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08 変わらない物 #とは

 





 「……それは人によって違う物だと思われます。私がいい、と思ってもセオドア坊ちゃんが嫌だ、と感じてしまうことはある。


 答えなんてありません」




 「そう、ですよね…………」



 「ただ」



 「………?」




 レオナルドは靴を鳴らして俺に近づく。そして、目の前というところで膝をついて視線を合わせてくれた。若干皺の刻まれた顔は、とても真剣だ。



 「変わってしまって悲しい、と感じてしまうのは悪いことではありません。


 しかし、視野を広げてみてください。………きっと、変わっていないものも、ありますよ」



 「え………」



 レオナルドはそれだけ言って静かに部屋を出ていった。視野を広げる………か。確かに俺の視野は狭くなっているのかもしれない。



 「変わらない物、ってなんだろう………」



 そんなことをぼんやり思っていると、アミィール達が戻ってきた。




 * * *




 「うぅん………」



 「どうしましょう………」



 帰郷2日目、セオドア夫婦は悩んでいた。

 理由は___この帰郷で何処に行こうか迷っているからだ。



 無理に何処かに行く必要はもちろん無い。けれど、折角の休みを有意義に過ごしたい。



 ………家の探索をしてもいいけど、家に居たくないのだ。レオナルドの言葉の意味も未だにわからないし、ただモヤモヤしてる。



 だからといって街を歩く気にはなれなかった。……きっと、また何か変わっている。それを感じるのが怖い。



 「アミィは何処か行きたいところはあるかい?」



 「わたくしはセオ様と子供達と一緒なら何処でもいいのですけれど、……これでは答えになってませんね」



 「そんなこと、ないよ」




 セオドアはちく、と胸が傷んだ。

 ……なんだか、実家に帰ってきてからアミィールと距離がある気がする。ギグシャクしてる、というか………最低だな、俺は。


 きっとアミィは俺のことを考えてくれている。そして俺はこのとおり不甲斐なく悩んでいる。楽しもう、笑顔をと思っても、………暗い気持ちが心に影を落とす。




 それもあって外に出たいのだが……この通り、何処に行くのか悩んでいる。




 折角の帰郷なのに、な………




 そんな暗い雰囲気を切り裂いたのは____子供達だった。




 「父ちゃん!母ちゃん!」



 「お父様、お母様!」



 「?」



 「セラ?アド?」



 アドラオテル、セラフィールの声を聞いて顔を上げると___2人は俺達を見ていた。いけない、笑顔を…………



 「2人と___「わたくし達の行きたいところに連れてってください!」………え?」



 セラフィールはそう言ってフンフンと鼻息を荒くしている。呆然としているセオドアとアミィールを他所に、アドラオテルが言う。




 「俺達!父ちゃんと母ちゃんの馴れ初めの場所に行きたいぞ!」



 「な、なれそめ………?」



 「はいっ!お父様とお母様の出会った場所に!行きたいのです!」



 「このとおーーーりっ!」



 2人はそう言って手を合わせて頼み込んできた。急にどうしたんだ………?



 「セラ、アド、どういうことだい?」



 「そ、それはその、おおお、お父様とお母様がどのように出会ったのかに興味があるからではありません!」



 「………」



 「………」




 ………セラフィールは嘘をつくのがとてつもなく下手だ。つまり、俺達の出会った経緯を知りたいと言うことだろう。



 なんでそう思うのかは知らないが、………国立ヴァリアース学園に連れていくのは………学校だし許可とか必要だろうし………




 そう思ったセオドアはしゃがんで2人の目線に合わせる。




 「それは無理だよ。あそこは学校___「行きましょうセオドア様」………!?レイ!?」




 説得の言葉を遮られた。それは聞きなれた声で………見ると、思った通り部屋の扉の前に立っていた。セオドアは絵に書いたように戸惑った。




 「な、なんで此処にお前が……!?」



 「アルティア皇妃様のご配慮で参りましてございます。セオドア様。


 それより、久しぶりに母校に行くのもいいでしょう。


 アミィール様、どうでしょうか?」



 「わ、わたくしは構いませんが………セオ様は……?」



 アミィールは戸惑いつつ俺を見る。俺は………思い出の場所が変わっているのが怖くて、言葉に詰まる。



 そんなセオドアを見て、レイは溜息をつきながらセオドアに近づいて、小さな声で言う。



 「………そんな世界の終わりみたいな顔するくらいなら初心に帰ってこい。セオドア」



 「…………」



 突然現れたくせにすぐ人の心を見抜くからたまったもんじゃない。相変わらず………嫌な執事で友だ。




 セオドアは頷くことしか出来なかった。


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