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二回裏

 ドラゴンズ一点リードで迎えた二回裏の攻撃は、五番の武藤選手が先頭バッターです。背番号は5。

 右のバッターボックスの武藤選手に対して、マウンド上、タイガースのペンテシレイア選手は左腕から投球を繰り出します。

 ピッチャー振り被って、初球はインコース、外れてボール。

 武藤選手、身動きせずに見送りました。


「球筋が完全に見えているようですね」


 武藤選手は生前は格闘技道場を開いていましたし、動体視力は良いと思って構わないでしょうか。

 ピッチャー第二球を投げた。

 低め外れてボール。カウントはツーボール、ストライクが入りません。

 ドラゴンズの選手は、ジックリとボールを見ていますね。


「ペンテシレイア選手、苛立ちが募っているのではありませんか?」


 マウンド上、やや苛立っているのか、表情が険しいペンテシレイア選手。

 ピッチャー振り被って、投げた。

 これは真ん中高め、甘い球。

 武藤選手、迷わず打ちに行きます、ジャストミート!(注1)

 打球は高く上がって、伸びる、伸びる!

 センター佐藤由貴選手が打球を追いますがフェンスに阻まれた。そのまま打球を見送ります。

 センターバックスクリーンに飛び込む、ホームラン!

 ドラゴンズ、貴重な追加点が入りました。


「素晴らしいバッティングですね」


 武藤選手、ダイヤモンド(注2)をゆっくりと回って、ホームイン。

 二対零、ダッグアウト前に並んだチームメイトとハイタッチを交わします。

 そして一塁側スタンドの味方観客に向けて野球ラブ(注3)をアピール。


「目の覚めるようなホームランでしたぁ」


 武藤選手のホームランで興奮醒めやらぬ状況の中、ドラゴンズは今井選手が左のバッターボックスに入ります。背番号は55。

 解説のヘファイストスさん、今井選手はどのような選手でしょうか?


「彼は有言実行ですが、無口ですからね」


 さてそれでは注目の第一打席です。

 マウンド上、ペンテシレイア選手は大きく振り被って、投げた。

 初球、低め一杯に決まってストライク。

 今井選手、余裕を持って見送ったように窺えます。


「ペンテシレイア選手のコントロールが良くなっているように見えますぅ」


 ピッチャー振り被って、投げた。

 外角低め一杯、判定はボール。

 僅かに外れたようです。カウント、ワンボール、ワンストライク。

 バッターボックスの今井選手、随分と落ち着いて見えます。

 さあ、ピッチャー振り被って、第三球、投げた。

 バッター打った。

 ピッチャー返し!

 これをペンテシレイア選手、捕った!


「捕ったどー」


 えー、不適切な発言があったことをお詫び申し上げます。

 秩父三銃士の同僚が倒れて、次は七番バッターの紀井選手が左のバッターボックスに向かいます。背番号は1です。

 解説のヘファイストスさん、紀井選手はどのような選手でしょうか?


「彼は何も言わなくてもこちらの言いたいことを理解している、本物の天才ですよ」


 これは高評価、それではそのバッティングにも注目です。

 二点リードのドラゴンズの攻撃は、今井選手がピッチャーライナーで倒れて、ワンアウト、ランナーはなし。

 マウンド上、タイガースのピッチャー、ペンテシレイア選手が大きく振り被って、初球、投げた。

 今井選手、積極的に打ちに行く!

 綺麗に弾き返して、ライト前ヒット。

 美しいバッティングフォームからの、見事なヒットでした。


「まさに天才ですね。バッティングフォームは彼を手本(注4)にして良いでしょう」


 さあそして、迎えるのは八番バッターの森本選手です。

 先程の守備では何やらバッターに話し掛けていました。その背番号19と体型から、往年の名選手を彷彿とさせます。

 右バッターボックスの森本選手、ランナーを帰して追加点を奪えるでしょうか?

 マウンド上、タイガースのピッチャーはペンテシレイア選手、セットアップポジションから、初球を投げます。

 ボール、内角へ森本選手の体に近いところ、当たるぐらいのコースでしたが、森本選手は更にホームベース寄りに立ちます。


「これはバッテリーが苦しいですね。今の内角を気にしてくれれば外角でカウントを稼げますが、これでは投げるコースがありません」


 さあ、第二球はどこへ投げるか。

 ペンテシレイア選手、投げた。

 外角低め、これを待っていたかのように森本選手が弾き返します。

 一、二塁間を抜けて、これまたライト前ヒット。

 ワンアウト、一塁、二塁。ドラゴンズの攻撃が止まりません。


「今のはバッターの作戦勝ちですね」


 ドラゴンズはラストバッター、山岡選手の登場です。


「紙にーさま、頑張ってー!」


 何度も言いますが、解説に私情を挟むのは控えて下さい。

 山岡選手は右のバッターボックス。背番号3。

 さあ、ランナーを帰すことができるでしょうか?

 ピッチャー、初球を投げた。

 これまたインコース、山岡選手が強引に引っ張った。

 サード、井ノ元キャプテンの真正面。

 5ー4ー3のダブルプレー!

 ドラゴンズ、チャンスが一転、併殺打に終わりました。

 二回裏のドラゴンズ、先頭バッターの武藤選手のホームランで一点を追加して、二対零。

 試合は三回、タイガースの攻撃に移ります。



 ドラゴンズのダッグアウト。

「いやー、惜しかったでござるお」

 キャッチャーとしてプロテクターを装着しながら、モリモットは快活に笑う。

「小手調べとしては、こんなものだろう」

 和哉も表情が緩んでいる。

「打順も一巡したし、本気で行くぞ」

「おう!」


 タイガースのダッグアウト。

「ピンチの後にチャンスありだよ」

 喜久代がメンバーの気持ちを盛り上げようと努める。何より気持ちで負けてしまっては勝てる試合も勝てなくなる。

「和くんたちは舞い上がっているようだし、女の怖さ(注5)を教えてあげましょう!」

「喜久姉さんに賛成や」

「やられっぱなしではいないぞ」

 祐子とペンテシレイアが気合を入れると、他のメンバーも表情が引き締まった。

「さあ、行きましょう」

声の想定(ボイスイメージ)

・桐下  和哉  鈴木達央さん

・小見  敏夫  前野智昭さん

・尾藤  大輔  稲田徹さん

・佐藤  竜也  櫻井孝宏さん

・武藤   龍  玄田哲章さん

・今井  雄三  蒼井翔太さん

・紀井  多聞  森久保祥太郎さん

・モリモット   関智一さん

・山岡  次郎  下野紘さん

・聖女クリス   小林ゆうさん

・ジョアンヌ   河瀬茉希さん

・藤井  照美  伊藤かな恵さん

・藤井  羅二夫 うえだゆうじさん

・ヘファイストス 中尾隆聖さん

・鉄器川 華蘭  竹達彩奈さん

・佐藤  由貴  芹澤優さん

・井ノ元 喜久代 丹下桜さん

・ペンテシレイア 日笠陽子さん

・長野  恵梨香 原由実さん

・倉田  祐子  阿澄佳奈さん

・樋口  鞆絵  喜多村英梨さん

・尾藤  弥生  沼倉愛美さん

・鉄器川 香崙  悠木碧さん



注1 ジャストミート

 日本テレビのアナウンサーである福澤朗が一世風靡して、流行語にまでなった。

 元はプロレス実況で選手の技が炸裂した瞬間に絶叫していたセリフ。


注2 ダイヤモンド

 野球場の塁の並べ方が菱形をしているので、トランプのダイヤに擬して、ダイヤモンドと呼ばれる。


注3 野球ラブ

 人差し指と小指を立てた、いわゆる狐手と呼ばれる形を両手で作り、胸元から左右に広げるポーズ。

 プロレスラーの武藤敬司選手がリングパフォーマンスとして行っている。


注4 バッティングフォームは彼を手本

 落合博満さんが褒めたのは広島東洋カープの前田智徳選手である。

 学生時代から打撃に関して求道者のような態度だった前田選手は、その打撃姿勢にも独自の美学を持っていた。


注5 女の怖さ

 世の中、知らなくても良い事柄があるが、その筆頭と目される。

 ネット上に掲載されている内容は他愛ないものばかりだが、その変わり身に怖さを感じる人が多いようである。

 嘉門達夫さんの替え歌にある「別れたら次の人」という内容の歌が端的である。

 世の中、怖い女性ばかりではないので、男性諸兄は誤解しないで頂きたい。

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