05 大嫌いな雷
入ってきたのは母ちゃんであるアミィールだった。そしてやっぱりお風呂のことだった。
アドラオテルはドヤ顔をし、胸を張って言った。
「母ちゃん!俺は部屋の風呂に入ったぞ!」
「………あら、そうなのですか?部屋というのは、パパのお部屋の?」
アミィールはにこにこしながら息子に近づく。アドラオテルはさらに胸を張って言う。
「違うぞ!この部屋のだぞ!俺はピカピカなんだ!」
「この部屋のお風呂………アド、いいことを教えてあげましょうか?」
「いいこと?……はっ、もしかして、『伝説の剣』の新作!?新しいのが出るのか!?」
食い気味に聞いてくるアドラオテルに、アミィールはにっこりと笑って口を開いた。
「………この部屋のお風呂、お水が出ないのです」
「え」
「アドとセラの部屋のお風呂は、2人がもう少し大きくなったらとパパが言っていたのでそうしているんですわ」
「…………」
アドラオテルの顔から血の気がさ、と抜けていく。アミィールはポキポキと指を鳴らしながら変わらない笑顔で問うた。
「…………アド、この部屋のお風呂に入ったのですよね?」
「…………………え、ええっと、ママ大好きでぇす♪」
「………よろしいでしょう。わたくしもアドが大好きなので、お説教とお尻叩き100発で許して差し上げます」
「……………」
_____この後アドラオテルはこってりとアミィールの説教を聞きながら絞られ、痛いお尻を抑えながらアミィールと風呂に入った。
こうして双子達は『必ず両親とお風呂にはいる』ことを決められたのだった。
「アド、ちゃんと洗わないのでしたらわたくしが洗って差し上げますわ」
「お、俺洗えるよ!」
………因みに、アドラオテルは力加減知らずの母親と入る頻度が多いので必然的にセラフィールより身体が洗えます。
* * *
「…………ひっく…………」
セラフィールは勉強机に突っ伏して泣いていた。
………結局お父様とお風呂に入りました。お父様はいつも通りモコモコの泡を作り出し、わたくしの髪を丁寧に洗ってくださりました。身体も優しく擦ってくれました。夜着を着るのも、髪を乾かすのも全部甘えてしまいました。
わたくしは1人でお風呂に入ることもままなりません。不甲斐ないです。これでは妹に笑われてしまいます………
ですが、洗い方は今日じっくり観察しました。明日からまたチャレンジです!レイにも台を用意して貰いましょう。それはともかく、大事なのは夜です。
お母様もお父様もおばあ様もおじい様も誰もいない、自分一人の部屋で寝る。ちゃんとこれが出来れば妹はできます。ここが正念場です。
セラフィールはそこまで考えて涙を拭いた。そして、机から離れてベッドにはいる。
一人で寝るくらい、わたくしはできます。普段から寝るという行為はしているのですからできないわけがございませ____!?
そこまで考えて、外が光った。そして、ゴロゴロゴロ!と大きな雷が落ちた。
「ひうっ………!」
セラフィールはあまりの大きな音に震えた。今日は朝から雨が降っていますが、雷は今初めて聞きました………。
わたくしは、雷が大嫌いです。大きな音、眩しい光、怖いです。で、ですが、寝なければ………ッ!
また、ゴロゴロと音がした。セラフィールはベッドに置いてあるぬいぐるみを抱きしめる。
もふもふで大好きなぬいぐるみなのに、全然温かくありません。雷が鳴ると抱き締めて守ってくれるお母様も、優しく撫でてくれるお父様も、手を繋いでくれるアドラオテルも居てくれません。




