5.『動画を見たときから』
元重さんの住むマンションに向かって運転していたところで南山田先輩が何気なく呟いた。
「しかしカローラスポーツとは。阿部さん、いい車に乗っとるのう。まあ、動画を見たときから分かってはおったが」
「ああ、この車、カローラスポーツっていうんですか。ええ、何か高そうな車ですねえ、この座席もなんか高級車って感じの……『動画を見たときから』?……あああああーっ!!」
「なっ!?なんじゃっ!?どうしたんじゃ瀬川君?」
今の南山田先輩の独り言で気が付いた!僕はバカか!車に乗った瞬間気付くだろう!
「先輩!先輩のスマホに自然探索会の会員の連絡先もいくつか入ってるんですよね!その中で幹部の人とかいますか!?」
「ん?ああ、隅田さんかの。鶴賀さんと同じ副会長職のはずじゃが」
「隅田さんっ!この方ですね!」
南山田先輩にも話が聞こえるように通話をスピーカー状態にする。数コールで相手が出た。
「あ、南山田君?何かあったの?」
「すみません!瀬川という者です!今は南山田先輩のスマホを借りてるんです!単刀直入にお聞きします!そちらの会員の元重紫姫さんは同じく会員の阿部智将さんにストーカーされてませんでしたか!?」
「何で知ってるんだっ!?」
「なんじゃとおおおおおっ!?」
「やっぱり!すみません、今、その阿部さんに騙されて鶴賀さんと元重さんを引き離されてしまいました!今から鶴賀さんと合流して元重さんを助けに行きます!」
「何だって!?」
「どういうことなんじゃ!?」
「後で説明します!南山田先輩!車を寄せて止めてください!」