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事故物件クリーナー4

名前を付けたのがきっかけでますますユウさんに親近感が湧く。

一体どんな顔をしてるのか。髪の長さはどれ位か。生前は何を好み、何をして暮らしていたのか。

年齢もとい享年さえも知らない相手をさん付けで呼ぶのは、なんとなくそっちのほうがしっくりきたからだ。

ユウさんが引き起こす霊障からは現在の住人を追い出そうとする悪意を感じない。

どちらかというと存在に気付いてほしくて、人寂しさから構ってほしがっているように見える。



「ユウさんはさー、後から転がり込んだ居候うざくねーの」

床に延べた布団に寝転がり、戯れに聞いてみた。

「俺も一応男だし。男と一緒って色々と……嫌じゃね?ユウさんが気にしねーなら別にいいんだけどさ、俺も気にしねーし。色々フォローしてもらってめっちゃ助かる、たまーに自炊する時とか神ったタイミングで調味料スライドしてくれっからマジ感謝。ガスの元栓閉め忘れて出ちまった時なんか、電気をパッパッてやって知らせてくれたろ。モールス信号みてえで面白かった」

俺も独り暮らしが長い。

実家には数年帰ってねえし、バイト先でも突っこんだ付き合いはないときて、コミュニケーションに飢えてたのかもしれない。

その夜は特に冷え込んだ。

翌朝布団から這い出すと、凍えた空気が肌を刺して一気に目が冴える。

「さぶっ……あれ」

ふと横を見る。

屋内と屋外の温度差で白く曇ったベランダドアの嵌め込みガラスに、パンダの顔が描かれていた。

ユウさんの悪戯にほっこりして、デフォルメパンダの隣にひと回り小さい子パンダを描き足す。調子に乗って笹の葉もおまけ。

「上手いね。イラストで食ってた人?」

ユウさん作のパンダは俺とは比較にならない出来で、単純な線画でよく特徴を掴んでいた。

愛嬌ある丸顔とタレ目が微笑ましい。隅っこに『YU』と丸っこいサインが入る。

「あはは……やっぱむずいな、俺的にゃ頑張ったんだけど。パンダだか大福だかよくわかんねーや」

情けなく苦笑い、照れも相まってのひらでかき消しかけた時、子パンダをでかでか花丸が囲む。

「……花丸なんてもらうの小学校ぶり」

大袈裟に褒められて面映ゆい。

再びガラスの余白に点が生じ、ひとりでに線が伸びて輪郭をかたどる。

ユウさんが描いているのだ。

途中で力尽きたように線が途切れて歪み、少々輪郭が損なわれたものの、元々の画力の高さが十分補っている。

俺とユウさんは曇った窓ガラスに落書きをし、吐く息が白く溶ける朝のひとときを楽しんだ。

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