02 皇配、通常運転
「うーん……………」
セオドアは唸っていた。
周りには___沢山の小さなドレスや男物の服。そして、セオドアの手元には沢山の紙が散らばっている。
その様子を執事のレイは遠くを見るような目で眺めている。もう聞かなくてもわかる。新しい子供の服だ。で、紙に描いてあるのはこれから作る服のデザインである。
そして、これらの服の全てはセオドア個人でやっている仕事のものではない。………新しい自分の子供の服だ。
「うぅん、…………お腹の子はぬいぐるみで遊んでいるから女の子か?いやでも、アドラオテルと剣で遊んでいるしな。いや、セラフィールと共におままごとをしていたな………
いや、遊びは判断基準にはいらないな。セラとアドに合わせているっぽいし。そうなると絵本か?………聞かせてあげるとなんでも喜ぶんだった………
どっちなんだ…………!」
「……………」
そう言って頭をぐちゃぐちゃにするセオドア。これは俺に話しかけているのではない。信じられないかもしれないが、頭で整理出来なくて口に出ているだけなのだ。
こういう所は小さい時から変わらないな。本当に歳を取っているのかコイツ?
レイはそこまで考えて、はあ、と溜息をつく。
「……セオドア、また口から思考が出てるぞ」
「あ…………。そ、そんなことより、聞いてたなら教えてくれよ。
お腹の子はどっちだと思う?」
「そんなの知るか。産まれてからの楽しみだと言ってたじゃないか」
「言ったけど!それは理想なんだ!……セラとアドの時はなんとなくどっちか分かってたけど今回は全くわからないんだよ………もうあと少しで産まれるのに服が全然できてない………」
そう言って涙を浮かべるセオドア。泣く前に周りを見て欲しい。ドレスもズボンも100着はある。クローゼットの中には今まで作ったセラフィールとアドラオテルの服がある。部屋にあるクローゼット全てにあるんだ。
「………はあ、3人目だぞセオドア。いい加減落ち着けよ」
「落ち着いていられるか!俺とアミィの子供だぞ!紛れもなく可愛いに決まっている………!嗚呼、何故双子を孕ませなかった俺…………1度目は出来ただろう………何故………」
「……………」
そう言って突っ伏して泣いているセオドアにとうとうレイまで頭を抱えたのだった。
* * *
「サクリファイスの龍神様の恵みあれ、
至上の神の加護を受けた魂よ、選ばれた誇りを胸に産声あげて♪………」
「…………」
執務室にて、セラフィールはアミィールの膝に乗り、大きなお腹を抱き締めながらサクリファイス大帝国に伝わる子守唄を歌っている。
………とはいえ、この子守唄は龍神が健在だった時までしか歌われていないもので、龍神を敬うよう洗脳するために作られた歌だ。もう知っている人も少ない歌なのだけれど、どこで覚えてくるのでしょう………
アミィールはそんなことを思いながら苦笑いを浮かべつつセラフィールを撫でる。
「セラ、お歌が上手ですね」
「へへへ、ベイビーちゃん喜んでくれている?」
『ベイビーちゃん、嬉しい、嬉しい。
けど、龍神ってなに?』
___それは…………
アミィールは言葉に詰まる。この子守唄を聞くと『龍神』について教えて、と赤ちゃんはいつも聞いてきます。
でも、わたくしは考えないようにしています。赤ちゃんは思考を読めてしまうのです。
___わたくしの赤ちゃん、貴方が産まれた時、いつか………必ずお教えします。なので、どうか………
『………うん、わかった、ママ』
赤ちゃんはそう静かに言う。……セオドア様と子供達と過ごして変わったと思っていましたけれど、やはりわたくしの醜さは変わっていないようです。
『ママは、醜くないよ。ベイビーちゃんは大好きだよ』
____ありがとう。わたくしも、大好きです。
「………お母様?」




