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四回裏

 四回裏、六点リードのドラゴンズの攻撃は一番バッターの桐下選手からです。


「桐下選手、一度もバットを振っていませんね」


 そう言われると第一打席、第二打席と、いずれもフォアボールでした。

 タイガースのマウンドは前の回からリリーフした井ノ元選手です。

 井ノ元選手はマサカリ投法に類似した投げ方で、素晴らしい速球を武器にしているようです。


「どうして先発しなかったのか不思議ですね」


 さあ、桐下選手、右の……、おや、左のバッターボックスに立ちました。

 どうやらスイッチヒッター(注1)のようです。

 これにはマウンド上の井ノ元選手も驚いています。

 気を取り直して、ピッチャー第一球、投げました。

 ボール、外角低め、僅かに外れたようです。

 首を傾げる井ノ元選手、判定に不服のようですが、抗議はありません。

 ワンボールから振り被って、第二球、投げた。

 ボール、今度は内角高め、これまた外れています。ボールツー。

 バッターボックスの桐下選手、全くバットを振る気配さえ見せません。

 ピッチャー振り被って、第三球、投げた。

 今度は明らかなボール球、高めに外れてボールスリー。

 このままストレートのフォアボールではいけません。

 マウンド上の井ノ元選手、振り被って、投げた。

 今度は外角高めに決まってストライク。

 しかしスリーボール、ワンストライクでバッター有利は変わりません。

 井ノ元選手、振り被って、投げた。

 外れてボール、フォアボールです。

 先頭バッターを歩かせてしまいました。


「ずっと、この状況ですよね」


 まるでコントロールされているかのように、毎回同じような攻撃が続きますドラゴンズ。

 次のバッターは二番、小見選手。左のバッターボックスに入ります。

 一塁ランナーの桐下選手は盗塁やタッチアップを成功させて、全てホームに帰って来ています。バッテリーとしても充分に警戒しているでしょう。

 さあピッチャーの井ノ元選手、セットアップポジションから、投げた。

 小見選手、見送ってボール。

 キャッチャーの樋口選手、やや首を傾げましたが、ピッチャーへ返球します。

 この間に桐下選手は二塁へ盗塁成功。


「鮮やか過ぎますね」


 井ノ元選手、二塁を見て驚いている様子です。

 マウンド上、井ノ元選手はランナーを気にしていますが、桐下選手は二塁ベースを踏んだまま動く気配がありません。


「ここはバッターに集中して欲しいですね」


 井ノ元選手、セットアップポジションから、投げた。

 内角低め、バッター掬い上げた。

 打球はセカンド後方に落ちて、ライト前に転がります。

 ノーアウト、一塁、三塁。ドラゴンズ、再び得点のチャンスを作りました。

 ここで迎えるのが尾藤選手です。

 第一打席はライトへの大きな犠牲フライ、第二打席は敬遠となっています。

 右のバッターボックス、その巨体から溢れる闘志は迫力満点です。


「キャッチャーから三塁ランナーが見えないんじゃないですか?」


 確かに尾藤選手の大きさですと、見えないかもしれません。それがどう影響するか、注目しましょう。

 マウンド上の井ノ元選手、ランナーを気にしています。

 特に一塁ランナーの小見選手が、これみよがしにリードを大きく取っているのは集中力を削ぐ効果があるかもしれません。

 初球、井ノ元選手、投げた。同時に一塁ランナーがスタート。

 キャッチャーの樋口選手が二塁へ送球。

 これをピッチャーの井ノ元選手がキャッチしました。呆然とする樋口選手に井ノ元選手が返球しようとしますが、意思の疎通ができていません。

 三塁ランナーの桐下選手、ホームイン。二塁ベース上には小見選手、ダブルスチール成功です。


「やはり、樋口選手から三塁ランナーの動きが見えていなかったようですね」


 ドラゴンズはここまで想定しての打順でしょうか。

 ノーアウト二塁、七対零と点差が開いて、なおも追加点のチャンスが続きます。

 タイガースはマウンドに内野陣が集まって、今後の対応を協議しているようです。

 守備位置にそれぞれが戻って、試合再開。

 カウントはワンストライクからです。

 マウンド上、井ノ元選手、セットアップポジションから、投げた。

 尾藤選手の鋭いスイング、打球は左中間へ飛んで行きます。

 入るか? 入るか?

 残念、少し飛距離が足りません、フェンスに当たってフィールドに転がりました。

 二塁ランナーの小見選手は悠々とホームイン。打った尾藤選手は二塁に到達。

 センターの佐藤選手から、ようやく内野に返球されました。


「入りはしませんでしたが、素晴らしいバッティングでしたね」


 これでドラゴンズは八点目、ほぼダメ押しです。

 ノーアウト二塁、打順は四番の佐藤選手に回ります。

 右のバッターボックスに入った佐藤選手の成績ですが、第一打席は空振り三振、第二打席はデッドボールと、未だに快音が聞けておりません。

 マウンド上の井ノ元選手、キャプテンとしても踏ん張りどころでしょう。

 初球、投げた。内角低めの厳しいところバッター、苦しい体勢ながらも打った。

 三塁線、ボテボテのゴロですが、サードのペンテシレイア選手は左利き、ボールを拾って一塁へ送球。

 あっと、大きく上に逸れました。

 一塁はセーフ、二塁ランナーの尾藤選手も三塁に進んでいます。

 記録はエラー。両チーム通じて、初めてのエラーです。


「完全に打ち取っていただけに残念ですね」


 さあここで、二打席連続ホームランの武藤選手が右のバッターボックスに入ります。

 ノーアウト一塁、三塁。このチャンスで更に追加点が期待できそうです、ドラゴンズ。

 マウンド上の井ノ元選手、アウトが取れないまま苦しい投球が続きます。

 武藤選手に対して、初球、投げた。

 あっと打ち損じか、セカンド真っ正面にボテボテのゴロ。

 これを香崙選手が取って、セカンドベースカバーに入った姉に送球、そして一塁へ送球。

 4ー6ー3のダブルプレー、三塁ランナーの尾藤選手はホームイン、九点目が入りました。


「アウトカウントを増やすのが先決ですね」


 ツーアウト、ランナーなしで六番バッターの今井選手が左のバッターボックスに入りました。

 マウンド上の井ノ元選手、大きく振り被って、足を高々と上げて初球、投げた。

 バッター果敢に打って行く。

 しかし打ち損じたか、打球はピッチャーの目の前。

 井ノ元選手、素早く拾って一塁送球。

 スリーアウト、チェンジです。

 ドラゴンズ、この回、足を使った攻撃で三点を追加して、リードを九点に広げました。

声の想定(ボイスイメージ)

・桐下  和哉  鈴木達央さん

・小見  敏夫  前野智昭さん

・尾藤  大輔  稲田徹さん

・佐藤  竜也  櫻井孝宏さん

・武藤   龍  玄田哲章さん

・今井  雄三  蒼井翔太さん

・紀井  多聞  森久保祥太郎さん

・モリモット   関智一さん

・山岡  次郎  下野紘さん

・聖女クリス   小林ゆうさん

・ジョアンヌ   河瀬茉希さん

・藤井  照美  伊藤かな恵さん

・藤井  羅二夫 うえだゆうじさん

・ヘファイストス 中尾隆聖さん

・鉄器川 華蘭  竹達彩奈さん

・佐藤  由貴  芹澤優さん

・井ノ元 喜久代 丹下桜さん

・ペンテシレイア 日笠陽子さん

・長野  恵梨香 原由実さん

・倉田  祐子  阿澄佳奈さん

・樋口  鞆絵  喜多村英梨さん

・尾藤  弥生  沼倉愛美さん

・鉄器川 香崙  悠木碧さん



注1 スイッチヒッター

 左右の打席で打てる選手のこと。

 右投手の時は左打席、左投手の時右打席に立つ。

 こうすることで、投手の投げる球が見易くなるので打撃力向上に繋がるが、他人の倍以上の努力を打撃練習に使わなければならないので、守備などが疎かになるとも言われている。

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