09 お仕置タイム
「……で!お前達は何ができるんだ?セア、フラ、ルッティ!」
タナカは満面の笑みで聞く。それに言葉を放とうとしたルッティことアルティアが手で制した。そして、代わりに言葉を紡ぐ。
「____その前に、聞いてもいいかな?」
「ん?なんだ?なんでも言ってくれ!」
「もし、もしもさ、此処に皇族が攻めてきたらどうするの?国家転覆~なんて軽はずみに言ってたら流石の皇族も看過しないと思うんだけど………」
「寧ろそうなって欲しいさ、なんせ俺達は全員職人!自ら皇城に行くなんて大それたこと出来ないからな!ガハハ」
「…………そう……………そうだね………うん、決めた。
お前たち、全員地獄送り」
「え?…………!?」
タナカを含めた全員が目を見開く。ルッティは右手に雷を纏っている。そして左手には___金髪のウィッグとサングラス。
黒の長髪、黄金の瞳____この国で知らない者など居ない見た目の女。それを見て………タナカは呟いた。
「あ、ルティア皇妃、様………?」
「安心なさい。殺しはしないわ。ただ____全員、1発ずつ殴らせてね♪」
そう言ったアルティアにっこりと笑った。
* * *
1時間後
「すみませんでした…………」
「「「「すみませんでした………」」」」
そう謝る『異世界転生者の会』は見るも無残な程ボロボロだった。タナカに至っては顔面の形が変わっている。
その目の前で___足を組んで悠々と座るアルティア。
「誠意が篭ってないわね。もう1発いっとく?」
「ひっ!ご、ごめんなさい!」
「あ、アルティア皇妃様!そ、そこまでにしてください!死んでしまいます!」
アルティアと同じようにウィッグを取って男に戻ったセオドアは慌ててアルティアを止める。
………この1時間、ぶっ通しでアルティア皇妃様は暴れ回った。死なない程度に雷を纏った拳で一人一人殴ったのだ。いや、確かに殴りたい気持ちはわかるけど!でも流石に可哀想だから!
「可哀想ってね~、これはこの人達が確実に悪いでしょ~。紛らわしいことして国を騒がせたんだから………おっ、ファミコンある!………なんだ、レプリカか」
ごまプリン頭のフランはつまらなそうに部屋に置いてある機材を触って回る。1人だけ楽しそうである。
しかし、アルティアは依然不機嫌な声を出した。
「不用意に日本語を使い、国を乱しておいて悪気がないことがいい事なわけないでしょう?オタクを悪いと言わないわ。私もオタクだし。でもねえ、オタクにはオタクのルールがあるしそれを守らず馬鹿みたいなサークル作って好き放題してたのよ?
何よりあれよね、自分で城に来て進言するのではなく変な噂撒き散らして私たちがここを見つけるのを待ってたのが気に食わない」
「し、仕方ないですよ。私だって彼らの立場なら同じことをしてたかも知れませんし……」
「セオくんは優しすぎるわ。………あんたら、ホッとしてるけどセオくんはこれでいて前世は確実に陽キャだからね?陰キャの気持ちなんて理解してないんだから」
「う………」
顔を赤らめるセオドアを余所に、タナカが震えながら口を開いた。
「ま、まさかアルティア皇妃様とセオドア様とセイレーン皇国の聖女様が同じ日本人だとは知らず……」
「なに?言い訳?聞かないわよ。
さて、この巫山戯た研究所を爆発させましょうか。美味しくこんがり焼いてあげるわ」
「ま、待ってください!そ、それだけは許してください!本当に申し訳ございません!」