03 まるで浦島太郎の気分
____ヴァリアース大国、オーファン公爵家。
オーファン家はファーマメント王国の王族『大天使』オーファン一族の末裔であるのだが、9000年前『龍神』の対抗戦力として天下ったのだ。
それは2年前に知った事実で、それを知ったオーファン家の人間は家中の書物をくまなく漁り、龍神の力は凄まじく7752年前に敗れたという書物を見つけた。それを記したのが生き残った子供___所謂先祖で、その書物によると、行き倒れしていた所をヴァリアース大国の王族に救われたのだという。
先祖は相当優秀だったらしく、宰相であり騎士団長も務め………そこから、歴史を隠し、ヴァリアース大国に忠誠を誓って………現在まで、由緒正しい公爵家としての地位に居続けている。
それ故に俺が産まれた時よりも前からずっと城ほどとは言わないが、それなりの豪邸で生きてきたのだが…………
「………はい?」
「まあ………」
「おお~!」
「おっき~!」
目の前には___俺の記憶よりも一回り、二回り大きい我が実家。庭がとても広く子供が遊ぶ遊具があり、小さな城のような風貌。一年前来た時よりも立派になってて目眩がした。
「な、何事だこれは………?」
「セオ様、大丈夫ですか?」
「アミィ、本当にここは私の実家か……?」
「ええ、そのはずなのですが………」
「……………」
アミィールが転移を間違えるはずがない。とはいえ、こんな豪邸___「アドちゅわぁ~ん、セラちゅわ~ん!」……………
その豪邸から大きな裏声が聞こえた。見ると___群青色の髪をオールバック、緑の瞳を輝かせ、鼻の下にちょび髭を生やした我が父、セシル・ライド・オーファンが走ってきていた。後ろからは従者であり俺の執事のレイの父上・レオナルドが「旦那様!走らないでください!」といっている。
そんなのお構い無しに広い庭を走って子供達目掛けて突進してるのだ。それを見た子供達は満面の笑みを浮かべる。
「じーじ!」
「じじ様!」
「アドちゃん、セラちゃん!」
とうとう来てしまったセシルは俺達を放って2人をひし、と抱き締めた。映画の感動シーンさながら大袈裟に。これだけでもう恥ずかしい。
アミィールは顔を赤らめるセオドアにくす、と笑みを浮かべてから綺麗にお辞儀する。
「お父様、お久しぶりでございます。お手紙を下さりありがとうございます」
「アミィール様、この度は我が家に御足労頂きありがとうございまちゅ……ごほん、ありがとうございます」
「父上………お願いですから、それ以上の醜態を晒さないでください」
「セオ!それは聞かなかった事にするんだ!それよりお前は手紙を出す頻度が少ないぞ!会うのに1年かかるとは何事だ!私はアドちゃんとセラちゃんに会いたくて毎日枕を濡らしてたんだぞ!」
「…………」
セオドアは呆れる。
この父の事だ、本当に枕を濡らしていたのだろう。想像が容易に出来る。
そんなセオドアに気づいているレオナルドはレイによく似た顔を顰めてセシルに言う。
「旦那様、まずは家に通すべきでしょう。セラフィール様、アドラオテル様、アミィール様、セオドア様が風邪を召されてしまいます」
「子供達との対面に場所など関係ない!」
「関係ないんだぞー!」
「じじ様温かいので大丈夫でございま……っくしゅ」
セラフィールが小さなくしゃみをした。それだけでセシルは顔を真っ青にする。
「セラちゃんがくしゃみ………レオ!今すぐ医者を呼べ!こうしては居られない……!2人とも!家の中に行くぞッ!」
「わあっ」
「きゃー!」
それだけ言ってセシルは子供たちを大事そうに抱きかかえて屋敷に走っていった。