02 男の子は勝負好き
そんないい雰囲気を壊したのはヨウの主人のアドラオテルだった。
「そんなことよりおいも掘ろうぜ!大きいの盗られちゃう!ほら、ヨウちゃん行くよ!」
「わっ、あ、アドラオテル様!」
「孤児院では今まで通り呼びなさいよ!ヨウくん!」
「う、そ、それは____「よぉ、忌み子」…………!」
ヨウの言葉は遮られた。見ると___いじめっ子で年長組のボス・ハイセだ。
「なんでここに忌み子が居るんだ?おい」
「………ッ、ハイセ」
「アドの側近になったんだろ?お前。こんなボロ孤児院になんの用だよ」
「ちょっ、そんな言い方………!」
「なんだよ、弱虫狸」
「ひぅ………」
言葉を返そうとする前にハイセに睨まれて黙るター。それにはナナも怒った。
「なによ!僻んでるの!?ハイセお兄ちゃん!」
「俺だってもう雇用先決まってるっつーの。アドの側近なんてうらやましいわけあるか」
そういってべ、と舌を出すハイセ。………ハイセ達年長組は全員1ヶ月後にそれぞれの道を歩む。全員幸いなことに雇用先や養子先が見つかったのだ。
それはともかく、こんな険悪な雰囲気は嫌だ。そう思ったセラフィールは慌てて言葉を紡ぐ。
「お、おやめ下さい………それより、おいもを掘りましょう?折角のおいも掘りです」
「セラちゃんは今日も可愛いな~、もちろんそのつもりだ。
で、だ。年中組のヘタレ共、俺達と芋堀勝負しようぜ」
「なんでそんなことしなきゃならないのよ!男子のそういう所嫌い!」
「いい気になるなよナナ。俺たちはマジだ」
「………ッ」
勝気なナナもハイセの鋭い眼光に怯む。それに応えたのは___アドラオテルだった。
「………仕方ないですなぁ。いいよ、やってあげるよ。
泣いたって知らないから」
「ヘッ、誰が泣くかよ!お前らこそ泣くんじゃねーぞ!」
ハイセはそう高笑いして向こうに行った。セラフィールはアドラオテルの肩を掴む。
「アド!なんで受けたのですか!」
「男はしょーぶから逃げられないんだ!セラは黙ってろ!」
「ッ、そんな言い方ないじゃない!サイテー!」
「サイテーでけっこうこけこっこーだ!
サイスくん、ターくん、チョウくん、ヨウちゃん!やるぞ!」
「ちょっとアド!」
アドラオテルはそう言ってセラフィールを無視して畑に向かった。
* * *
「よしっ!やるぞ!」
「おー!」
「おー……!」
「うん」
「………ああ」
5人はそれぞれ芋を掘り始める。アドラオテルは魔法を使わず丁寧に掘っている。
魔法を使えば勝てるだろう。そもそも、アドラオテル1人がいれば畑の芋を全部とることは可能だ。けど、それをしないのは____これは、勝負だからである。
「おっ!芋発見!」
「こっちにも!」
「あった」
「あ、る………」
「早く取ろう!」
泥だらけになりながらアドラオテルは芋の頭を見つける。全員もそれぞれ見つけた。蔓を握り、『せーの!』と掛け声を上げて抜いた…………のだが。
「え」
「?」
「………ええ………」
「んん……?」
「……………」
全員の手元には____本当に小さい芋。食いでが無さすぎるいもに全員が真顔になる。
「こ、こんなことってある………?」
「不作………」
「ま、まだ決まったわけじゃない!次これを抜こう!」
「俺が抜く!」
アドラオテルはそう言って蔓を掴んだ。
少し引っ張っただけでぽん、と抜けるくらい小さな芋。
子供達は再び真顔を作った。