03 お遊戯会決定!
「それで、劇………………」
アルティアはセオドアの言葉を反芻する。
根っからの仕事人間親子は政治的な事しか言えない。それを悪いと言わないけど、私が悩んでたのはそこじゃなくて。上手く伝わらなかったのを義息が言葉にしてくれた。
その上で『劇』と言ってくれたのだ。
………確かに、最近城下町に劇場が出来た。オペラとかを開く為の場所だけど、あそこならできるだろう。認識だけではなく、個別のグループでやれば顔も覚えてもらえるかもしれない。
素晴らしければ演劇の世界に進めばいいし、そうじゃなくとも孤児達は魔法を使えるし、それで演出を手がければその伝手でいけるかも。
何より、その劇場に皇帝や皇女が見に来ていれば自然と流行になる。流行りもの大好きな貴族はもちろん国民たちだって楽しめる。
…………最初にぶちかますにはいいかもしれない!
そう考えたアルティアの暗い顔が段々明るくなる。そして、立ち上がった。
「よっしゃ!決まり!お遊戯会!開くぞーーーー!」
「おゆうぎかい?」
「おゆうぎかい?」
「お母様、おゆうぎかいとはなんですの?」
「説明しろ、アル」
「ははは、………」
…………言い出したのは俺だし後悔は無いけど、またアルティア皇妃様が滅茶苦茶なことをする気がする………
そんなことを考えながら、セオドアは苦笑いを浮かべたのだった。
* * *
「と、言うことで!皆にはお遊戯会をしてもらいまーーーす!」
「おゆうぎかいー?」
「なあに、それ?」
次の日、俺とアルティア皇妃様、子供達はいつものように孤児院に来た。そして子供達を広間に集めて昨日話した件を言う。もちろん、お遊戯会なんてこの世界にないからみんな首をかしげている。
それを説明するのはアルティア皇妃様ではなく、俺の役目だ。
「お遊戯会っていうのは、劇の事だよ」
「げきってなーにー?」
「劇っていうのは__「劇っていうのは絵本みたいなことをすることよ!」
俺が説明をする前に大きな声が響いた。見ると___5歳の女の子・ナナちゃんだ。ナナちゃんは目をキラキラさせて熱烈に語る。
「沢山のスポットライトを浴び、沢山の人々に見られながら役になりきって素敵な演出を考えて………それが終われば拍手喝采!名女優にも名俳優にもなれるシンデレラロード………
ナナはやるわ!脚光を浴びて世界にナナの名前を響かせるの!」
「楽しそう~!」
「やる~!」
「……………」
セオドアは真顔を作る。本当の主役は社会に早く出る年長組なんだが………こんなにやる気に満ちたナナにそれは言えない。
そんな困ったセオドアに、アルティアは肩にぽん、と手を乗せた。
「年長の100人は決定、年中はやりたい子のみ、やらせましょうね」
「………ですね」
「よし、決定。年長はみんな参加、年中はやりたい人だけでいいわ。他の子達は当日劇を見ましょう。
ということで、5~20人のペアを作ってね。どんな物語をやりたいか決まったり、分からなかったりしたら私とセオくんに聞いてね~」
「「「「はーい!」」」」
全員は元気に返事をした。
* * *
「セラ!ナナと一緒に劇をやって!」
「え、ええ!?」
グループ作り中、ナナは真っ先にセラフィールに声をかけた。セラフィールは肩を跳ねさせる。
………このおゆうぎかいは、わたくしとアド以外のみんなが普通の人と違わない、というのを知ってもらうもの。わたくしやアドは参加する資格がないのです。
とはいえ………そんなこと、この目を輝かせたナナちゃんに言えない。
「わ、わたくしは、恥ずかしいので………」
「ナナの名を売るためには………セラのその美貌が必要不可欠なのよ」
「……………ぅ」
それはもう目をギラギラさせているナナに言葉を失うセラフィールでした。




