表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/16

三回表

 え~、藤井ラジオがお届けしております野球中継、三回表のタイガースの攻撃です。

 現在、二対零でドラゴンズのリード。

 果たして、タイガースは追い付くことができるのでしょうか?

 解説のヘファイストスさん。


「初回、二回と連打は出ていますから、もう一本ですよね。タイガースはこの回に得点しないと、苦しい展開になると思います」


 さあ、準備が整ってこの回の先頭バッターは一巡して、一番バッターの鉄器川華蘭選手が右の打席に入ります。

 マウンド上はドラゴンズの先発、佐藤選手。

 ピッチャー振り被って、第一球、投げました。

 ストライク、内角低めに決まりました。


「右バッターではあれは打てませんよ」(注1)


 まるで背中から向かって来る投球でしょう。

 第二球、投げた。

 全く同じコースですが、バッター体勢を開いてコンパクトにバットを振って行く。

 サード、桐下選手の頭上を越えて、打球はレフト前に落ちます。

 ノーアウトでランナーが出ました。


「見事なバッティングですね。普段の鉄鞭より軽いので扱い易いようですね」


 そして迎えるバッターは、マウンド上の佐藤選手の愛娘、由貴選手です。

 第一打席ではピッチャー返しでセンター前ヒットでした。いやが上にも期待が膨らみます。

 さあバッテリー、どのように投球を組み立てるでしょうか。

 右の打席の由貴選手が構えます。

 注目の第一球、外角低めに入ってストライク。


「前のバッターがインコース攻めでしたから、予想外だったようですね」


 第二球、投げた。

 バッター果敢にフルスイング!

 空振り、ストライク!

 ツーストライクと追い込まれました。

 しかし、何度見ても鋭い、素晴らしいスイングです。


「当たらなければ、どうと言うこともありません」(注2)


 第三球、内角低め一杯に、決まった。

 ストライク、三球三振。

 豪快なスイングもできず見逃し三振に倒れて、ワンアウト。

 親子対決の二回目は父親に軍配が上がりました。


「配球の妙ですね。外角二球続けてから、内角低めには対応が難しいでしょう」


 ワンアウト一塁で迎えるバッターはタイガースのキャプテン、井ノ元選手です。

 第一打席はファーストの山岡選手が反応すらできない鋭い当たりでした。

 左の打席に入ります。


「井ノ元選手は要注意ですよ」


 ピッチャー第一球、投げた。

 外角低め、沈みながら逃げて行く球に、井ノ元選手は空振り。


「あの球を打つのは難しいでしょうね」


 ワンストライクからの二球目、今度は内角高め一杯、ストライクの判定。

 たった二球でツーストライクに追い込みました。

 さあ、第三球、今度は内角低め、判定はボール。

 キャッチャーの森本選手が首を傾げます。これはバッターの井ノ元選手が助かりましたね。


「全く反応できてませんでしたね。際どいコース、バッテリーはストライクが欲しかったでしょう」


 ボールカウントはワンボール、ツーストライク、バッテリーが追い込んでいるのは変わりません。

 第四球、投げました。

 と、ランナースタート!

 更に打った、井ノ元選手の打球は走塁中の華蘭選手の足元を抜けて、ライト前に転がります。

 華蘭選手、二塁を蹴って三塁に向かう。

 ライトの小見選手は二塁手の武藤選手に返球しました。進塁を狙っていた井ノ元選手、一塁へ戻ります。


「まさにお見通しと言った風情ですね」


 ヒットエンドラン(注3)で、ワンアウト一塁、三塁。

 この場面で、四番のペンテシレイア選手を迎えます。

 ドラゴンズ、内野陣がマウンドに集まり、守備を確認しているようです。

 さてこの場面、何に警戒が必要でしょうか?


「ダブルスチール(注4)ですぅ」


 確かにそれは警戒が必要ですね。

 さあ、マウンド上の佐藤選手、大きく息を吐いて、構えます。

 対するペンテシレイア選手は左のバッターボックス、打つ気満々で構えております。

 セットアップポジションから初球、バントの構え。

 これはスクイズ(注5)だ!

 四番バッターにスクイズ、しかしバッテリーは読んでいた。

 大きく外され、ペンテシレイア選手は転倒。飛び出していた華蘭選手は三本間に挟まれました。

 タッチアウト。この間に井ノ元選手は二塁に進んで、ツーアウト二塁と場面が変わります。


「完全に読まれていましたね。今の場面はバッテリーを褒めるべきでしょう」


 ペンテシレイア選手が左のバッターボックスに戻り、プレイ再開です。三回表タイガースの攻撃はツーアウト、ランナー二塁。

 バッターボックスのペンテシレイア選手、ワンストライクからピッチャー第二球、投げた。

 これは引っ掛けて佐藤選手の前、華麗に捌いて一塁送球、アウト。

 スリーアウトです。


「見応えのある場面でしたね」

声の想定(ボイスイメージ)

・桐下  和哉  鈴木達央さん

・小見  敏夫  前野智昭さん

・尾藤  大輔  稲田徹さん

・佐藤  竜也  櫻井孝宏さん

・武藤   龍  玄田哲章さん

・今井  雄三  蒼井翔太さん

・紀井  多聞  森久保祥太郎さん

・モリモット   関智一さん

・山岡  次郎  下野紘さん

・聖女クリス   小林ゆうさん

・ジョアンヌ   河瀬茉希さん

・藤井  照美  伊藤かな恵さん

・藤井  羅二夫 うえだゆうじさん

・ヘファイストス 中尾隆聖さん

・鉄器川 華蘭  竹達彩奈さん

・佐藤  由貴  芹澤優さん

・井ノ元 喜久代 丹下桜さん

・ペンテシレイア 日笠陽子さん

・長野  恵梨香 原由実さん

・倉田  祐子  阿澄佳奈さん

・樋口  鞆絵  喜多村英梨さん

・尾藤  弥生  沼倉愛美さん

・鉄器川 香崙  悠木碧さん



注1 右バッターではあれは打てませんよ

 アンダースローのピッチャーが投球板のギリギリ端を使って投げると、右打選手の背中からホームベース上に球が出現するように見えるので、球の見極めが難しくなる。

 体勢を開いて待ち受けるのが定石だが、今度は外角低めに届かなくなる。


注2 当たらなければ、どうと言うこともありません

 どのような球も、バットに当たらなければ安打に繋がらない。

 元のセリフは『機動戦士ガンダム』のシャア・アズナブルが部下を叱咤激励する為に言い放った。

 その後、『機動戦士ガンダムUC』では、赤い彗星の再来と言われるフル・フロンタルがガンダムユニコーンの攻撃を避けつつ言い放つ。


注3 ヒットエンドラン

 鳥居みゆきの躁鬱ネタではない。

 野球に於いてのヒットエンドランは、投球が行われると同時に走者が進塁を試み、合わせて打者が安打を放つことで、打撃のみよりも進塁を多く行おうとする作戦である。

 この時、打者は弾道を叩きつけるようにして飛球による併殺を回避するよう努める。


注4 ダブルスチール

 走者が二人いる場合に行われる攪乱戦法。

 特に一塁と三塁に走者がいる場合、一塁走者に盗塁させて送球させ、その間に三塁走者が本塁に帰還するよう試みる。

 高度な技術として一塁走者は二塁への送球を見て一塁に帰塁すると見せ掛け、本塁送球を誘い、再び二塁に向けて進み、三塁走者も三塁に戻り、二塁、三塁にする事例もある。

 守備側は二塁への進塁を黙認し、失点を抑えるのが定石だが、二塁へ送球するフリをして三塁走者を油断させてタッチアウトを狙う駆け引きも存在する。


注5 スクイズ

 三塁走者を生還させる目的で行われるバントを総称してスクイズと呼ぶ。

 気が同点……、動転しないように気を付けたい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ