02 忌み子側近は頑張る
アドラオテルとセラフィールの勉強する日は週に3回だ。もう5歳なのだから普通の貴族であれば山のように勉強するのだろうが、皇族である2人は違う。
それは甘やかしているのではなく………2人が優秀すぎるからだ。1日かけて覚えることを1時間もあれば覚える。アドラオテルはともかくセラフィールなどは既に政治や歴史、礼儀などの作法全て16歳までの知識は有している。それだけではなく、常に本を読んでいる。
アドラオテルは勉強嫌いだから全くしないが、すぐに問題を理解し答えを出す。導き出すのではなく、パッと答えだけを出すのだ。
要するに、2人は天才なのだ。
とはいえ学ぶこと自体に重きを置いているため3日はこうして教養を学ぶ。
「………よろしいでしょう。今日はここまでです」
リーブがそう言うと、セラフィールは『ありがとうございます』と綺麗にお辞儀をした。
「ふぅ」
「セラフィール様、タオルを」
「ありがとうございます、コト。次はお母様の所へ行きましょう」
「はい!」
セラフィールが笑顔でそう言うと、コトは顔を強ばらせる。……アドラオテルも大変だけど、セラフィール様は女性だしドレスの着付けとかも覚えなければならないコトは大変だな………
「ヨウちゃ~ん!」
「わっ」
そんなことを思いながら2人を見ていると、アドラオテルが抱き着いてきた。汗をかいているのに爽やかなミントの香りがする。
「俺達は父ちゃんの所に行くぞ!」
「わかりました。セオドア様は今日何を__「庭園で庭の手入れだぞ!」………申し訳ございません、予定を覚えられず」
ヨウが畏まると、アドラオテルはぶんぶんと首を振る。
「いいんだぞ、悪いのはセラみたいに細か~くその日その日でスケジョールを決めてる父ちゃんなんだから」
「………スケジョールではなくスケジュールです。アドラオテル様」
「いいからいっくぞ~!」
「わっ!廊下を走らないでくださいアドラオテル様!」
ピューっと走り出すアドラオテルをヨウは追いかけたのだった。
* * *
「よくできているぞ、ヨウ」
「ありがとうございます」
ヨウはセオドアの執事、レイに頭を下げる。側近には週に2回休みがある。そういう時は『側近教育』を受ける。何度も言うがアドラオテルは皇族で、将来皇帝になるかもしれない子供。
その側近の僕が普通では居られない。
「レイ様、次は魔法を学びたいです!自縛魔法を中心に!」
「ああ、わかった。じゃあガロ様とバトンタッチする」
「お願い致します!」
ヨウはそう言って再び本を読み始める。………ヨウはセオドアの言う通り優秀だ。1か月前側近に任命された時から基礎知識や礼儀作法を既に会得していたほど頭が良く、武術や魔法もある程度できる。
おまけに向上心の塊で、常に色々なことを学ぼうと意欲も十分だ。……あの小さな赤ん坊がこうして大きくなるんだから、月日というのは凄いな…………
レイはしみじみとそんなことを思いながら部屋を出たのだった。
* * *
「ふっ!」
「おわっ」
ヨウは木刀をアドラオテル目掛けて放つ。アドラオテルは少し驚いた顔をしながらそれを防いだ。
………セオドアが鍛錬場で『夫教育』を受けている間はヨウがアドラオテルの剣の相手になることになった。
アドラオテルはとても強く、兵士では勝てない。しかし、ヨウもなかなかの使い手で、アドラオテルといい勝負をする。
「アドラオテル様~!頑張ってくださ~い!」
「ヨウ!もっと太刀筋をしっかり!」
白熱した仕合に固定ファンまでついている。そんな声援を聞けばアドラオテルは調子に乗る。
「ヨウちゃ~ん!もっと強めにー!」
「はい、アドラオテル様!」
そう言って再び剣を交える。
_____この日勝ったのはアドラオテルだったが、アドラオテルはヨウに膝をつかせることはできず、悔しげにしていた。