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殲滅のデモンズイーター   作者: 彩峰舞人
第一章 悪魔を喰らうもの
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episode69 アリアの我儘②

「なんにせよ僕たちの仕事は終わった。星都に戻ろうか」

「体よく誤魔化されたようだが吾輩もほどほどには疲れている。追及はしないでやろう。屋敷に戻ったらステファニー殿と団子を食うか」

「あれはどうする、の」


 アリアの視線の先を追えば、ようやく目が覚めたらしい村人たちがノロノロと立ち上がっていた。


「なんで俺はこんなところに……?」

「確か昼飯を食っていたはずなんだが……」

「おいおい! なんで村がこんな有様になってんだ⁉」


 村人たちはこぞって困惑と驚きの混ざった表情を浮かべている。村人たちの何人かがよそ者であるリアムたちに気づいたようで、疑心に満ちた目を投げかけてきた。


「面倒なことになる前にさっさと退散しよう」

「賛成だ」

「てっちゃん、もう大丈夫だから出ておい……で」


 アリアが奥の茂みに向けて手招きすれば、ガサガサと葉を揺らして鉄心がひょっこり顔を出した。この騒ぎにもかかわらず逃げ出さなかったことにリアムは感心した。


「で、てっちゃんって?」

「鉄心だからてっちゃん。可愛いでしょ……う?」


 得意げな顔をして言うアリア。基本可愛いものが好きなアリアは、気に入るとなんにでも愛称をつける癖がある。リアムがそれについてとやかく言うつもりはないが、問題なのは愛称をつけたものはそれがなんであれ手元に置いておこうとする癖がある。

 ちなみに屋敷に置いてあるアリアのカバンの中身は、リアムの価値観からすればガラクタと呼べるもので埋め尽くされていた。


「この馬は借り物だから当然持ち主に返さないといけない。それはアリアもわかるよね?」

「でもでもてっちゃんはもうアリアに懐いている。これ以上ないくらい懐いている。絶対に離れたくないって言って……る」


 アリアの隣に並んだ馬は、自らの顔をアリアの頬にすり寄せて甘えた仕草を見せる。まるでリアムに見せつけるかのように。


「ね」

「アリア」

「…………」

「アリア」


 聞き分けのない子を諭すようにジッと見つめると、アリアはすかさず両手を組んだ。


「主はおっしゃいました。てっちゃんがいたらアリアはもっともっと悪魔退治を頑張るだろうと」

「それはもう主の言葉じゃないよ……」

「もう諦めよ。アリアが一度こうと決めたら絶対に考えを変えないことはリアムが一番よく知っておろうが。金はいくらでもあるのだから払うものさえ払えば譲ってもらえるのではないか?」

「はぁ。そういう問題じゃないんだけど……」


 リアムは溜息混じりにそう言って頭をガリガリと掻いた。


「じゃあこうしよう。あの老人に譲ってくれるかは聞いてみる。もし譲ってくれると言ったらアリアの好きにしていい。でも断られたたらきっぱり諦めること。それでいいね?」


 アリアは考えるように視線を宙に泳がせ、不承不承といった感じでコクリと頷く。リアムが安堵の息を漏らしたのは言うまでもなかった。


「じゃあ早速ザバンの街に戻ろうか」

「うん、早く戻ろう」


 返事をするや否やアリアは颯爽と鉄心に跨る。伸ばされた手は当然のようにリアムへ向けられていた。


「いや、もう急ぐ必要はないから馬は……」

「アリアはとても急いでい……る。それはもうとてつもなく急いでい……る」

「急いだところで……はぁ。わかったよ」


 アリアの手を嫌々掴んで鉄心に跨るリアム。


(どうせ譲ってくれと言ったところで拒否されるに決まっている)


 ここは我慢だと自分に言い聞かせ、ザバンの街に向かうのだった。

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