episodo46 死の旋律を打ち砕け!③
「安心してください。デモンズイーターの名は伊達ではありません」
カナカナと鳴くグリムリーバーを見据えながら言えば、フェリスの顔から安堵の表情が一気に広がった。それと並行して瞳が虚ろなものへと変化していく。
「さすがに……デモンズイーターといったところか……でも気をつけろよ。……リアム君が口にした通りあの悪魔たちは普通じゃない……連携を駆使した攻撃を……」
体を二度三度とぐらつかせたフェリスは、最後まで言い終えぬまま地面に倒れ込んだ。
「死ん……だ?」
「勝手に殺しちゃ駄目。気絶しただけだから」
「そっか」
アリアが剣を水平に構えた状態で頷く。リアムも改めて距離を取ったグリムリーバーを見やれば、こちらを見ながらうろうろと左右に動き回るばかりで襲ってくる気配がない。
(さすがに飛び込んでは来れないか)
太郎丸の攻撃以上にグリムリーバーがアリアを警戒しているのがわかる。はた目には単純に剣を構えているように見えるだろうが、今のアリアは剣の結界というべきものを周囲に張り巡らせている。
結界内へ足を踏み入れようものなら、もれなく致死の斬撃が待っている。グリムリーバーは悪魔の本能と言うべきもので危険を察知しているのだろう。
(それにしても……)
リアムは先程の光景を思い返す。拘束したグリムリーバーにアリアが斬りかかった刹那、リアムは正面にいたグリムリーバーの口から音が発せられるのを聞いた。
羽虫が耳元を飛び回るような不快な音。そして、音に合わせるように右にいたグリムリーバーが飛び退いたのも見ている。拘束されたグリムリーバーも音に反応していたが、アリアの斬撃の速さもあって対応が間に合わなかったに過ぎない。
故にリアムは確信する。普通なら信じられないことだが、音を発したグリムリーバーが司令塔の役割を担っているという事実を。
(僕たちが相手にしていたグリムリーバーも統率は取れていたけれど、それでもこれほどの動きは見せていなかった。司令塔に次ぐ者がいたのかもしれないけど、今となっては確認する術はない。なんにせよ殲滅するべきはあの司令塔だ)
リアムから見て左側に立つグリムリーバーを倒すようアリアに指示を出すも、先に動き出したのはグリムリーバーだった。リアムには目もくれず互いに交差を繰り返しながらアリアに迫ってくる。グリムリーバーもまた、アリアを最大の障害だと認識し、すみやかに排除する決断を下したのだろう。
(僕ならいつでも殺せると判断したか。まぁ正しい選択だけど)
互いの距離がある程度縮まると、一体のグリムリーバーがけたたましい叫声を上げながら跳躍する。上と下。同時に襲い掛かることでアリアを仕留める算段らしい。
「させるかッ!」
空からアリアに襲い掛かるグリムリーバーに向けて、リアムは即座に光の盾を発現させた。光の盾は体の全てをカバーする防壁と違って部分的な防御魔法ではある。しかし、耐久力は防壁より数段上だ。
突然目の前に現れた光の盾に張り付く形となったグリムリーバーは、邪魔な障害物を排除しようと激しく拳を叩きつけるも、再び例の音が聞こえるや否や飛び降り、今度はアリアの背後に回るような動きを見せてくる。
(やっぱりあれが司令塔で間違いない)
司令塔を司るグリムリーバーの目には、明らかにほかの個体とは違って知性の色が垣間見える。太郎丸の言う突然変異の個体なのかそれとも別の要因があるのか考察する必要はあるも、今はそのときではない。
「リアム、油断するなよ」
リアムを庇うような動きを見せながら太郎丸は言う。リアムは光の盾でグリムリーバーをけん制しつつ、正面のアリアに視線を向けた。




