01 皇妃の悩み
※この話の時系列はpage2の前の話です。ややこしくてすみません。
「セラ!俺のピーマンやるよ!栄養満点だぞ!」
「自分で食べなさいよ、アド。好き嫌いはよくないわ」
「そうだぞ、アド。ちゃんと食べろ」
「え~………」
「アド、食べないのですか?」
「ひっ………た、タベマス、オカアサマ………」
皇族専用食堂で行われる家族団欒食事会。もうすっかり見慣れた光景だ。セオドアは隣で頑張ってピーマンを口に含むアドラオテルを撫でていると、ある違和感。
「……………」
目の前に座る長い黒髪、黄金色の瞳のこの国の皇妃・アルティア=ワールド=サクリファイス様が難しい顔をしているのだ。これは滅多にない事で首を傾げる。
それに気づいたのは勿論俺だけではなくて、隣に座る紅銀の短髪、紅い瞳の皇帝でありアルティア様の夫であるラフェエル・リヴ・レドルド・サクリファイス様も気づいたようだ。
「アル、どうした?」
「………あ、ううん、なんでもない」
「お母様、いつもしょうもない事ばかり言うのに何故言わないのですか。
もう手遅れなので何を言っても怒りませんよ?」
アミィールは素っ気なくそう言う。
いつも喧嘩ばかりだが、こういう言い方を聞くとアミィールがなんだかんだでアルティア皇妃様が好きなんだと伝わる。
しかしそれに気づいてないであろうアルティア皇妃様ははあ、と溜息をついた。
「酷い言われようね、私だって悩むことぐらいあるのよ。ねえ、ガキ共」
「ガキって言うなー!ピーマン食べさせるぞ~!」
「アドやめてください!おばあ様を怒らせたらまた食堂が……!」
子供達がぎゃんぎゃん騒ぐ中、セオドアははあ、と溜息をついてからアルティアに聞く。
「アルティア皇妃様、私達は家族です。隠し事はいけません。何かにお悩みでしたらぜひ相談してください」
「そうですわ。セオ様が聞いているので答えてくださいまし」
「………言え、アル」
家族全員の視線と言葉を受けたアルティアはしばらく考えてから大きな溜息をついた。
「わかったわよ、言うわよ。悩みっていうのは孤児院のことよ」
「孤児院のこと?」
セオドアが聞き返すと、アルティアは大きく頷いた。
「ええ、そうよ。サクリファイス大帝国の孤児はみんないい子だし国民もそうなんだけど、未だに蔓延ってるクソ貴族達は"孤児"と言うだけで酷い扱いをしてると聞いてね。
勿論、酷いことをしてる貴族は秘密裏に痛めつけているけれど、キリがないのよね。
だから、根本的に解決する策を考えてたのよ」
「……そんなことが……」
セオドアは顔を顰めた。
そんな現実を知らなかった自分に腹が立った。確かに、前世でも『孤児』というだけで腫れ物として扱ったり、批判する人は少なからず居た。この世界では身分制度もあるし、あってもおかしくない。
それでも、俺の知ってる孤児達はみんな勉強をしたり身体を鍛えたりして『将来』に向けて頑張っている。その子達が孤児、というだけで差別されているのは我慢できない。
涙目で震え始めるセオドアを見て、アミィールは口を開いた。
「………でしたら、爵位など撤廃してしまえばいいのでは?
身分制度があるから人を見下すという現実が出来てしまうのです」
「簡単に言うな」
アミィールの言葉に異を唱えたのはラフェエルだった。ラフェエルは続ける。
「今はまだユートピア黎明期。その中でそれを敢行したら肥えた豚共は各地で反乱を起こすだろう。急に環境を変える事が全ていい事だと思うな」
「わかっております。けれど、それでは優秀な国民達は身分によって自身の力を発揮できないでしょう。
わたくし達は率先して環境を変えなければ、他に誰が変えるのですか?」
「お前に言われずともいずれ変える。今はまだ時期ではない。焦るな。
それよりも、議題は孤児達の待遇を考える事だ。……孤児を雇う者と、対象の孤児に奨励金を配布する制度を作るべきか……」
「それは如何なものでしょう。奨励金目当てで雇って、不遇な待遇を強要される結果となっては本末転倒です。それよりも………」




