03 残念な男性陣
「あ…………」
我に返ると、セラフィールが下がり眉でわたくしを見ていた。黄金と緑の瞳が少し潤んでいる。………いけない、子供の前では、母親で居ないと。
「…………ベイビーちゃんは『嬉しい』と言っています。
セラはすっかりお姉様ですね」
アミィールは笑みを作ってセラフィールを撫でる。セラフィールは少し考えてから、大好きな母親の胸に顔を埋めた。
「………お母様、悲しいですか?」
「え?」
「わたくし………お母様が悲しいのは、嫌です。お母様が無理に笑うのは、嫌です。
もっともっといい子になるので、どうかお母様はわたくしに頼ってくださいまし」
「セラ……………」
突然の言葉に少し驚く。でもすぐに優しい笑顔に戻って、セラフィールを大事に抱き締めた。
___セラフィールはいつも、いつだってわたくしが泣きたい時に言葉をかけてくれる。抱き締めてくれる。小さい頃からずっと。
母親のわたくしが甘えてしまってはいけないと思いますが、それでも………わたくしはこの子にいつも甘えてしまいます。
どちらが子供かわかりませんね。……大好きな、大事な子供です。
『ベイビーちゃんも、大事?』
___ええ、大事ですよ。
アミィールは2人の子供に囲まれて、幸せな休憩時間をいつもより長めに過ごした。
* * *
同時刻、庭園にて。
セオドアとアドラオテルは真剣な顔で見つめあっていた。セオドアはいつになく真剣に、アドラオテルに言う。
「アド、いいか?………これは、お前にしかできない任務だ」
「うん。___俺は赤ちゃんの為に、この『とくべつにんむ』をすいこーするぞ」
アドラオテルは父親の言葉にしっかりと頷く。いつものように巫山戯ていない。風がそよそよと吹き、草木が揺れる中………アドラオテルは"ある物"を構えて、セオドアはそれを緑の瞳で捉え、二人同時に力強く言った。
「私は…………子供を取り上げる!」
「俺は…………弟が産まれる瞬間を、『びでお』に撮る!」
「やれるか!アド!」
「がってんでい!父ちゃんこそ出来るの!?」
「当たり前だ!できるできないではない、やるんだ!」
「父ちゃん!」
「アド!」
2人はそう言って、お互いを抱き締めた____………
「……………………」
「……………………」
そんな真剣な主人2人を見守るレイと、アドラオテルの側近であるヨウ。2人とも冷めた目をしている。こそ、とヨウがレイに話しかけた。
「…………これは、演劇の練習ですか?」
「違う、本人達は真剣なんだ」
「何を考えているのですか?このお2人は」
「長年務めている俺でも知らん」
「……………」
呆れ返るヨウとうんざりするレイ。2人をよそにセオドアとアドラオテルはヒートアップする。
「アド!ビデオを回す時、魔力は常に一定にするんだ!平常心を保て!どんな瞬間も見逃すな!」
「おうっ!父ちゃんの真後ろで撮ればいいんでしょ!?」
「違う!それではアミィの聖域が映ってしまう!誰にみせても恥ずかしくはないが、アミィにもプライバシーはあるし私は見られたくない!
想像するんだ!私がこの角度に立っている時はスプーンを持つ手の方に立つんだ!」
「こっち!?」
「そっちは逆だ!あっちだ!……そう!そこ!その立ち位置を身体に叩き込むんだ!」
「任せて父ちゃん!俺は一流の『ビデオマン』になるっ!」
「その意気だ!次は魔力のコントロールをやる!このボールを割ってみろ!」
「がってん!ふんっ!」
「よし!よく出来た!次は………」
セオドアとアドラオテルは沢山のボールを割り、何度も何度も立つ位置の確認をしている。そんなアホな主人達の休憩時間を『馬鹿な親子だ……』と思いながら見ていた側近達でした。




