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殲滅のデモンズイーター   作者: 彩峰舞人
第一章 悪魔を喰らうもの
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episode8 小さな別れと報奨金①

 リアムとアリアがラ・ピエスタの町を発つ日。

 宿屋木漏れ日の前では小さな別れが行われていた──。


「もっと泊っていけばいいのに」

「ペトラすまぬな。吾輩たちもそう暇ではないのだ」

「そうなの? 少なくとも太郎丸ちゃんはいっつも暇そうに見えたけど」


 ペトラに頭を撫でられる太郎丸の顔は一見すると不満そうに見えるが、尻尾が左右にブンブン振られていることからも喜んでいることがわかる。基本太郎丸は頭を撫でられることが好きなのだ。


「まぁ予定があるのは事実だから」

「そっか。予定があるなら仕方ないよね。──あーあ。もっともっといっぱいおしゃべりしたかったなー」


 口を尖らして言うペトラにリアムは苦笑し、そして思う。あれだけ話し倒してもまだ足りないのか、と。


「実際そんなことを口にするのはペトラ、君だけだよ」


 言いながら二階の窓に目をやると、窓越しにこちらを覗いていた従業員たちが慌てて身を隠す。

 同じく二階の窓を見やったペトラは、


「みんなもそんなに怖がらないで話してみればいいのに。──アリア様が悪魔をやっつけてくれなかったら私たちみんな死んでたんだよ! わかってるの!」


 最後は窓に向かって大声でそう言うも、再び従業員が顔を覗かせることはなかった。

 ペトラは大きな溜息を落として言う。


「大体さ。こんなに綺麗な人なんてそうそう見れないし勿体無いよ。ましてやデモンズイーターと話す機会なんて絶対にないし。アリア様もそう思わない?」


 同意を求められたアリアはコクコクと頷く。頷いてはいるが自分のことを言われているとは露ほども思っていないことがリアムには手に取るようにわかる。

 笑顔を浮かべたペトラは、アリアの手をギュッと握りしめた。


「アリア様、また来てね!」

「タカン鳥、美味しかったからまたく……る」

「うんうん! 太郎丸ちゃんもまた来てね」

「うむ。今度来るときまでに饅頭をメニューに加えておくのだぞ。鉄火茶があればなおよしだ」

「あはは、そうだね。前向きに検討しておくよ」


 言ったペトラは最後にリアムへと視線を移し、


「リアムちゃんもよかったらまたおいでね」

「ついでのように言われているのがそこはかとなく不愉快だけど……まぁ立ち寄ることがあったらまたお願いするよ」

「うんうん! このペトラお姉さまにドンと任せなよ!」


 言葉通りドンと胸を叩く男気溢れるペトラに別れを告げたリアムたちは、町を出る前に報奨金を受け取るべく戦士ギルド風見鶏へと向かう。

 たまにはこんな別れも悪くないと思いながら。

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