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3.囮作戦発動

~そして現在~


「……と、まあ、こういう次第じゃ。それで作戦通りガレージに入ったところで瀬川君に連絡を入れた訳じゃが」


「なるほど、このマンションのガレージならその作戦は可能ですね。」


 ガレージが半地下になっているうえ、前庭の敷地を比較的広くとっているので、シャッターが開けっ放しでも敷地外の道路からは潜んでいる僕らは見えないし、運転手の入れ替わりも確認できない。


「しかし、そもそもこの作戦必要ですか?それこそ鶴賀さんが勘違いしたようにバイト先の裏口で元重さんを乗せて2人のどちらかの部屋に行けばいいだけの話では?元重さんの車は後日取りに行けばいいでしょう?」


「ここもそうじゃが、元重さんのマンションも駐車場から部屋の入口まで若干の距離があって、夜は周辺の人通りが少ないそうじゃ。ワシも覚えておるが鶴賀さんは身長190センチを超え、体もガッシリしておる。そこで腕力に訴えられたら阿部さんではとても敵わんとのことでの。車から部屋までの安全を確保したいとのことじゃ」


「策の②~③の時点で一旦阿部さんが車外に出るわけですが、大丈夫ですかね?」


「おそらく元重さんが車内に残っていると誤解していれば大丈夫じゃろうと。仮に阿部さんが暴行でも受けたとしても車内から通報する余裕があることくらい判断できるじゃろうからな。2人で車外に出る、或いは元重さんだけが車外に出る状況の安全を確保するための作戦ということじゃ」


「それで、阿部さんはいつこっちに着くんです?」


「さっき瀬川君がガレージに入った時点で『準備ができた』とLINEに入れたからの、もう5分、10分くらいで来るのではないじゃろうか?ああ、それと瀬川君が今回の作戦に加わることも伝えておる」


「入れ替わりがバレたりしませんかね?」


「マンションの敷地から出る際には側面に近い面を相手にさらすことになるから、そのときに顔を逸らしておくくらいで大丈夫じゃろ。あとはこの暗い中、後ろから尾行してくるのじゃしまずバレんじゃろう」


「南山田先輩は阿部さんの顔を覚えてなかったんですよね?間違いが無いよう本人画像か何か送ってもらいました?」


「ああ、送ってもらっておる」


 南山田先輩が、阿部さんから送ってもらったという画像をスマホで僕に見せる。


 どこかの居酒屋であろう。並んで座った地味目の男性とかわいらしい女性が肩をピタリと寄せ合って1台のスマホの画面を見て微笑んでいる様子が写っている。


「ああ、この人が阿部さんですか。で、一緒にスマホを見ているのが元重さんなんですね」


「ああ、画像を見て思い出したが自然探索会で作業を手伝ったときに見た顔じゃ。確かにそのときにトモマサさん、と呼ばれておったはずなので本人で間違いないはずじゃ」


「あれ?この動画は何なんです?」


 画像とは別に5本の動画が送られてきている。


「ああ、それも阿部さんから送ってきたんじゃ。以前に鶴賀先輩に付け回された証拠動画じゃそうじゃ」


 スマホをどうやってか車の天井中央部あたりにセットして撮ったものだろう。バックウインド越しに1台の車が写っている。

 スマホのセット位置も、結構高級っぽい車の内装も、バックウインド越しに見える車も同じなので一見同じ動画と勘違いしそうだ。

 そのうち日付的に最新と思われる動画を再生してみた。

 1時間近くもある動画なのでスクロールでざっと飛ばしながら見たが、確かにその間1台の車に付け回されていたようだ。

 なるほど、これを頻繁にやられたらたまったもんじゃないだろう。


 と、動画を確認し終えたあたりで、車が敷地内に入ってくる音がした。


 バックでガレージ内に車を入れて人が降りてくる。先程画像で確認した阿部さんだ。

 実際に会うと小柄な人だ。僕より1回り小さいといった感じだろうか。確かにこの人では190センチを超えるという鶴賀さんには敵わないだろう。


 彼は声を潜めて頭を深々と下げて挨拶してくる。


「こんなことに巻き込んでしまって本当に済まない。でも、頼れる相手がいなくて」


「なに、構わんよ。それより作戦を進めるんじゃ。時間も無いんじゃろ」


「ああ、そうだね、紫姫のバイトも終わる頃だし」


 こうして当初の計画通り一度自室に入った阿部さんが荷物を持ってガレージに戻った。

 そこで南山田先輩が運転席に乗る。僕は後部座席のドアを開けて入り、表から見えないように後部座席に寝転がった。

 マンション敷地から車を出し、少し走ったところで南山田先輩が言った。


「うむ、付いてきておるぞ、瀬川君、連絡頼む」


 これを聞いた僕は、南山田先輩に借りたスマホで鶴賀さんが追ってきた旨を阿部さんに連絡した。


「……と、ここまでは順調じゃな」


「ええ、そうですね」


 確かに順調だ。しかし何か引っかかる。もう一度状況を整理して考える必要を僕は感じていた。



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