01 実家からの手紙
この話は短編にしては少し長いです。
「セラ!次はお前の番だ!」
「分かっています、話しかけないで」
「ふふ、上手ですね」
「そうだな。アド、揺らしちゃダメだよ」
ある日の夜。セオドア家族は全員でジェンガをしていた。勿論、この世界にそのような物はない。
前世の知識を持つ異世界転生者であるセオドアが作ったものだ。
………やっぱり、子供が大きくなるのはいいよな。こうして家族みんなで遊んだりできる。そりゃ、小さい頃から見てるだけでも幸せだったけど、楽しさが増える、というか……
朝と夜しか家族全員集まれないから、こういう時間にこうして全員で遊べるのは楽しいな…………ん?
そんなことを思っていると、コンコン、と音がした。
見ると____オーファン家の家紋が胸についた白い鳩。………あれは、『大天使』の血筋を持つオーファン家特有の伝達魔法だ。
それに気づいたのは俺だけではなく、アドラオテルとセラフィールが飛び上がるように立ち上がった。
「じーのお手紙だッ!」
「じじ様の!お手紙!お父様、取ってくださいまし!」
「う、うん…………」
セオドアは顔を引き攣らせながら立ち上がる。
……じー、じじ様というのは俺の父上の事だ。俺は婿に入ったけど、こうして頻繁に連絡を取っている。子供達は嬉しそうだが、少しだけ気が重い。
セオドアは窓を開けると鳩はぽん!と音を立てて手紙に変わった。それを持って家族の元へ戻る。
「早く!早く開けて!」
「早くー!」
「うん、早く開けようね」
セオドアはペーパーナイフで封筒を開け、4枚の手紙を子供達に渡す。2人は嬉嬉としてそれを受け取り話し始める。
「セフィが剣の大会で1位だって!さっすが俺の心の友だな!セラの手紙は?なんて書いてある?」
「………せ、セフィロト様のよりもばーば様のお手紙見ましょ?ばーば様、美味しいお野菜を送って下さるそうよ!」
「げぇ、お野菜いらない………それよりも………」
子供達は嬉嬉として手紙を見てる。俺はそれを横目に手元に残った1枚を開いた。
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セオへ
お前のことだろうからきっと元気に過ごしているのだろう。私は心配していない。固い挨拶はやめて本題にはいる。
早くセラフィールちゃんとアドラオテルちゃんを連れて帰ってきてくれ。もう1年も会ってない。このままでは父親が心不全を起こすぞ。老い先短い父親に孫の顔を見せておくれ。頼む。本当に頼む。私が死んでもいいのか?孫の顔を見れなくて過呼吸を起こしている。だから早急に会わせてくれ。孫孫孫孫孫孫………………
帰ってこい!
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「………………」
セオドアはそ、と手紙を閉じた。
………父上は重度の孫馬鹿と化している。その気持ちは勿論わかる。俺とアミィールの子供達は天使のように可愛く、龍のようにかっこいい。そんな孫を持った日には俺もこうなるのだろう。
だがしかし、この涙でところどころ滲んだ手紙を週に4回送られてくると疲れるのである。
帰りたくないわけではないけど、執務も教育もある。アミィールには仕事だってある。………もう25歳なのだ。我儘は言えない。
「セオ様?どうなさいました?」
そんなことを考えていると妻であるアミィールが心配そうに顔を覗き込んできた。………まずいまずい、顔に出さないようにしなくては。
「う、ううん。なんでもないよ」
「…………セオ様、そのお手紙を見せてくださいまし」
「う…………そ、それは………」
セオドアは下を向く。こんなの見せたらアミィールは行くと言ってくれるだろう。けど、行くために沢山執務を熟すだろう。それを考えると………見せるのに躊躇した。