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10 『異世界転生者の会』の罰

 




 タナカはその場で土下座する。そして、言葉を重ねた。



 「私達はもうこのようなことをしません!なんでもします!なのでどうかここだけは!ここだけは壊さないでください!


 わ、私達は、もう25年、ここで暮らしてきたのです、我々の居場所なのです、なんでも罰は受けます!必要であれば私の命を差し出します!なので、どうか!」



 「タナカさん………お、俺たちが罪を償います!タナカさんは悪くないのです!」



 「そうです!なので、どうか!」



 「…………」



 「…………」



 「……………」




 全員が『自分が罪を償うから』と全員を守ろうとしている。………今回の件は看過出来ないとはいえ、全員悪い人ではない気がする。なにより、この場所はとても綺麗だ。常に手入れされているのがわかる。それだけ、この場所が大事なのだ。




 それを知ると………俺は、アルティア皇妃様のように冷徹にはなれなくて。



 「___アルティア皇妃様」




 セオドアはタナカの前に来て、膝を着く。そして、しっかりと言葉を吐き出した。



 「………彼らは反乱因子では無かったのです。そこまでに」



 「………セオくん、どういうつもり?貴方は許せるの?国を乱したのよ」



 「それは許されるべきではないのかもしれません。けれども、彼らは異世界転生者の前にこの国の民です。


 民はサクリファイス大帝国そのものです。叱責は必要ですが誰かを傷つけてはいないのにそこまでする必要はないと私は考えます」



 「セオドア様………」



 「なので、どうかご慈悲を。アルティア皇妃様」



 「……………」




 セオドアの言葉に、アルティアは考える。

 確かに、国家転覆を本気でしようとしてなかった。誰かを傷つけている様子も、血の匂いもしない。防犯カメラやAI、部屋に置いてある機械はこの世界では見ないものばかり。



 優秀な人材と財産を燃やしてしまうのはもったいないかもしれない。それどころか、正式に私達がバックアップすれば彼らの言う『魔法と機械の融合』__つまり、自然と人工物が共存出来ればもっと素敵な世界になるだろう。


 ラフェエルに前世の話をする時わりとあるけど、結構日本の物に興味を持ってくれてるし日本の歴史を教えてくれと言われたこともある。この話を持っていけば喜ぶだろう。



 なにより____可愛い息子が怯えることなく私の意見に異を唱えたんだ。




 アルティアはそこまで考えてふ、と笑った。




 「___決めたわ、わたくし、アルティア=ワールド=サクリファイスの名を持って『異世界転生者の会』に罰を与えます。


『異世界転生者の会』及びこの施設は今時点を持ってして、サクリファイス大帝国の文化の発展の為の人材と施設として、保存、運営します」




 「……!それは………!」




 タナカが顔を上げた。アルティアはに、と笑った。



 「………今度から意見をする時は『国家転覆』ではなく、『進言』として城に来なさい」



 「ありがたき幸………っぐ」



 「ひっく………」






『異世界転生者の会』の全員は、泣いた。痛みではなく、喜びに。めそめそと大の大人が泣く中、セオドアとフラン、アルティアは笑顔だった。






 * * *



 後日




 「セオドア、手紙と荷物が届いているぞ」



 「ん?」



 レイの言葉に、セオドアはお菓子作りの手を止めた。手を拭いて、少し大きい箱と日本語で『田中』と書かれている手紙を受け取る。










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