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一回表

 お待たせしました。

 ブリュンヒルデ陣営タイガース対和哉率いるドラゴンズの決戦の模様を、実況担当はわたくし藤井羅二夫がお伝えします。

 解説はヘファイストスさんと、不肖の姉、藤井照美にてお送りします。

 それではここで両チームのメンバーを確認しましょう。


 ドラゴンズ

┏━┯━━━┯━━━━━━━┓

┃順│守 備│ 選 手 名 ┃

┠─┼───┼───────┨

┃1│三塁手│桐 下 和 哉┃

┠─┼───┼───────┨

┃2│右翼手│小 見 敏 夫┃

┠─┼───┼───────┨

┃3│遊撃手│尾 藤 大 輔┃

┠─┼───┼───────┨

┃4│投 手│佐 藤 竜 也┃

┠─┼───┼───────┨

┃5│二塁手│武 藤  龍 ┃

┠─┼───┼───────┨

┃6│中堅手│今 井 雄 三┃

┠─┼───┼───────┨

┃7│左翼手│紀 井 多 聞┃

┠─┼───┼───────┨

┃8│捕 手│森 本  浩 ┃

┠─┼───┼───────┨

┃9│一塁手│山 岡 次 郎┃

┗━┷━━━┷━━━━━━━┛


 タイガース

┏━┯━━━┯━━━━━━━┓

┃順│守 備│ 選 手 名 ┃

┠─┼───┼───────┨

┃1│遊撃手│鉄器川 華 蘭┃

┠─┼───┼───────┨

┃2│中堅手│佐 藤 由 貴┃

┠─┼───┼───────┨

┃3│三塁手│井ノ元 喜久代┃

┠─┼───┼───────┨

┃4│投 手│ペンテシレイア┃

┠─┼───┼───────┨

┃5│左翼手│長 野 恵梨香┃

┠─┼───┼───────┨

┃6│右翼手│倉 田 祐 子┃

┠─┼───┼───────┨

┃7│捕 手│樋 口 鞆 絵┃

┠─┼───┼───────┨

┃8│一塁手│尾 藤 弥 生┃

┠─┼───┼───────┨

┃9│二塁手│鉄器川 香 崙┃

┗━┷━━━┷━━━━━━━┛


 さあ、どうでしょうかヘファイストスさん、どちらが勝つとお考えでしょう?


「男性チームは生前に多少なりとも野球をしていたでしょうから、こちらに一日の長があると見て間違いないでしょう」


「紙にーさまが負けるはずがありません。それよりも、どうしてブレーブス(注1)じゃないんですか!」


 ええと、解説に私情を挟むのはお控え下さい。

 さて、来賓席からクリスさんがフィールドの佐藤選手にボールを投げ入れ、始球式(注2)が終わりました。

 いよいよプレイボールのようです。

 タイガースの一番バッターは鉄器川華蘭選手。今日は鉄の打棒を木のバットに持ち替えております。右のバッターボックス。背番号は6。


「プレイボール!」


 注目の一球目、ドラゴンズのピッチャー佐藤竜也選手、振り被って……、おおっと?


「アンダースロー(注3)、それもブレーブスの山田選手みたいですぅ!」


 背番号17(注4)は伊達じゃない。ど真ん中ストレート、バッター見送って、ストライク!


「いいですね。ストレートに伸びがありますよ」


 さあ、第二球、投げた。

 バッター打った!

 打球はレフト方向、やや力なく紀井選手の目の前に落ちて、レフト前ヒット。

 いきなりノーアウト、ランナー一塁。

 そして迎えるバッターは佐藤由貴選手、親子対決です。

 背番号8の由貴選手、右のバッターボックスに入りました。


「タイガースの女性陣は野球経験が浅いようですね」


 その根拠は、ヘファイストスさん?


「一塁ランナーの鉄器川選手のリードが小さいでしょう。立ち上がり、娘と対決するプレッシャーに加えて、ランナーが気を散らせるのが常道ですよ」


 さあピッチャー、セットアップポジションから、投げた。

 由貴選手、強気のフルスイング!

 空振り、ストライク。

 いやー、恐ろしく鋭いスイングでした。


「今のでピッチャーは、幾分か緊張が和らいだようですね」


 さあピッチャー、投げた。

 またまたフルスイング!

 ピッチャー返し、強烈な打球はセンター前に転がり、ノーアウト一塁、二塁。

 ここでタイガースのキャプテン、井ノ元選手の登場です。背番号5、タイガースはここまで守備位置通りの背番号です。


「喜久代姉様は、ソフトボールの経験者ですから、警戒が必要ですぅ」


 マウンド上の竜也選手を内野陣が囲んでおります。さあ、試合開始早々迎えたピンチ、どのように切り抜けるのでしょうか?

 井ノ元選手は左のバッターボックス。先制点のチャンスはタイガース。

 マウンド上はドラゴンズの佐藤竜也選手、ふうと大きく息を吐き出しました。

 注目の対決、ピッチャー投げた。

 初球狙い、井ノ元選手、打った。鋭い打球はファースト横を抜けた!

 山岡選手、全く動けず打球はライト、小見選手の前。

 二塁ランナー、華蘭選手、三塁を蹴って、ホームを狙う!


「積極的な進塁はいいですね」


 さあ、小見選手、ダッシュでボールを拾い、バックホーム。

 間に合うか?

 と、これはレーザービーム!(注5)

 素晴らしい返球です。キャッチャーの森本選手、余裕でランナーにタッチしてワンアウト。

 由貴選手は二塁止まり、ランナー一塁、二塁でアウトカウントが増えただけ。


「実に素晴らしい返球でしたね」


 しかし、ピンチに変わりはありません。次はタイガースの四番、ペンテシレイア選手です。エースナンバー1が背番号。


「彼女の選球眼と、バットコントロールは侮れませんよ」


 左のバッターボックス、ペンテシレイア選手に対して、ピッチャー投げた。

 これまた初球狙い、綺麗な流し打ちでレフト前ヒット!

 ワンアウト満塁です。


「こうなると、先程の本塁突入が悔やまれますね」


 確かに、四連打であれば、先制点が入っていてもおかしくありません。(注6)

 さあ次は五番バッター、左のバッターボックスに長野選手が入りました。背番号7。

 ピッチャー、投げた。

 またまた初球狙い。しかし打球は二塁手の正面、ボテボテのゴロ。武藤選手、軽やかにこれを拾い上げ、二塁のベースカバーには巨体の尾藤選手。

 4ー6ー3、ダブルプレー!

 お手本のような守備でピンチを切り抜けましたドラゴンズ。

 さあ、攻守交代です。

声の想定(ボイスイメージ)

・桐下  和哉  鈴木達央さん

・小見  敏夫  前野智昭さん

・尾藤  大輔  稲田徹さん

・佐藤  竜也  櫻井孝宏さん

・武藤   龍  玄田哲章さん

・今井  雄三  蒼井翔太さん

・紀井  多聞  森久保祥太郎さん

・モリモット   関智一さん

・山岡  次郎  下野紘さん

・聖女クリス   小林ゆうさん

・ジョアンヌ   河瀬茉希さん

・藤井  照美  伊藤かな恵さん

・藤井  羅二夫 うえだゆうじさん

・ヘファイストス 中尾隆聖さん

・鉄器川 華蘭  竹達彩奈さん

・佐藤  由貴  芹澤優さん

・井ノ元 喜久代 丹下桜さん

・ペンテシレイア 日笠陽子さん

・長野  恵梨香 原由実さん

・倉田  祐子  阿澄佳奈さん

・樋口  鞆絵  喜多村英梨さん

・尾藤  弥生  沼倉愛美さん

・鉄器川 香崙  悠木碧さん



注1 ブレーブス

 昭和五十年頃に全盛期を築いた阪急ブレーブスのこと。

 親会社は阪急電鉄で、系列に宝塚歌劇団があったことから、ブレーブスの観客席にはタカラジェンヌが見受けられたらしく、選手の中にはタカラジェンヌと結婚する事例も見受けられた。

 現在の後継球団はオリックスバファローズ。


注2 始球式

 試合開始直前に行われる。

 日本では、来賓がマウンド、或いはその手前から捕手に向かって投げる。

 この時、打者は空振りするのが通例であるが、この先例は大隈重信が務めた始球式にあると言われる。

 現在は世界各国で日本式の始球式が行われるが、アメリカでは来賓席からボールを投げ入れる方式が主流だった。


注3 アンダースロー

 野球の投球方法の一つで、肩より低い位置から投げる方法。

 サブマリン投法とも呼ばれる。

 昭和四十年代は「魅惑のアンダースロー」「史上最強のアンダースロー」と呼ばれた南海ホークスの杉浦忠選手がその代表格だったが、同時期のホークスにはもう一人のアンダースロー投手である皆川睦雄選手も在籍していた。

 杉浦選手と皆川選手の引退後に阪急ブレーブスに入団した山田久志選手が昭和五十年代に大活躍し、その後も平成時代には「ミスターサブマリン」と呼ばれた千葉ロッテマリーンズの渡辺俊介選手がいる。

 アンダースローの投球は打者の手元で浮き上がるような軌道を描くので、打ち難いと言われている。

 腰を傷め易いので注意が必要である。


注4 背番号17

 現役時代の山田久志選手の背番号が17だった。


注5 レーザービーム

 外野手からの返球は通常、内野手が中継してバックホームされる。

 しかし肩の強い外野手は一直線にバックホームできる場合があり、その返球の美しい軌道を称してレーザービームと呼ぶ。


注6 四連打であれば、先制点が入っていてもおかしくありません

 実際のプロ野球であったのは五連打無得点。

 昭和三十八年八月十四日の阪急と近鉄の試合。

 概要は、以下の通り。


1、右前安打→盗塁死(一死無走者)

2、中前安打(一死一塁)

3、左前安打、一塁走者三塁で憤死(二死一塁)

4、安打(二死一、二塁)

5、中前安打、二塁走者本塁で憤死(三死)


 流石にこのまま再現はできないので、四連打で無得点とした。

 理論上は六連打で無得点が有り得るらしい。

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