プロローグ+01 緊急会議
久しぶりの投稿です。
楽しんでいただければ幸いです。
"軍事国家"・サクリファイス大帝国。
そう呼ばれるこの国はこの世界___『ユートピア』で1番大きな国である。
軍事国家と呼ばれているが、実際は戦争を起こす国ではなく、諸国の内乱や犯罪、諍いなどを仲介、あるいは鎮圧をする国で、各国には諜報員が潜んでいるとまことしやかに囁かれている。
これだけ聞けば暴力的な国に思われるだろうがそうではなく、国民達は活発で優秀な人間が多く、平和な国だ。
また、率先して各国との交流を図り、国を豊かにしつつ国民達にも教養を身につけ、生活水準が高い国でもある。
その国を治める皇族は人数こそ少ないが世界を牽引する人材揃いである。
皇帝は全ての分野に精通し、世界を文字通り統べている。
皇妃は『龍神の最後の末裔』であり、最強生物として世界を守っている。
皇女は次期皇帝として武術、勉学、政治などの面で名を馳せている。
その皇配は娯楽を中心に多岐に渡る分野で世界に貢献している。
それ故にユートピアで彼らを知らない者は殆どおらず、『最上の一族』と呼ばれているのだ。
…………これは、そんな『最上の一族』に生まれた双子を中心とした家族の何処にでもある日常を記した赤裸々記録である____。
* * *
寝室にて。
「いいか?これはきんきゅーかいぎだ」
群青色の短髪、紅と黄金色の瞳を持つ狼のように凛々しい美少年は真剣に言った。
「う、うん」
紅銀のウェーブのかかった黄金色と緑色の瞳を持つ美少女は頷いた。
それを見てから少年は重い雰囲気の中____口を開いた。
「父ちゃんの誕生日…………なにをプレゼントする?」
「うう………悩むよう………」
美少年___アドラオテル・リヴ・レドルド・サクリファイスの言葉に美少女___セラフィール・リヴ・レドルド・サクリファイスは頭を抱えた。
2人はサクリファイス大帝国皇族『最上の一族』で5歳の双子である。現在、大好きな父親の誕生日プレゼントに頭を抱えていた。
セラフィールは頭を抱えながら続ける。
「お父様、何が喜ぶかな?お花かな?」
「安っぽい~」
「じゃあお父様の絵!」
「子供っぽい~」
「うーんと……ピアノ!」
「部屋にあるじゃん」
「ちょっとアド!貴方も何か考えなさいよ!」
セラフィールはぎゃん、と吠える。文句ばっかり言うなら一緒に考えて欲しいのに、この生意気な弟はひとつも案を出してくれないのだ。
「え~それはセラの仕事だろ~?お姉ちゃ~ん」
「言い出したのはアドじゃない!都合のいい時だけ弟にならないでよ!」
「怒ってるとけっとーちあがるぞ?」
「………ッ」
血糖値なんてどこで覚えてくるのかしらこの弟は…………でも、本当にどうしよう。
お父様の誕生日は秋の月の35日だ。今日は30日、あと5日しかない。
………お父様はいつもわたくし達に色んなものをくれる。だから、お礼をしたいのだ。アドラオテルだってこう巫山戯ているけれど、本当はあげたい………はずだよね?
セラフィールはちらり、とアドラオテルを見る。アドラオテルは鼻をほじっている。完全に興味をなくしてる………ううん、これでいて何か考えているはずなんだわ。そう信じよう………
「アドー、セラー」
「!」
不意に、声がした。
見るとお父様の部屋に繋がる通路からお父様___群青色の短髪、緑色の瞳のセオドア・リヴ・ライド・サクリファイスが居た。