表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

31/230

03 お遊戯会決定!

 


 「それで、劇………………」




 アルティアはセオドアの言葉を反芻する。

 根っからの仕事人間親子は政治的な事しか言えない。それを悪いと言わないけど、私が悩んでたのはそこじゃなくて。上手く伝わらなかったのを義息が言葉にしてくれた。



 その上で『劇』と言ってくれたのだ。

 ………確かに、最近城下町に劇場が出来た。オペラとかを開く為の場所だけど、あそこならできるだろう。認識だけではなく、個別のグループでやれば顔も覚えてもらえるかもしれない。


 素晴らしければ演劇の世界に進めばいいし、そうじゃなくとも孤児達は魔法を使えるし、それで演出を手がければその伝手でいけるかも。


 何より、その劇場に皇帝や皇女が見に来ていれば自然と流行になる。流行りもの大好きな貴族はもちろん国民たちだって楽しめる。




 …………最初にぶちかますにはいいかもしれない!




 そう考えたアルティアの暗い顔が段々明るくなる。そして、立ち上がった。



 「よっしゃ!決まり!お遊戯会!開くぞーーーー!」



 「おゆうぎかい?」



 「おゆうぎかい?」



 「お母様、おゆうぎかいとはなんですの?」



 「説明しろ、アル」



 「ははは、………」




 …………言い出したのは俺だし後悔は無いけど、またアルティア皇妃様が滅茶苦茶なことをする気がする………



 そんなことを考えながら、セオドアは苦笑いを浮かべたのだった。






 * * *




 「と、言うことで!皆にはお遊戯会をしてもらいまーーーす!」




 「おゆうぎかいー?」



 「なあに、それ?」




 次の日、俺とアルティア皇妃様、子供達はいつものように孤児院に来た。そして子供達を広間に集めて昨日話した件を言う。もちろん、お遊戯会なんてこの世界にないからみんな首をかしげている。



 それを説明するのはアルティア皇妃様ではなく、俺の役目だ。




 「お遊戯会っていうのは、劇の事だよ」


 「げきってなーにー?」


 「劇っていうのは__「劇っていうのは絵本みたいなことをすることよ!」



 俺が説明をする前に大きな声が響いた。見ると___5歳の女の子・ナナちゃんだ。ナナちゃんは目をキラキラさせて熱烈に語る。




 「沢山のスポットライトを浴び、沢山の人々に見られながら役になりきって素敵な演出を考えて………それが終われば拍手喝采!名女優にも名俳優にもなれるシンデレラロード………


 ナナはやるわ!脚光を浴びて世界にナナの名前を響かせるの!」



 「楽しそう~!」



 「やる~!」



 「……………」



 セオドアは真顔を作る。本当の主役は社会に早く出る年長組なんだが………こんなにやる気に満ちたナナにそれは言えない。



 そんな困ったセオドアに、アルティアは肩にぽん、と手を乗せた。




 「年長の100人は決定、年中はやりたい子のみ、やらせましょうね」



 「………ですね」



 「よし、決定。年長はみんな参加、年中はやりたい人だけでいいわ。他の子達は当日劇を見ましょう。


 ということで、5~20人のペアを作ってね。どんな物語をやりたいか決まったり、分からなかったりしたら私とセオくんに聞いてね~」



 「「「「はーい!」」」」



 全員は元気に返事をした。



 * * *




 「セラ!ナナと一緒に劇をやって!」



 「え、ええ!?」



 グループ作り中、ナナは真っ先にセラフィールに声をかけた。セラフィールは肩を跳ねさせる。



 ………このおゆうぎかいは、わたくしとアド以外のみんなが普通の人と違わない、というのを知ってもらうもの。わたくしやアドは参加する資格がないのです。



 とはいえ………そんなこと、この目を輝かせたナナちゃんに言えない。



 「わ、わたくしは、恥ずかしいので………」



 「ナナの名を売るためには………セラのその美貌が必要不可欠なのよ」



 「……………ぅ」




 それはもう目をギラギラさせているナナに言葉を失うセラフィールでした。










評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ