06 妹よりも
怖い、怖い。
セラフィールは震えながら布団を被る。
一人ぼっち、寂しい…………誰か、助け___「セラ」………?
不意に、聞きなれた声がした。そして、小さな手が布団に入ってくる。誰の手かすぐに分かった。
「…………アド?」
セラフィールは涙に濡れた顔を布団から出す。そこには仏頂面で枕を抱えるアドラオテルがいた。アドラオテルは大きく溜息をついた。
「やっぱり泣いてた。泣き虫セラ」
「っ、泣いてなどないです………!こ、これは汗なのです!」
「父ちゃんと同じようなこと言わないで、素直に怖かったって言えば?
ほんと可愛くないなあ」
「………ほっといてくださいまし。アドは部屋に戻るのです」
セラフィールがぐず、と涙を拭いながらできるだけ素っ気なく言う。しかし、アドラオテルは黙ってセラフィールの手を繋いだ。
「雷の中、おねーちゃんとはいえ1人で寝れない女を放って置くほど俺はサイテーじゃないし」
「アド………」
「仕方なくだけどな」
「……ひぐっ」
アドラオテルの言葉に、セラフィールは再び涙を零した。怖いのではなく、安心したのだ。手に馴染んだこの感触、温かさが心地いい。
そんなセラフィールを優しく撫でながら、アドラオテルは言葉を紡いだ。
「………セラ、セラは妹が欲しいからじりつするー!って言ってるけど、それってそんなに大事なの?
泣いて我慢して………そうじゃないと妹が手に入らないなら、俺はいらない」
「っぐ、しかし、わたくしは妹が……」
「俺は、どんな顔かもわからない妹よりもセラが好きだ。父ちゃんと母ちゃんが好きだ。
それじゃだめなの?」
「……………」
アドラオテルの言葉に、セラフィールは涙を拭いながら考える。
それは、そうだけど。
でも、妹は欲しい。わたくし達が自立しなければ出来ないのだから。
ですが…………わたくしは。
「わたくし……………パパとママと寝たい………」
セラフィールはぽつり、そう呟いた。それを聞いたアドラオテルは満足気に笑って、セラフィールを引っ張る。
「セラ、父ちゃんと母ちゃんの所、行こうよ。俺も付き合ってあげるからさ」
「…………うん」
アドラオテルの言葉に、セラフィールはすっかり濡れてしまった枕を抱きかかえた。
* * *
「……………」
「……………」
皇女夫婦の寝室。
アミィールとセオドアは同じ布団に入って、抱き締めあっていた。
ちゃんと服は着ている。………子供達が自立を頑張っているのだから自分達も頑張らねば、とは思うが、そういう気分になれなかったのだ。
勿論、好きな人と一緒なのは嬉しい。子供達がいて、甘い雰囲気になれなくて我慢することだって沢山あった。
…………けれど。
「セオ様、…………ベッドが、広すぎますね」
不意に、アミィールがそんなことを言って俺の胸に顔を押し当てた。すり、と顔を擦り付けている。俺はそんなアミィールの頭を撫でた。
「………そうだね」
「結婚してから使っているベッドで………あの子達がいないときからあるのに、今はとても広く感じてしまって………落ち着きません」
「いつもアドの寝相が悪くて狭かったのにね」
「ええ。………今日は雷です。セラは大丈夫でしょうか………迎えに行った方が……」
「…………」
アミィールの声がどんどんか細くなる。
俺が喋っても、こうなってしまうだろう。だって、俺も同じことを考えているから。




