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事故物件クリーナー7
翌日、バイト先のコンビニにて。
「小林君、棚の雑誌新刊とさしかえてきて」
「了解っす」
ビニール紐で括られた雑誌を携えて窓に面した陳列棚へ赴く。
雑誌のバックナンバーを回収し最新号と差し替えながらも、頭の中は昨日のハグでいっぱいだった。
ユウさんは俺が好きなのか?
行かないでと伝えたかった?
あるいは慰めようとして?
上の空で手を動かしていたせいか、まとめて持ち上げた拍子に数冊なだれる。
「まずっ」
しゃがんで拾い上げるや、偶然開かれた週刊誌の見出しに引き付けられる。
見開きのページでは、『あの事件現場は今?』という特集が組まれていた。
俺が衝撃を受けたのは、そのページに掲載されていたのが今住んでるアパートの写真だったからだ。
雑誌にかぶりつき頭が真っ白になる。
記事の最後は『203号室には現在新しい住人が住んでいるらしい。彼、もしくは彼女は、自分の部屋で過去に起きた事件を知っているのだろうか』と余計なお世話で締めくくられていた。