11 ※5年も口説いています
「ターシャ様、ミルクを飲みましょうね~」
「うきゃ~!」
帰郷三日目。セラフィールはニコニコしながら、同じくニコニコしているターシャにミルクをあげている。
………わたくしの従姉妹のターシャ様。
アドやセフィロト様、じじ様が近づくと泣くのに、わたくしの時は笑顔です。それがとても嬉しい。
それだけではなく、とっても可愛いのです。ずっと一緒に居ちゃいます。
「セラ~、ジェンガやろうぜ~」
「嫌です。わたくしはターシャ様のお世話をしなければなりません。アドとセフィロト様だけでやっててくださいまし」
セラフィールはピシャリ、とアドラオテルの誘いを断る。そのセラフィールの態度にアドラオテルはむ、とした。
「赤ちゃんよりもジェンガだろ~、セラフィールは母ちゃんじゃないじゃん。母ちゃんごっこ楽しいわけ?」
「赤ちゃんではなくターシャ様です、それにわたくしはお母様ではなくお姉様なのです。
アドは乱暴なので近づかないで」
「そー言われると近づきたくなるなぁ、ほらほら、逃げてみろよ~」
「ッ、セフィロト様!アドを近づかせないでくださいまし!」
「はい!」
「ぬおっ」
セラフィールの言葉にセフィロトはアドラオテルの身体を後ろから抱き締める。アドラオテルは凄く嫌そうな顔をした。
「男に抱きつかれる趣味はないぞ!離れろ~!」
「セラちゃんの言うことは絶対だから許せアド」
「裏切り者め~!………あ」
バタバタと暴れていたアドラオテルは何かを閃いて、いやらしく笑った。
「……セフィ~、いいこと考えたんだけど、聞いてくれる?」
「この手を離せという話は聞かないぜ」
「そうじゃなくて~、セラ、セフィの妹が好きらしいし、こういうのはどう?……だから……そう………」
「?」
アドラオテルはこそこそとセフィロトに耳打ちする。それを聞いたセフィロトの顔が明るくなる。それを見たセラフィールは嫌な予感がした。
「ターシャ様、逃げましょう」
「あぶ?」
「セラちゃん!俺と結婚すればターシャは君の妹になるぞ!」
「…………はい?」
セラフィールは素っ頓狂な声を出した。アドラオテルはセフィロトを援護するようにセラフィールに言う。
「それだけじゃないぞ、セフィと結婚したらもれなく自分の子供もできるんだぞ!これは嬉しんじゃないの~?」
「……………」
「ぶー?」
ターシャに顔を撫でられながらセラフィールは呆れる。
…………セフィロト様は昔から顔を合わせる度に求愛してくるのです。セフィロト様は面白く、楽しいですけど……わたくしはまだその気はありません。
ですが……………
ちら、とターシャ様を見る。ターシャ様は笑顔です。可愛いです。………ターシャ様を妹に、したいです。けれども、そのような基準で婚約を結ぶのはどうなのでしょうか…………?
セラフィールはターシャを抱えながら悩み始める。男子達はそんなセラフィールに詰め寄った。
* * *
「………………」
その様子を見ていたセオドアは厳しい顔をしていた。その横でにやにやと笑うセフィアが口を開く。
「ほらほら、セラが悩み始めたぞ?これは結婚__「させません」……まだ結婚しか言ってないじゃないか」
「そんなの全部聞きません。ダメです。セラは結婚させません」
セオドアの意思は固い。
当たり前だ。いくら家族とはいえ俺の娘を嫁がせるなんて嫌だ。そもそもいとこ同士で結婚なんて出来ない……というのは前世の話で、実はユートピアの貴族にはわりとある話だ。
とはいえ、絶対嫌だが。
「セラは私の娘です。ずっと私の傍にいると決まっているのです」
「セラを独り身にさせるつもりか?可哀想だなあ」
「独り身でも私がいます。なので絶対結婚させませんよ」
セオドアはふん、と鼻を鳴らし、セフィアはやれやれ、と呆れる。
「セラちゃんとロトが結婚したらその子は絶対可愛いだろう………嗚呼、曾孫を見るまで生きなければ………」
そんな2人の前でセシルは終始鼻血を垂らしているのだった。