01 秋のイベントといえば!
「今日はみんな大好き芋堀よ~」
「「「「わーい!」」」」
サクリファイス大帝国皇妃・アルティアの言葉に子供達は声を上げて万歳をした。
リンドブルム孤児院。
様々な事情で孤児となった子供達が暮らす施設。その子供の数は約500人。沢山の子供達が育つには沢山の食料が必要である。
なのでこの孤児院では食育の意味も兼ねて食べ物を自分達で育てている。勿論それを提案したのはセオドアである。
植物を育てるのが大好きなセオドアは様々な種を調達し、育てかたを教え、10年かけて浸透させたのだ。
そして、現在は秋の月の3日。暑さが収まり、冬に向かう秋頃。今日は旬のさつまいもによく似た芋_パイと言う_を皆で掘ることにしたのだ。
アルティアの隣に立つセオドアは大きな声で、みんなに聞こえるように言う。
「みんなが頑張って作ったパイだからきっと美味しい。みんな、手分けして掘ろうね。
1人で掘れない子は年長組や私たちに声をかけるように、掘り方のおさらいは…………」
セオドアが長い説明をし始めるが、聞いている子供は少ない。勿論、この子も聞いていなかった。
「父ちゃん話長いぞ………」
「アド、お父様の説明をそんな言い方しないで!」
「だって、つまらないもん。掘るだけだよ?」
アドラオテルははあ、と溜息をつく。しかしその手にはしっかりスコップを握っている。主食になりうるパイは大量に栽培されていて、当番制で収穫する他の野菜と違って子供全員が参加なのだ。年間行事である故人気も高い。
「ねえ、ヨウちゃん、父ちゃんにスコップ投げて」
「なりません、アドラオテル様。ありがたいお言葉をちゃんと聞くのです」
アドラオテルの側近・ヨウはピシャリとそう突っぱねる。本当は側近であるヨウは孤児院に顔を出す必要が無いのだが、未だ7歳。育った場所ということもあって特別に連れてこられたのだ。
しかし、そんなことも理解していないアドラオテルは再び大きく溜息をついた。
「もうっ、お堅いんだからぁ………そんな所も大好きだ、け、ど♪」
「み、耳元で囁くな!アドラオテル!……はっ!」
大きな声を出したヨウは慌てて口を手で覆うが、時すでに遅し。全員の視線がこちらを向いている。顔を真っ青にするヨウを見て『またアドか………』と呆れるセオドアは頭を抱えながら言葉を続けた。
「…………お話はこれくらいにして、早速やろうね。
じゃあ、みんな頑張って」
セオドアがそう言うと子供達は嬉嬉として立ち上がり、それぞれ芋を掘り始める。それを横目にいつものメンツがアドラオテルとヨウ、セラフィールの周りに集まった。狸の獣人のターがくすくす笑っている。
「ふふっ、ヨウくんは何も変わってないね」
「嬉しい」
「ッ、み、みんな………その」
大きな体のサイスの言葉にヨウは言葉に詰まる。………僕はみんなを差し置いて、皇族に選ばれた。合わせる顔がないと思っていたから怖かった。
けれど、鋭い子供であるチョウはそんなヨウの手を取った。ヨウは顔を上げる。チョウは……優しく笑っていた。
「………ヨウくんは、どんな立場でも、僕達の友達、だよ」
「………チョウくん」
「そうよっ!」
そんな雰囲気の中、セラフィールの隣にいた女子のボス・ナナが仁王立ちして言う。
「アンタが側近である前に、私達は家族で兄弟よっ!帰ってきたい時に帰ってくればいーのっ!」
「ナナ、ちゃん…………」
「泣かないでよ!ナナが泣かせたみたいじゃない!」
うる、と涙を滲ませるヨウにナナはそっぽ向いた。セラフィールはその様子を優しく見守っている。




