01 険悪な双子
※短編にしては長めです。
セラフィールとアドラオテルは基本仲良しだ。
怒るのはいつもセラフィールで、アドラオテルはそれをあまり聞かないで流す。なので、大きい喧嘩は殆どしない。
…………が、最近はそうじゃなかった。
「アドのわからず屋!」
「セラの石頭!」
ある日、セラフィールとアドラオテルはお互いの胸ぐらを掴んでそう罵りあっていた。セオドアは二人の間に割って入って止める。
「2人とも、喧嘩しないの。可愛い顔が台無しだよ?」
「わたくしは可愛くなくていいです!お父様!アドを怒ってくださいまし!」
「ハンッ!父ちゃんに助けを求めるなんて子供だぞ!オムツマンめ!」
「アドだってその言い方子供だもん!」
「あっかんべーだ!」
「~ッ!アド!」
「あっ、2人とも!」
2人はセオドアの言葉を聞かずギャンギャンと騒ぐ。セオドアは大きく溜息をついて、後ろに目を向けた。
ソファには………困った笑みを浮かべている我が妻、アミィール・リヴ・レドルド・サクリファイス。そのお腹は膨らんでいる。現在臨月だ。
すくすくとお腹の子が育ち、いつ産まれてもおかしくない時期に差し掛かった辺りから、セラフィールとアドラオテルはよく喧嘩をするようになった。
理由?それは____
「ベイビーちゃんは女の子だもん!」
「いーや、男の子だッ!弟だもん!」
……………こういうことである。
臨月を迎えたことにより大きくなったアミィールのお腹と話しかければ答えてくれたり心配すると魔法を使ってくれるようになった赤ちゃん。
成長していくのを傍で見続けて、あまり興味のなかったアドラオテルも赤ちゃんに興味を持ち始めた。
『赤ちゃんはどう生まれるの?』、『俺の兄弟になるの?』、『赤ちゃんってハンバーグ食べる?』、『赤ちゃんの服は俺のお下がりでいいよ』、『本当に父ちゃんの子なの?』と色々ツッコミどころはあるがこうして聞いてくるようになった。そして勿論俺の子だ。
アミィールの男避けは10年かけてさり気なくやってるし、なによりアミィールは俺を愛してくれている。とはいえ子供にこれを聞かれてショックを受けたが。
とにかく………アドラオテルとセラフィールが喧嘩しているのを止めなければならない。
セオドアはそこまで考えて、もう既に取っ組み合いの喧嘩をしている2人に言う。
「アド、セラ、いい加減にしなさい」
「はぁ、はぁ、お父様は向こうへ行ってて下さいまし!」
「っは、セラ、俺は本気で怒ったぞ………ダーインスレイヴ!」
セラフィールは紅銀の魔力を纏ってふわふわの髪を逆立てている。アドラオテルはサクリファイス皇族専用魔剣を握りしめている。しかし、セオドアは真剣な顔で言葉を紡いだ。
「赤ちゃんはきっとお姉ちゃんとお兄ちゃんが喧嘩してたら悲しむよ?嫌いになっちゃうかもしれない。
2人はそれでいいの?」
「………ッ!」
「俺の弟はそんなこと言わないッ!」
2人はそう言って向かい合うのをやめて母親のアミィールを見た。アミィールはお腹を撫でながら、少し大きめな声で言う。
「わたくしの赤ちゃん、怖がらないで下さいまし。『お兄ちゃんとお姉ちゃんが喧嘩するなら産まれたくない』なんて言わないでくださいまし」
「!?ベイビーちゃん!ごめんなさい!わたくし、もうアドと喧嘩しませんので!そんな事言わないでくださいまし!」
「け、喧嘩なんてしてないぞ!赤ちゃん!俺達ちょー仲良しだぞ!?」
セラフィールとアドラオテルは走ってアミィールのところに行き、赤ちゃんの居るお腹に向かってそう弁解する。
…………3人目の赤ちゃんは、アドラオテルやセラフィールと違って活発に動いている訳でも活発に話しかけてきたりする訳でも無い。
けど、2人が喧嘩するといつも止めようとしてくれる。魔法だったり、言葉だったり。
最初こそアミィールがこの無茶苦茶な双子を説得させる為の方便か?と思っていたけど、本当に赤ちゃんが言っているのだとアミィールが言っていた。
優しい子だ、きっと。
セオドアはそう思いながら、泣き出した2人の子供達を撫でたのだった。




