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殲滅のデモンズイーター   作者: 彩峰舞人
第一章 悪魔を喰らうもの
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episode23 口は災いの元②

「聖女様からもそそうのないようにと堅く申しつかっております。先程申し上げた通り我々になんでもお申し付けください」


 ベルトラインの言葉にリアムが礼を述べようとしたまさにその時、


「なんでも言っていい……の?」


 アリアが口を開けば、先程を遥かに上回る悲鳴がメイドたちから一斉に上がった。アリアが口にするなんでもは大した要求でないことをリアムは知っている。が、それを口にしたところで到底納得するとも思えなかったため、あえて口を閉ざすことにした。


「お前たち、私に恥をかかせるつもりか」


 ベルトラインの低い声がメイドたちに向けられる。


「「「誠に申し訳ございません!!」」」

「──メイドが大変失礼いたしました」


 床に頭を擦りつけるような勢いで頭を下げるメイドを尻目に、ベルトラインはハンカチを頬に宛がいながら謝辞を述べる。アリアはなんで頭を下げられているのか理解ができていないようで、カクンと小首を傾けていた。


(まぁこれが普通の反応だから元々文句を言うつもりもないけど)


 ペトラにセフィリナと変わり者との出会いが続いたため感覚が多少マヒしていたが、メイドたちの反応こそが本来のあるべき姿なのだ。

 リアムは笑顔を作って見せ、


「大したことではありませんので気になさらずに。──メイドの皆さまも安心してください。デモンズイーターだからといって人間を食べたりはしません。あくまでも悪魔を食べるのが専門なので」


 これは場を和ませるためのリアムなりの冗談だった。だが、思いとは裏腹に新たな悲鳴が上がると瞬く間にその数を増やしていき、メイドたちを叱咤していたベルトラインまでもが表情を青くしながら後ずさりをする始末。

 この事態を引き起こしたリアムはといえば、いよいよ頬を掻くしか手がなかった。


「リアムは冗談がド……下手」


 アリアが混乱するメイドたちをジッと見つめながら言う。アリアに言われたら世話ないが、今回ばかりは反論の余地もなかった。


「どう収拾をつけるつもりなのだ?」


 太郎丸が呆れた面持ちで言う。


「別にどうもしないさ。確かに冗談が少しばかり下手だったかもしれな──」

「違う。ド……下手」

「くっ! ……確かにド下手だったのは認めるけど、勝手に拡大解釈したのは向こうのほうだし」


 そうは言いつつもいつまでも玄関ホールで足止めされるのも面倒なので、リアムは大きな咳払いを一つして見せた。ベルトラインとメイドたちの視線がこちらに集まったのを確認し、さらに念押しとばかりに二度三度と咳払いをする。

 

「すみませんがそろそろ僕たちを部屋に案内してくれませんか? それなりに疲れていますので」


 今も多少引きづっている気持ち悪さから抜け出すため、ひとまずベッドへ寝転がりたかった。ベルトラインはハンカチで忙しなく顔を拭いながら、


「重ね重ねのご無礼、なんとお詫びすればよいのか……」

「さっきも言いましたが気にしていません。それで部屋の案内は誰が……」


 視線を左から右に流すと、メイドたちはより一層怯えの色を濃くさせる。さっきと違うのは全員が全員リアムから視線を微妙に逸らしていることだ。

 一度でも目があったら最後、人身御供にされてしまうとばかりの態度に、さすがのリアムも途方に暮れた。


「まいったな……」

「お前たち!!」


 ベルトラインがメイドたちを一喝する。


(今のベルトラインさんに叱られるのはメイドたちも納得いかないだろうなー)


 そんなことを思いつつ、リアムはたった今思いついたことを口にした。

 

「僕たちを最初に部屋へ案内してくれたメイドさんには、もれなくデモンズイーターの呪いにかからないおまじないをプレゼントしようと思います」


 メイドたちは驚いたように互いの顔を見合わせる。その後激しい獲得競争がメイドたちによって繰り広げられるのだが、そこにちゃっかりと加わるベルトラインがいたことは長くメイドたちの語り草となった。

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