02 ※乙女男子は健在です
アドラオテルとセラフィールは顔を顰める。最初こそカメラが大好きだったのだが、夏祭りやスイカ割りなどのイベントは勿論、毎日のように写真を撮られる。
もうすっかりカメラが嫌いになっている2人はぷい、と背を向けた。しかしセオドアは嬉嬉としてそれを撮ったのだった。
* * *
「~♪」
「セオドア、何をやっているんだ?」
執事のレイはセオドアに声をかける。セオドアは目の下にクマを作りながら分厚い本を開いていた。
レイの問いにセオドアはにこにこしながら答える。
「子供達のアルバムを作っているんだ」
「あるばむ?なんだそれは」
「写真をまとめてる帳簿だ、こんな風にな」
セオドアはそう言ってレイにアルバムを渡す。レイはそれを受けとり、見る。
そのアルバムはアドラオテルのもので、毎日撮っている写真が貼ってある。
その下にはカラフルな文字で『今日は花火大会、アドラオテルが甚平ではなく浴衣がいいと言っていたから初浴衣。やっぱり赤も似合うな』、『金魚すくい。今年で3匹目!今回の子は初めてアドが取った!偉い!』と綺麗な字でひとつひとつ書いてある。
それを見ているレイに、セオドアはペラペラと言葉を紡ぐ。
「そうやって成長記録を着けて何年後かに見るんだ。いい記念になるだろう?本当は赤ん坊の時からやりたかったけどそればっかりはな。
アドラオテルのは作り中だけど、セラフィールはもう出来てるんだ。それだけじゃなくて、皇帝夫婦の物もあるしアミィールのもある。家族全員用のアルバムがあってもいいなぁ。これが終わったら作るか………」
「………昔からお前はマメだよな。こういうのが好きなのは知っているが………」
レイはそこまで言って頬を緩めているセオドアからアルバムを全部奪う。そして、冷めた目で言った。
「……それでもやりすぎだ。とりあえず寝ろ」
そう、この乙女主人は最近寝ていない。目の下にはクマがくっきり浮かんでいる。そりゃそうだ。夜も寝るギリギリまでこれをやって、朝早く起きてこれをやっている。いくらなんでもやりすぎだ。
しかしこの乙女主人は眉を顰める。
「嫌だよ、休憩時間は少ないんだ。寝る時間が惜しい」
「ほう?ならばこのアルバムを燃やした方がいいか?………このアルバムが原因で倒れたらアミィール様はカメラを壊すかもなあ」
「…………」
セオドアはそれを聞くと無言で立ち上がって、自室の布団に潜った。…………こいつを止められるのは本当にアミィール様だけだな。執事としても友としても大助かりだ。
「セオドア、俺は1時間ほどヨウの教育をしてくる。アルバムも持っていくからちゃんと寝とけよ」
「…………わかったから早く行けよ」
あからさまに不機嫌な声を出す主人に溜息をついてレイは部屋を出ていく。セオドアは扉が閉まる音を聞いてから、掛け布団から顔を出した。
……せっかく楽しかったのに台無しだ。レイはいつになったら俺のことを理解するんだ?俺は寝るより子供達やアミィールの事をしてる時が幸せなんだ。
それなのに、脅して寝かせるなんて…………まったく、本当に俺の執事かあいつは………………
「大体、寝れるわけ………………すう」
そう言い終わる前に寝てしまう寝つきがいいセオドア。静かな部屋の中、ガチャ、と寝室に繋がる扉が開く。
ひょっこり顔を出したのは___アドラオテルとセラフィール。
アドラオテルはにや、と悪戯っぽく笑う。
「…………な?やっぱりレイが父ちゃんを寝かせただろ?
かけは俺の勝ちだ、今日のデザートは俺のだな!」
「もうっ、勝手に賭けたのはアドじゃない。わたくしのデザートはあげません!
それより、お父様が起きちゃうから早く部屋に行きましょ」
「父ちゃんは1度寝たらなかなか起きないから大丈夫だって!それより"アレ"探すぞ!」
アドラオテルはそう言って部屋を歩き回る。キョロキョロと探して、やっと見つけた。
「あった!カメラ!」
アドラオテルが探していたのは___カメラだ。四六時中持ち歩いているカメラが机にある。それを見つけたアドラオテルは自分の背より大きな椅子に飛び乗り、自分の顔くらいあるカメラを抱き締める。
「カメラ、ゲットだぞ!」
「……アド、やっぱりやめようよ。お父様が怒るわよ」
「やだ。だってこれがあったらずっとおしゃしん撮られるじゃん!これを壊すんだ!」




