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ワープ描写が止み初期地点である、国家レグナントの都市にログインする。
「明日は休みだし、行けるとこまで行っちゃおう」
昨日の戦闘で消費した弾薬をショップで補充し、ゲートから始まりの草原にワープする。
草原でゲートから離れるよう奥に進み戦闘を繰り返していると、木が生い茂る森にたどり着く。マップを確認するとこの森は『深緑の森』という名前らしい。
弾には余裕があるし、入ってみようかな。
森に入ると先ほどまで眩いばかりの日差しに照らされていた景色とはいって変わり、日差しが殆ど差し込まなく、所狭しと生えている木の影響で視界が狭く感じる。
「始まりの草原とは違ってずいぶん見難い場所だね」
私はいつでも撃てるように銃を手にし、草木生い茂る森の中を慎重に進んでいく。
森に入ってから5分ほどたっただろうか、歩き続けていると後ろの茂みから微かに音が聞こえ銃を向ける。
耳を立てて奇襲に備え待っていると、敵が茂みから飛び出しこちらに襲い掛かってきた。
来るのがわかっていたため余裕をもって回避し、姿を確認すると襲ってきたのは長い尻尾に深い緑色をしたトカゲのような見た目のモンスターだ。むき出しの体に銃口を向けトリガーを引こうとした途端、背後からさらに音が聞こえ横に飛ぶ。
胴体スレスレを敵の切り裂くような攻撃が通り過ぎ、着地するときには周りを5体の敵に囲まれた。
「攻撃はくらわなかったけど囲まれちゃった。くふっ、楽しい」
一人で敵に囲まれピンチであるはずだが、この少女は楽しそうに口を歪め笑っている。
そんな様子に危険を感じたのかトカゲが襲い掛かってくる。
時間差をつけ襲い掛かってくるトカゲたちの場所を確認し、最初に飛んできた敵に銃口を向け2発撃つ。銃弾は真っ直ぐトカゲの頭に向かうとそのまま命中し、仰け反ると勢いを無くし地面に落ちていく。その光景を確認することなく、背後から来る敵に同じように弾を撃ち込む。3匹目が襲い掛かってくる頃には距離が殆どなく、噛みつく攻撃を回避しつつ左手で腹を殴り体制を崩させ、続く4、5匹目は殴った勢いを使い、右足で回るように蹴り飛ばし、無防備になったトカゲたちに向けて銃弾を放ち続けるとポリゴンとなり戦闘が終わった。
そのまま森での探索と戦闘を続け、気づくと5時間ほど経っていた。
「敵の湧き方の傾向的に始まりの草原では1体が基本だったけど、ここでは最低でも2体以上の敵が襲ってくるね」
始まりの草原では1体の敵との戦闘で経験を積ませ、深緑の森では複数体との戦闘経験を積ませプレイヤーの腕を上げてくれるようだ。
一般の人は武器を持っての戦闘経験などVR世界以外ではありえないので、戦闘に慣れさせてくれるこの設計は、初見殺しはあるもののかなり良心的である。
私は休憩を取るためにセーフティエリアに入って切り株に座り、メニューを開いてアイテム整理とスキルポイントで能力パラメーターを上げる。
スキルポイントは昨日ソフィアが取ったクリティカル増加のようなスキルのほかにも、アバターの能力値を上げることや特殊な攻撃を放つスキルが習得でき、RPGで良くあるレベルアップによる自動的なステータス上昇がないため、人それぞれ個性が出る仕様となっている。
私は反応速度に追い付いていないスピードを上げるためにAGIと攻撃力の底上げにSTRにポイントを振り、20分ほどまったりと休憩を取った。
「さて、そろそろ狩りに戻ろうかな」
ソフィアはそう呟き、セーフティエリアを出ると眠くなるまで戦闘を続けた。