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二回表

 タイガース対ドラゴンズの決戦は一対零、ドラゴンズのリードで二回の表、タイガースの攻撃です。

 この回は六番バッター、倉田選手からの攻撃です。

 倉田選手は先程、一回裏の守備ではあわや長打となる尾藤選手の当たりを見事にキャッチして、最少失点に抑える貢献をしました。

 果たして攻撃でもチームに貢献できるでしょうか?

 マウンド上はドラゴンズの先発、佐藤選手が投げます。

 倉田選手は左のバッターボックス。背番号9。

 その初球、外角高めに決まって、ストライク。


「何か、キャッチャーの森本選手が呟いていますよ?」(注1)


 顔色が変わった倉田選手、キャッチャーの森本選手を一睨みしてから、ピッチャーに向き直りました。

 ピッチャー振り被って二球目、甘く入った。

 倉田選手、迷わずバットを振る!

 鋭い打球だ。

 三遊間を抜いて、レフト前ヒット。

 先頭バッターが出塁、先発の佐藤選手はこの回もランナーを背負ってのピッチングになります。

 タイガース、同点のランナーが出ました。

 続いてのバッターは樋口選手、右のバッターボックスに入ります。背番号は2。

 また何やら森本選手が呟いているようですが、解説のヘファイストスさん、これは何でしょうね?


「口説いているのではないと思いますけど」


 さあ、佐藤選手が投げます。

 と、一塁へ牽制球。(注2)


「倉田選手は先程の守備でその俊足を披露していましたからね、バッテリーが警戒するのも当然でしょう」


「一塁上、夫婦の時間を大切にして欲しいですぅ」


 ええと、解説に私情を挟むのは控えて下さい。

 さて、マウンド上の佐藤選手は一塁ランナーが気になって仕方ない様子です。

 再び牽制球。夫婦のスキンシップが捗ります。


「気にし過ぎですね」


 これだけ気にしていてはバッターに集中できないでしょう。

 さあセットアップポジションからバッターに対して、投げた。

 また甘く入ったか、樋口選手が引っ張りレフト前ヒット。

 一回に続いての連打、佐藤選手は大丈夫か?


「ちょっと心配ですね」


 下位打線に連打を浴びた佐藤選手、次に迎えるのは尾藤弥生選手です。背番号3。

 弥生選手は左のバッターボックスですが、右目の眼帯は外さないのでしょうか?


「右のアンダースローなら、左バッターの対角からボールが来ますので、左目でボールは見えると思いますぅ」


 ノーアウト一塁、二塁。同点のチャンスを迎えたタイガースの攻撃です。

 ピッチャー、初球を投げた。

 まずは外角外れてボール。

 バッテリー、慎重に入りました。


「様子見でしょうね。二塁ランナーの倉田選手の動きを随分と警戒していますよ」


「祐子ちゃんは野球部でマネージャーをしていましたから、駆け引きにも通じているはずですぅ」


 なるほど、ですからバッテリーが警戒しているのですね。

 第二球は外角低めに沈む球。流石にバットが空を切りました。

 カウント、ワンボール、ワンストライク。


「バッターは追い込まれる前に勝負したいですね」


 さあバッテリー、次はどこへ投げるでしょうか?

 第三球、投げた。

 これは胸元の厳しいコースに思わず手を出した弥生選手!

 打球はマウンドの横を転がり抜けて、父親の尾藤大輔選手がキャッチ。

 6ー4ー3、ダブルプレー!

 この間に、ランナーの倉田選手が三塁に進んでいます。

 なおも同点のチャンスですが、いやー今のは勿体ないですね。


「見逃せばボールだったと思いますよ」


 さて打順が一巡して一番バッターの……、失礼、ラストバッターの鉄器川香崙選手、双子の妹の方ですね。背番号が4でした。


「ここは何としてでもランナーを帰したい場面ですね」


 香崙選手、右のバッターボックスに入りました。

 マウンド上、佐藤選手はセットアップポジションから、まず初球、投げた。

 真ん中低めストライク!

 香崙選手、見送りましたね。


「今のボールでは、打っても内野ゴロでしょう」


 ええ、ピッチャー二球目、投げた。

 今度は内角高め、打ちに行こうとした香崙選手、思わず避けて空振り、ツーストライクと追い込まれました。

 ツーアウト三塁、何としてもランナーを帰したいタイガースですが、バッターボックスの鉄器川香崙選手、ノーボール、ツーストライクと追い込まれております。

 マウンド上の佐藤選手、第三球を投げた!

 香崙選手、踏み込んで外角狙いだが、ボールは内角に来ている。完全に裏を掻かれました。バッター苦しい姿勢で何とかバットに当てようと食らい付く。

 しかし、内角低めへ落ちる変化球にバットは空を切った。

 空振り三振!

 何と、ノーアウト一塁、二塁のチャンスが、終わって見れば無得点。

 タイガースの攻撃が終わりました。


「何とも淡白な攻撃でしたね」


 初回に続いて連打を浴びせましたが、結局はタイガース無得点。これはマウンドの佐藤選手を褒める展開でしょうか?


「それよりも、タイガースの攻め方が淡白ですよね。次からは二打席目ですし、これからに期待したいと思います」

声の想定(ボイスイメージ)

・桐下  和哉  鈴木達央さん

・小見  敏夫  前野智昭さん

・尾藤  大輔  稲田徹さん

・佐藤  竜也  櫻井孝宏さん

・武藤   龍  玄田哲章さん

・今井  雄三  蒼井翔太さん

・紀井  多聞  森久保祥太郎さん

・モリモット   関智一さん

・山岡  次郎  下野紘さん

・聖女クリス   小林ゆうさん

・ジョアンヌ   河瀬茉希さん

・藤井  照美  伊藤かな恵さん

・藤井  羅二夫 うえだゆうじさん

・ヘファイストス 中尾隆聖さん

・鉄器川 華蘭  竹達彩奈さん

・佐藤  由貴  芹澤優さん

・井ノ元 喜久代 丹下桜さん

・ペンテシレイア 日笠陽子さん

・長野  恵梨香 原由実さん

・倉田  祐子  阿澄佳奈さん

・樋口  鞆絵  喜多村英梨さん

・尾藤  弥生  沼倉愛美さん

・鉄器川 香崙  悠木碧さん



注1 キャッチャーが呟く

 現役時代の野村克也選手がよくやった「ささやき戦術」である。

 当初は効果が薄かったが、対象選手たちが出入りする飲み屋で私生活の情報を集めて呟くようになると、ほとんどの選手が集中力を欠いて凡打で終わるようになる。

 しかし、大杉勝男選手からは「うるさい!」と怒鳴られた上にキャッチャーミットをバットで叩かれ、王貞治選手は集中力が凄くて全く聞く耳を持たなかったそう。

 長嶋茂雄選手に至っては「よく知ってるね」と気分をよくさせてしまったり、「打撃フォームがおかしいんじゃないの?」と動揺を誘おうとしたら、「ちょっと待って」とタイムを掛けられて素振りされ、直後に本塁打を打たれた上、ホームインした際に「教えてくれて、ありがとう」と感謝までされる。

 また昭和の安打製造機で、現在でも出塁率の記録保持者である張本勲選手に対しても野村選手はささやき戦術を実行した。

「ハリ、お前、態度はデカイけど、ナニは小っさいの~」

 その打席では顔を真っ赤にした張本選手は三振に倒れる。

 次の打席、再びささやき戦術を行った野村選手に対して、張本選手は空振りしたバットで野村選手の後頭部を叩いたとか。

 野球がまだ、おおらかな時代の話である。


注2 牽制球

 塁上に走者がいる時、盗塁を警戒して投手が投げる球。

 足元の投球板から足を離していないと反則を取られる。

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