03 大切な人達の為に
セオドアはぐず、と泣きながらウイッグを直して考える。
この人達に何を言っても通じないのはいつもの事だろ、俺。いい加減学べ。プラスに考えるんだ。何があってもこっちには世界最強と呼び声高いアルティア皇妃様に聖女のフラン様がいらっしゃる。
一応潜入という話だけれど、バレたら戦闘も有り得るだろう。人数は少しでも多い方がいい。俺は___「セオ様!」………あ。
「父ちゃん!」
「お父様!」
「わわっ」
不意に愛おしい人の声が聞こえて振り返る。それと同時に愛おしい子供達が抱き着いてきた。
「アド、セラ、………アミィ」
「父ちゃんまた女の子してる~」
「お父様、可愛いです!」
「う…………2人とも、どうしたの?アミィも………」
「____セオ様」
俺の言葉を遮るように、アミィールが子供達ごと抱き締めてきた。アミィールの大きくなったお腹が当たる。
「どこにも行かないでくださいまし。……無理に、潜入などしないでくださいまし。………わたくしと子供達を置いてどこかに行かないでくださいまし」
「…………ッ」
アミィールは泣きそうな声でそう言う。
………今回の潜入はそれだけ危険があるんだ。相手は国家転覆を目論んでいる異世界転生者達なのだから。
でも。いや、だからこそ。
セオドアは子供達を抱きながら、小さく首を振る。
「……ごめん、アミィ。私は___貴方の夫だ。子供達を、………貴方を守る為ならどんなことでもすると決めているんだ。
けれど、泣かないで。必ず…………貴方の元へ、子供達の元へ戻ってくるから」
「んっ」
セオドアはそう言ってアミィールに触れるだけのキスをする。子供達の額にもキスをし、服の上からだけどお腹にもキスをした。
____この人達と共に生きる為に、俺は行かなければならない。
_____この人達と共に生きると決めたこの国を守りたいんだ。
その為ならば___どんなことでもしたい。
アミィールはそんなセオドアの真剣な顔を見て、涙を拭いた。そして、いつもの優しい笑顔を作った。
「…………そう言うと思っていました。
なので、もうお止めしません。
ですが、必ず………必ず帰ってきてくださいまし」
「ああ。………約束するよ。
いってきます、アミィ、セラ、アド、赤ちゃん」
セオドアはそう言っていつもの笑顔を向けてから、アルティアとフランの間に立つ。2人はそれを見届けてから、セオドアを連れて消えた。
アミィールと子供達は、しばらくその場から動かなかった。
* * *
サクリファイス大帝国南部・廃れた工場跡地
「よっ、と」
「わっ」
「っとーう!」
3人はカメレオンが言っていた『異世界転生者の会』のアジトだという工場跡地に来た。セオドアはキョロキョロする。
「本当に、此処なのですか………?」
「ええ。間違いないわ」
「ですね、門番いるし」
フランの言葉に物陰から工場を見た。厳つい男が2人、門の前に立っている。セオドアは小声で聞く。
「こ、ここからどうするのですか?強行突破、ですか?」
「そんなのつまらな………ごほん、効率が悪いわ。
なんのために変装してきたと思ってるの」
「………」
今つまらないって言わなかったかこの人?本当に危機感がない…………。
呆れるセオドアをよそに、フランとアルティアは話す。
「どうします~?先輩」
「まあ、とりあえず行ってみよう。なるようになるでしょう。
いくわよ、セアちゃん」
「わっ!」
赤、黄、緑という信号機トリオは動き出した。




