03 子供達の変化
『少し休憩致しましょう。セオドア殿はアドラオテル様に構ってあげてください』
「え、でも、まだ………」
『大丈夫ですわ、………それよりも、子供がいつもと違う行動をする理由を考えてみてください』
「………?」
リーファの含みのある言葉に、やっぱり首を傾げて、それでもアドラオテルを高い高いして遊んであげた。
けど、アドラオテルはその後もずっと俺に引っ付いていた。
* * *
いつもと違うアドラオテルに驚いたけど、変化はそれだけじゃなかった。
「ふぇぇぇぇん!」
「!?」
「なっ!?」
夜、寝室に泣き声が響いた。
アミィールとセオドアは飛び起きる。見ると___セラフィールが泣いていた。アミィールはすぐさまセラフィールを抱き寄せた。
「セラ!どこか痛いのですか!?せ、セオ様!すぐ医者を……!」
「そ、そうだね、ダーインスレイヴ様を呼んで__「うわぁぁぁぁん!」!?アド!?」
ダーインスレイヴを呼ぼうとする前にアドラオテルも泣いた。セオドアもアミィールと同じようにアドラオテルを抱き締めた。
部屋に泣き声が響き渡る。それだけではなく、ベッドや寝室に置いているおもちゃが浮き、俺の部屋に置いてあるピアノの音まで鳴って……呼ぶ暇もなく侍女や執事、側近、挙句の果てには皇帝夫婦まで寝室に来た。
話によると、城中の物が浮いたらしい。そしてこの超音波のような泣き声が響き渡って………みんな来た。
皇帝夫婦が夜着のまま首を傾げる。
「代償か?」
「いいえ、代償で泣くことは今まで無かったわ。
セラ、アド、どうしたの?どこか痛いの?」
「ひっぐ、えぐ、痛くないもん………」
「ぐずっ、俺、泣いてないもん………」
2人はそう言ってグズグズ泣いている。念の為医者にも診てもらったが、どこも異常がなかった。つまりはただの夜泣きなのだ。
「セラ、アド、どうして泣いたのですか?」
「ママぁ、ひっく、ママぁ………」
「母ぢゃん、母ぢゃん………」
子供達は物を浮かせるのをやめたが、それでもグズグズと泣いていて。アミィールは困ったと言わんばかりにセオドアを見た。
「セオ様、子供達はどうしてしまったのでしょう……?」
「うーん、どうしたんだろう……アドも甘えたになっていたし、子供達の様子がおかしいね」
両親は初めての夜泣きに戸惑って、その日は寝られなかった。
___この日から夜泣きが始まったのだった。
* * *
春の月の17日
「…………ふう」
執務室にて、アミィールは書類を書くのを辞めて、天井を仰いだ。
___最近、子供達の様子がおかしいのです。
セラフィールとアドラオテルは最近毎日夜泣きをします。夜泣きをすると魔法を制御出来ずいつも物を浮かせてしまう。
それだけではなく、アドラオテルはおねしょをしてしまったり怒りっぽくなったり、はたまた甘えっ子になっています。
セラフィールは孤児院にも行かず、わたくしやセオドア様にいつもくっついています。そして、ご飯を自分で食べないです。
いいえ、この5年間子供達が何事もなく育った方が不思議なのですから、普通の子供は出来なくて当然なのです。それを責めたり嫌気がさしたりする訳ではなく、あまりにも突然だったので疑問なのです。
やはり、わたくしの育て方なのでしょうか___「母ちゃん!」
「あ………」
そんなことを思っていると、いつの間にかアドラオテルが膝に乗っていました。後ろでは息を切らしたヨウが言葉を紡ぐ。
「も、申し訳ございません、アミィール様。アドラオテル様はどうしても貴方に会いたい、と……」
「母ちゃ~ん!」
アドラオテルはそう言ってまたぎゅう、と抱き着いてきた。アミィールは優しく背中を摩る。
「どうしたのですか、アド?」
「母ちゃん、母ちゃんは………俺とセラのこと、好き?」
「ええ、勿論。貴方とセラはわたくしとセオ様の宝ですわ」
「本当に本当?」
「はい。わたくしとセオ様の子供は貴方達だけですよ」
「…………違うんだ」