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異世界群像物語  作者: 黒井 狸
第ニ章 異世界道中膝栗毛
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 間話.とあるレポート



 このメモは、私が自身の考えをまとめるために記載すると共に、もし私に万が一のことがあった際、この不可思議な現象に巻き込まれている同胞の助けになればと思い記述する。



1.この世界に関する考察

1-1.環境について

 まずはじめに、この文章を読んでいる同胞であれば、既に直感的に理解していることだろう。

 体感的にはと前置きが必要となるが、ここは概ね地球に酷似した環境である。

 動植物に差異はあるものの、似通っていると言って問題ない範疇に思える。

 仮にここが類似した別の惑星であったとしても、不自然なほどに似ている。


1-2.現地の人間について

 前項同様だが、あまりにも似すぎている。

 別の環境で進化した生物が、ここまで似るものなのだろうか。

 以上の点について、下記のような仮説を立てた。


1-3.仮説

 『ここがどこか』に対する仮説は幾つか考えたが、どれも決定打に欠ける。

 いわゆる並行世界や別次元の地球、全く別の似た惑星、どれも空想の域を出ない。


 ただ、なぜ生態系が似通っているかについては、一つ仮説を立てた。


 これも想像の域は出ないのだが、恐らく彼らの先祖は我々と同じだと思われる。

 我々『プレイヤー』と呼ばれる存在のように、ある日別の世界――地球からやってきたのではないだろうか。

 その原因までは現段階では分からないが、酷似する理由としては妥当性があると考えている。


 帰還の方法を知るには、その原因を知る必要がある。

 一旦はこの仮説を基に、彼らの先祖が残した情報を調査していくつもりである。



2.自分達の状況

2-1.身体について

 自身の身体を確認する限りでは、元の身体から変化は無いように思える。

 記憶と同じ位置に古傷もある。

 ただし、これは『AVATAR』においてキャラクタスキンをデフォルト(現実と同じ)にした場合のみだろう。


 同行者であるアインの元■□■□■――<CODE:00 認識阻害>――□■□■□が、なぜ明らかに違う状態なのか原因は不明だ。


 同様に身体能力の向上等についても、原因は分からない。

 いわゆるリミッターでも外れているのかとも思ったのだが、それだけでは説明がつかない事象が多い。


2-2.言語について

 説明がつかない事象の一つとなる。

 現地の人々と当たり前のように意思疎通を行なっているが、我々が口にしている言語は日本語ではない。

 発声も文字も全く日本語ではないが、問題なく理解できている。

 不可思議な力で翻訳されている訳でもなく、別の言語として認識している。


 何が原因で言語を習得したのかは不明だが、いつの間にか第一言語同様に使用できている。

 逆にこちらの住人に日本語は通じなかった。


2-3.魔法に関する実験結果

 説明のつかないものの最たる現象である。

 原理は全く想像もつかない。

 明らかにゲーム内の架空の現象を引き継いでいるとしか思えないのだが、差異も見受けられる。


 なぜ使用できているかは不明にせよ、幾つかの実験を行なったので結果を記録する。


2-3-1.回復魔法

 何名かに協力を依頼し実験した結果、回復魔法は現地人への効果が鈍いと分かった。

 全く効果を発揮しない訳ではないが、体感的には10倍以上の時間がかかると思って良い。


2-3-2.魔力(MP)切れに関して

 ゲームとの最も大きな違いとなる。

 何故かいわゆるMP切れが発生しないのだ。

 感覚的にも分からないが、疲弊したり消費したという印象も無い。

 ゲーム中であればMPが枯渇する回数の魔法を使用してみたが、使えなくなる様子は無かった。


2-3-3.ゲーム中に存在しない魔法について

 同行者の煙草に火を点けた時に気付いたことだが、強くイメージすることによって、存在しない魔法が使用できるようだ。

 私が使用したのは、ライター程度の極小火力の魔法となる。

 『火炎放射(フレイムスロワー)』の火力を極限まで弱めようと試行錯誤した結果、偶然使用できた魔法である。


 このことから、魔法という現象はゲーム内の架空の現象を、単純に引き継いでいるだけでは無いと思われる。



3.最後に

 ここまでの仮説に、現状で確証は無い。

 この世界がどこなのか、どうして我々はやってきたのか、それを知る手掛かりは現段階では何も無い。


 もしかすると、現地で同行するに至った女性が語っていたように、神という者があらゆる世界で同一であり、各地に同じような生物を作っている可能性も全く否定できない。

 我々がこの世界に迷い込んだのも、全ては神の気まぐれなのかもしれない。

 (無神論者である自分には、積極的に賛同しかねる仮説だが、可能性の一つとしては理解しておきたい)


 しかし、帰還を諦めることなく調査を進めたいと思う。




 もし、これを読んだ誰かが帰還できたのであれば、そして私が既に死んでいるのであれば、私が生きていたことを家族に伝えて欲しい。

 そして、願わくばそうならないことを祈る。



 日本国防陸軍 予備役一尉 ■□――<CODE:00 認識阻害>――□■



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