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15 新たな課題

 




 これはもはや恒例だ。子供達はいつだって実家に帰る……否、どこかに行くと必ずとこうなる。泣き声や怒鳴り声で阿鼻叫喚である。


 しかし、親だって成長するのだ。



 「アド、セラ、帰りますよ」


 「やだ!」


 「やだ!」


 アミィールの言葉に大声で嫌だという双子。しかし、アミィールは怯まない。



 「では、アドとセラはここに住むのですね。それもいいでしょう。……しかし、そうなると前に欲しいと言っていた『伝説の剣』は買えなくなりますね。セラの育てているお花もお水を貰えず枯れてしまいます」



 「………!」



 「あ………」



 アミィール必殺、物で釣る作戦。

 子供たちを熟知しているアミィールはアドラオテルには『伝説の剣』__今城下町で流行っている玩具で誘惑、責任感の強いセラフィールは庭園にあるセラフィールの大好きな花を育てる花壇で誘惑している。



 「お、俺、帰る………」


 「……………」



 「アド!物で釣られるな!俺達のゆーじょーはその程度か!」



 「ロト」



 「なんだよ母ちゃん!」



 セフィロトを呼んだのはサーシャだ。ちなみに母ちゃん呼びは言わなくてもアドラオテルに影響されて、だ。親に対して使う口調ではないが、サーシャも負けない。サーシャは兄上を見て言う。



 「旦那様、ロトを止めてくださったらセイレーン皇国に伝わる刀という剣を取寄せますわ」


 「セフィロト、男には我慢しなきゃいけない時もあるんだ」


 「父ちゃんの裏切り者~!」



 サーシャの言葉に横から『もっと泊まっていけよ』と言っていた兄上が真剣な顔で我が子を止め始めた。サーシャはサクリファイス大帝国の北にあるセイレーン皇国の"武家"生まれなのだ。



 武器に精通していて、お抱えの武器職人もいることで有名なガネーシャ家の令嬢で、そこから結婚するほど親睦を深めたのだとか。それ故に武器オタクの兄は頭が上がらない。



 それぞれがそれぞれの方法で子供を丸め込む中、セラフィールだけがターシャを抱き締め涙目である。セオドアはセラフィールに声をかけた。



 「セラ、帰ろう?」



 「ですが、わたくしは………ターシャ様と一緒に居たいのです」



 そう言ってポロポロと泣き出すセラフィール。いつもはアドラオテルより聞き分けがいいのだが、よほどターシャが好きなのだろう。この涙に答えたいけれど、それでは帰れない。


 「セラ、またターシャちゃんとは会えるよ、だから泣かないで」


 「っぐ、……」


 セラフィールは泣きながらもターシャを抱き締めている。可愛くて説得しずらいな……



 「ううん、どうしようかな……」



 「セラ」



 「父上?」



 困っているとずっと肖像画を描いていた父上がセラフィールに視線を合わせた。セラフィールは涙を流しながら顔を上げた。珍しく手助けしてくれるのかな……?



 「セラ、泣くことは無い。ターシャが可愛くて離れられないのはすごくわかるが……セラは近いうちに姉になるのだ。


 ターシャではなくとも、セラの妹か弟がすぐにできるぞ」



 「………!ほんとですか!?」



 「んなっ、父上!?」



 セオドアがセシルの言葉に顔を赤くするのを横目に、セラフィールは食い気味にセシルに聞く。



 「いつ出来ますか!?」



 「そうだなあ……一年後にはなってるはずだ」



 「一年って、どれくらいですか!?」


 「すぐだ、すぐにでき___「父上!」なんだ、セオ」




 セオドアはセラフィールに聞こえないくらい小さな声で言う。



 「適当なことを言わないでください!セラフィールは真面目なのです!信じてしまいます!」


 「セオ、いいか?それを分かっているなら1年以内に孫……セラフィールの妹か弟を作るんだ。そうすればこれは嘘にならないだろう?」



 「それは暴論です!そんなの___「お父様?」せ、セラ………」



 セラフィールに呼ばれて振り返る。セラフィールは………にこにこ、それはもう天使のような笑みで言葉を紡いだ。



 「わたくし、ターシャ様を我慢します。一年も待ちます、なので、妹をお願いします」



 「…………」




 この笑顔、コワセナイ。

 セオドアは顔を真っ青にしながら『うん……』と答えるしかできなかった。




 ___こうして、久しぶりの帰郷は変わらない物の再確認と『1年以内に子供を作る』という課題が生まれたものとなったのだった。












 Fin .















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