02 不安要素
それは良いのですが、セラフィールがベイビーちゃんと話している時にわたくしが動こうとすると怒るのです。酷い時には泣いてしまいます。なので、鍛錬もできず、身体ひとつ動かすこともままなりません。
横になりたいのですが………セオドア様は肩を揉んでくださってますし、セラフィールには動かないでと言われているので、我慢です。
そう頑張るアミィールを見て、近くで絵を書いていたアドラオテルは大きく溜息をついた。
「父ちゃんもセラも細すぎるぞ。母ちゃんも赤ちゃんも疲れちゃうぞ。ねえ母ちゃん」
「そ、そんなことございません。パパもセラもわたくしと赤ちゃんのことを思ってくれているのです」
「母ちゃんは我慢しすぎだぞ。ガツン!と言ってやればいいんだ!」
「ガツン、と………」
アミィールはセオドアとセラフィールを見る。2人は殆ど同じ顔で下がり眉をしてみせた。この顔に向かってガツンとは言えず、代わりに笑みを零した。
「…………やはり、わたくしは嬉しいです。お二人共、ありがとうございます」
「アミィ……………俺もアミィのことをすると嬉しいんだ、やらせてくれてありがとう」
「ふふふっ、お母様、わたくしもです!
アド、適当言わないで!」
ぎゃん、と吠えるセラフィール、アミィールを後ろから優しく抱き締めるセオドアとほんの少し困った顔をしたアミィールを見て、アドラオテルはやれやれ、と呆れたのだった。
* * *
「…………」
「…………」
「…………」
「………」
「…………」
「…………えっと………」
夜、皇族専用食堂で家族全員が食事を食べずアミィールを見ていた。目の前には、食べやすい身体にいいご飯と…………剣やぬいぐるみ、絵本や宝石、様々な玩具が所狭しと並べられている。
視線を向けられているアミィールは苦笑いしながら言葉を紡いだ。
「お、お父様、お母様、セオ様…………いくら見ても赤ちゃんの声はしません」
「えぇ~!?」
「えー!?」
アミィールの言葉に、母親であるアルティアとセラフィールは声を上げる。アルティアは持っていたフォークとナイフを投げ出し、口を尖らせた。
「もう5ヶ月よ?5ヶ月なのに魔法も使わない、語りかけてこないなんて………」
そう。わたくしの血筋はとても特殊で、胎児の時から物を浮かせたり、透視したり、母親に語りかけてきたりするのです。実際、セラフィールとアドラオテルの時はそうでした。この子も………と思ったのですが、沢山のおもちゃを並べられてもなお動くことはございません。
そんな当たり前のことを当たり前だと思わない男性陣が口を開く。
「セオ、本当に子供はお腹に居るのか?」
「ええ。医師や妖精神に見てもらいましたし、私も心音を聞きました。確かに居るはずなのです。
けれど………魔法を使わないとなると、何か問題があるのかも…………」
「セオ様……」
セオドアはそこまで言ってじわり、と涙を浮かべる。アミィールは優しく抱き締めた。
そんな両親を見ていたセラフィールはお腹の赤ちゃんに向かって話しかける。
「ベイビーちゃん、お願い致します。姉であるわたくしに生きていることを教えてくださいまし………」
「ソンナコト、デキマセン」
「アド!茶化さないで!」
「茶化してないぞ。ヨウちゃんが言ってたもん。赤ちゃんがお腹の中から魔法なんて使えないって。
それがフツーなんでしょ?赤ちゃんは俺達と違ってフツーなんだからいいじゃん」
「………………」
セオドアは黙る。
………確かに、その通りである。そもそも、子供達が膨大な魔力を持つが故に胎児でも魔法が使えたのだ。仮に膨大な魔力がなかったとしたら………もしかしたら、この子は龍神の血を強く受け継いでいないのかもしれない。
ならば体を苦しめる『代償』が無いかもしれない。
それは____喜ぶべきだろう。そりゃあ、物が動かないのは寂しいけれど。




