ビデオレター 後編
翌朝、私がビデオテープを再生できないでいると和美に話していたら、晴江が話しかけてきた。
「駅前の電気屋で、ビデオテープをDVDに焼き直してくれるサービスが有るわよ」
昔に看板が出ていたというのだ。
学校の帰りに、和美と晴江の三人で駅前の電気屋に出かけて行った。
若い大学生ぐらいの店員が出て来て、挨拶をした。
「なに?今時ビデオテープなの? うちの機械も動くかなぁ」
そう言って、ビデをテープを機会にセットして、そこに有ったDVDをセットして、機械を動かした。
「ああ、まだ動くわ。待っときなよ」
そう言って、20分ほどで件のシーンをDVDにコピーしてくれた。
「これ、みんなで見るのなら、YOUTUBEに上げた方が良いぜ。
みんなで見れるだろう。誰か電話かせよ」
そう言って私の電話を取り上げた。
いったんお店のPCに動画を落として、YOUTUBEにアップしてくれた。
「このアドレスをみんなに送れば、いつでも見れるぜ」
そう言って、アドレスを転送してくれる。
安心して、家に帰って画像を見ると、土管のようなコンクリートの井戸から、髪の長い女が這出て来るだけのが動画だった。
「こわーい。」などと晴江や和美にラインを送ったが、明るいベッドの上で見たところで、怖くもなんともない動画だった。
しかし、恐怖はこの夜から続いた。毎日、毎日、この女が井戸から這出て来て、毎夜近づいて来るのだ。
三日目に、和美と晴江に相談したら、晴江が、
「じゃあ、私も見てみようかしら」
と言った。
(おまえ、見ていなかったのかよ)
その夜から、ぱったりと夢に見なくなった。
よくあさ、学校で晴江が言った。
「こわーい、なにこれ、夢に出てきたわよ」
晴江が大騒ぎしている。
それで、ほかの女子達にも話が広がった。
「うそーぉ、夢に出てきたわぁ」
翌日に、クラスで大騒ぎになった。
そのうちの一人が、アドレスを貼ってツィッターでつぶやいた。
本物の「ただ子の動画」だとバズった。見た者がその日の晩に確実に夢に見るのだ。
怖いもの見たさで再生回数がどんどん伸びたし、コピーされて世界中に広がった。
この動画は、ただ子が最後に見た者の夢の中に十日間現れて、呪われて死ぬのだ。
それが、最後に見た者がどんどん変わるので、二日目の動画を見れない状態なのだ。
その日、私は夢を見た。
すごくやつれたただ子が井戸から這出て来て、私に近づいてきたのだ。
そして、顔を近づけて言った。
「あんた、何をしてくれたのよ。私は休む間もなく、世界中の人を呪い続けないといけないのよ」
そう恨み言を言って消えた。
つまり、ざっと一日86,400回の再生回数を上回ると、呪いの対象が一秒ごとに変わるのだ。
それは、それは、忙しい呪いのビデオになってしまったのだ。
最後の投稿から十月たっていたのね。




