な大浴場は、今は人払いがされ、そのベルメージュ1人が広い浴場を独占している。その浴場の静寂を破るように、扉がノックされた。




「入って頂戴」



すると、1人の男が服を着たまま入って来て、大浴場の湯船へと近付いていった。ジェームズである。




「ベルメージュ様、本日もご機嫌麗しゅう……」



ジェームズがニヤリと笑ってそう挨拶をすると、ベルメージュは妖艶な笑みを浮かべた。そして、長いまつ毛をゆっくりと持ち上げ、その大きな瞳でジェームズを見ると、赤くぽってりとした唇を開いた。



「何堅苦しい挨拶をしてるのよ、ジェームズ。一体、何の用なの? あなたがわざわざ報告に戻ってくるなんて」



そう言って、ベルメージュは紫色の髪を軽くかきあげた。ジェームズには、湯船から覗く白く丸い胸が目に入った。その美しさは、まるでセイレーンの歌声を聞かされた船乗りのように、周囲の男をことごとく魅了するに違いない。



「予定通り、エルランディが倒れて王都は大混乱だ。今、第2王女エルランディ派と、第3王女シャーロット派の間で、次期女王の争いが苛烈になってきているらしい。つまり、目が内側を向いていて、こちらの真の動きにまるで気付いていない」



それを聞いてベルメージュは満足気に笑をもらした。



「フフッ、それは好都合ね。それで、ウインザー帝国との工作はうまくいきそうなの?」



ジェームズは頷きながらベルメージュの方へ顔を向けた。



「ああ、第1王子の協力を得られた。それから南部の貴族もこちら側につくという話だ」



それを聞いてベルメージュは、口の端を歪めて苦笑した。



「さすがはジェームズね……ほぼ出来上がってるじゃないの」



ジェームズは頷いた。



「ああ、お膳立ては整った。後は実行するタイミングだけだな。王都の混乱に乗じて、今月には動き始める段取りで動いている」



「頼もしいわね、ジェームズ。……何事もスピードが大事だから……。ところで、例の金杯のことで、何かわかったことはあるかしら?」


それを聞かれたジェームズは、少し困ったような顔をした。そして、興味がなさそうな口調で言った。


「あのヤダガルの紋章の入った金杯のことか?」


「あなたがゴント村の村長宅から持ち帰って来てから、どれくらい経つと思ってるの? もう2年よ? 何か手掛かりがあってもいい頃でしょ」


そうつぶやくベルメージュに、ジェームズは肩をすくめてみせた。


「それについては、今、あなたも良く知る知識人・オリバーの所へ、人を潜入させて調べている。そこで何か情報が入らないかと期待しているのだが……今わかっていることだけ言えば、攻撃兵器では無さそうだということだけなのだ」


ベルメージュは少しガッカリした顔をした。


「それであなた、気のない返事だったのね?」


ベルメージュは肩をすくめた。


「魔術師が、あの金杯の魔術回路を解析した結果、そう結論付けたのだ。希望があるとすれば、何かを召喚するような記述があるらしいってところなんだが、まあ、もうちょっと待ってくれ」


ベルメージュはため息を1つ吐いた。


「うーん、ちょっと期待外れね」


「まあ、諦めるな。もうちょっと調べてみるから待っていてくれ。まあ、ベルメージュ様の力があれば、あの金杯などなくても十分だろうがな」


ジェームズがそう言うと、ベルメージュはニコリと微笑んだ。


「ところで、薬を取りに行ってる女騎士団長はどうなったの? ここまで計画が進んだ今、薬が間に合おうが、間に合うまいがどっちでもいいのだけど」


「それだけは、こちらの思惑通りに進んでない……妨害させた盗賊たちは全滅。女騎士団長と女剣士が2人生き残って、今ヴァルハラへと向かっている」


それを聞いて、ベルメージュは少し驚いていた。


「あのセラスって女、そんなに強かったの?」


「セラスはともかく……その護衛についている女剣士が手強いらしい。何せ、あの銀狼のジョーの首を斬りつけて、退けたらしいんだ」


ベルメージュが興味深そうに口角を上げた。


「へえ、面白そうな女じゃないの。ジョーを殺したの?」


「いや、止めは刺さず、そのまま逃げたらしいんだが、一体、どうやってジョーに致命傷を負わせたのか……」


「気になるわね……」


ベルメージュは微笑んだまま、フッと鼻を鳴らした。


「まあ、騎士団と盗賊たち……つまり、敵と社会悪が共倒れしたのだから、私たちにとっては痛くも痒くもない話だけどね。……で、妨害は続けるつもりなの?」



「ああ、出来ればそうしたいと思っている。それで、ここからが本題なんだが、メラーズ家の隠密団、シャドウを貸して欲しいんだ」


「シャドウを?……彼らをセラスたちに当てるつもり? 王都を混乱させるという、当初の目的は果たしているのだからもういいじゃない」


「トップのあんたがそう言ってくれるのはありがたいが、実行部隊の俺からすれは失敗したも同然。それなりに始末をつけたいのだよ」


それを聞いて、ベルメージュは苦笑した。


「まあ、いいけど。シャドウを出す以上、つまらない戦いをしたら承知しないわよ」


「善処しよう。……まあ、これから奴らが向かう戦場をみれば、シャドウに勝る戦士はいないと断言できる。ベルメージュ様をガッカリさせる戦いはしないはずだ」


「ふふふ、期待してるわジェームズ。私を楽しませて頂戴。さあ、もう話は終わりかしら? ……それじゃ、服を脱いで入ってらっしゃい。ここから見る月は綺麗よ」


ベルメージュはそう言うと、大きな瞳でジェームズを見た。ジェームズは、その美しい瞳をジッと見つめた。


「その美しい瞳に見据えられ、服を脱がすにいられる男は、この世に1人もいないだろうな」


ジェームズそう言うと、上着のボタンを外しはじめるのだった。







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