02 帰郷イベント!
そんなことを知らないアミィールは上目遣いでセオドアに詰め寄る。
「セオ様………わたくしに、見せてくださいませんか………?」
「~ッ」
そんな可愛い顔で言われたら見せない訳にはいかないじゃないか………!25歳なのに!結婚してもう10年近いのに!
「う、その、………あまり、気にしないで読んでくれ」
セオドアはおずおずと手紙をアミィールに差し出す。アミィールはそれを受け取ると手紙を読んだ。
「まあ…………お父様がこんなにも子供達に会いたがっていらっしゃったのですね………気づくことが遅れてしまい、申し訳ございません」
「い、いいんだよ、これは父上が孫に会いたいってだけだから、そのうち落ち着くよ。気にしないで」
「いいえ。お父様はこの子達の祖父です。わたくし達の子供達をここまで愛して下さっているのに、それを無下にするのはなりませんわ。
わたくし、皇帝に直談判して休みを3ヶ月取ります。………行きましょう、ヴァリアース大国に」
アミィールはふわり、と笑う。
………本当にこの人は、優しい。出会った時からずっとそうだけれど他人のことを思いやれるとても素晴らしい御方なのだ。自分の仕事が忙しいのに、こうして俺の事や、俺の家族のことを考えてくれる。
愛おしいな………
セオドアはアミィールを抱き寄せる。アミィールはそれを素直に受け、セオドアを抱き締め返しながら、子供達に言う。
「アド、セラ。近いうちに、パパのお家に行きますよ」
「本当か、母ちゃん!?」
「本当!?」
子供達はそれを聞くなり目を輝かせた。アミィールは小さく笑って頷く。
「ええ。本当ですよ」
「わーい!」
「わーい!」
「じぇんが、持ってこーぜ!セラ!」
「うんっ!わたくし、お菓子を持っていきます!」
子供達はアミィールの言葉にきゃいきゃいと盛り上がる。セオドアはそれを見て自然と笑みを零した。
………俺も行けるように頑張って執務を調整しよう。
そう思った。
* * *
10日後
「アミィ、セオ、セラ、アド。
龍化及び治癒血を使うな。
目立つことは避けろ。
街に行く時は変装を忘れるな。
セシル達を困らせるようなことは絶対するな。
それから………」
俺達はラフェエル皇帝様恒例の注意事項を聞いている。なんとか時間を取れた俺達はこれからヴァリアース大国に行くのだ。………とはいえ、与えられたのは4日だけ。つまり馬車ではなく転移魔法で行くこととなった。
そりゃあ、1ヶ月かけて馬車の旅をしたかったけれど、こればかりは仕方がない。むしろ急に「実家に帰りたい」と言ったのに快く承諾してくれただけでもありがたいのだ。
しかし、そんな感謝もなくアミィールとアドラオテルは不機嫌そうな顔をしてる。
「相変わらず話が長いですわ。進歩しないですねお父様は」
「俺は早く行きたいんだッ!」
「あ、アミィ、アド…………」
「…………」
「まーまー、ラフェーは怒んないの~」
不愉快極まりないと言わんばかりに顔を顰めるラフェエル皇帝様をアルティア皇妃様は優しく撫でてから次は家族全員を撫でた。
「楽しんできなさいよ!里帰り!私もラフェーも後から暇みて行くからね!」
「来なくて結構です」
「はいはい行きますね~。それよりちゃっちゃと行っちゃいなさい。ラフェーが怒り出す前に」
「はい。では行ってきます」
「行ってくるぜー!」
「行ってまいります!」
「行ってきます」
一人一人行ってきます、を言って全員アミィールにしがみつく。すると、その場からセオドア一家は消えたのだった。