表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/5

現実逃避

 

 番組を聴きながら爪を切っていた時、そのメッセージは読まれた。

 DJさんはまずメッセージを読み上げて、こう言った。


「すごい親孝行ですね!修行頑張ってください!いつかラーメン屋を引き継いだ時は食べに行きますね!」


 俺は背中を押された気分で嬉しかった。

 本当は親孝行なんてやってなくて、頑張ってもいなかったが、1人の人間として見てもらえてることが、なにより嬉しかった。


 だが、続けて読まれたメッセージを聴いて、俺は罪悪感でいっぱいになった。


『DJさんこんばんは。仕事トークをしたいのは山々なんですが、僕はプー太郎です。不登校のまま中学を卒業して、そのまま進学せずに引きこもっています。テーマについて話すネタがないのに送ってすいません。』


「えーとですね。まず正直なメッセージありがとうございます。これはすごく勇気がいることです。人生という物語は、正直な気持ちと向き合い、正直な言葉で話すことで前に進んで行くと私は思います。あなたが送ったこのメッセージは、あなたを良い方向へ導いて行くと思います。メッセージと言うのは10人10色でいいんですよ。次は、いつでも良いのであなたはこれから何をしたいのか、正直なメッセージを送ってください。楽しみにしてますよ。」


 俺は嘘をついてメッセージを送ったことを後悔した。


 嘘のメッセージで認めて貰っても意味はないよな…


 俺が本当に掛けてもらいたかった言葉はこれなのかもしれない。プライドなのか現実逃避なのか、どっちにしろ俺は情けないなと思った。多分メッセージ送ったこの子は、俺より年下だ。その子が正直に送ったのに俺は…


 それにしても良いことを聞いたと思った。


 正直に話せば前に進む…か…


 俺の人生はずっと停滞期だ。半信半疑だが、これがもし前に進むなら、その少しの希望に俺は賭けてみようと思った。


 ラジオに送る嘘のメッセージが、現実逃避なら、正直な気持ちを書いたメッセージは現実だ。


 現実逃避を続けてきた俺は、ラジオを使って現実と向き合おう、そう誓った。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ