12 妹が欲しいのです
「……………はあ」
「ぅー?」
なんとかしつこい2人を撒いたセラフィールはターシャを抱きながら歩き、溜息をついていた。
わたくし、どうすれば良いのだろう。
結婚なんて全然想像できません。確かに、お父様とお母様のようにいつも仲良く楽しく仲睦まじい夫婦には憧れます。
けれど。
わたくしは未だに「好き」、「愛してる」などはわかりません。
そんな気持ちでセフィロト様と婚約するのは失礼だと思うのです。ですが、ターシャ様のような可愛らしい妹は欲しいです。
そもそも、子供というのはどのようにして出来るのでしょうか。今まで様々な本を読んできましたが、わからないのです。
「どうしたら、妹ができるのでしょう………」
「あら、セラじゃない」
「あ、おばあ様、ばば様」
そんなことを思っているといつの間にかテラスに居た。
そこにはおばあ様のアルティアとばば様のガーネットがいらっしゃった。ばば様がわたくしの元に歩み寄ってきた。
「セフィとセオ、旦那様は何をしているのでしょう。サーシャがアミィール様とお出かけに行く間は見てると言っていたのに………」
「まあいいじゃないの、ガーネットさん。野郎共の中に女の子達を任せられないわ。
それよりターシャちゃん可愛い~!セラ、こっちに来て女子会しましょ!」
「じょしかい、とはなんですの?」
「女の子同士お話することよ、悩みでも愚痴でもなんでも話していいの!」
アルティアはそう言ってに、と笑う。それを見たセラフィールは少し考えてからターシャと共に椅子に座る。
……もしかしたらおばあ様もばば様もなにか知ってるのかも。
「………おばあ様、ばば様、わたくし、悩んでいるのです」
「あら、そうなのですか?セラ、この機会なので仰ってみて?」
ガーネットはそう優しく聞く。セラフィールはぎゅ、とターシャを抱きながら口を開いた。
「わたくし、……どうしたら子供ができるのか知りたいのです」
「え」
「まあ」
セラフィールの言葉に2人は顔を合わせる。
………これを聞いてるのが5歳ですよ?流石の私でもどう子供ができるのかを赤裸々に教えることは出来ない。さてどうしたものか……
そう悩み始めるアルティアをよそに、ガーネットはにこやかに聞く。
「……セラは子供が欲しいのですか?」
「いいえ、そうではなく、妹が欲しいのです。
けれど、わたくしは子供がどうやって出来るのか知りません。お父様とお母様が苦しい思いをしてわたくしやアドを産んだとしたら……お願いしてはならないのかな、と……」
そこまで言ってじわり、と涙を滲ませるセラフィール。
ガーネットはそんなセラフィールを見ながらこそ、とアルティアに話しかけた。
「………アルティア皇妃様、このような場合わたくし達は何を言えばよいのでしょうか?」
「これは悩みますねえ、セラはセオくんに似て真面目だから無責任に"妹が欲しい"って言えないんでしょうね……とはいえ、説明するわけにはいかないし……」
「おばあ様?ばば様?」
ぐずぐずと泣き始めたセラフィールに呼ばれて2人は話すのをやめて引き攣った笑みを浮かべる。
「せ、セラ、赤ちゃんはコウノトリが運んでくるのです」
「コウノトリと人体にどのような関わりがあるのですか?」
「………」
流石のガーネットも黙ってしまった。
ガーネットさん、きっと私より関わってないからわからないのかもだけど、これがセラフィールという子なのです。基本的セオくんに似てるけどこういう所はアミィール似なのです。私もアミィールが小さい頃同じことを言って同じ言葉を返されました。
きっとどうしたら子供ができるのかを知ったら「破廉恥ですわ」と触る度に言われるでしょう。アミィールのように。
こういう時は………
そこまで考えたアルティアは笑顔を意識して言葉を紡いだ。
「セラ、子供はね_____」