第21話「王様と王子」
遅くなりました( ; ; )
でもまだ一週間終わってないから!
週間更新できてるから(震え声)!
馬上でゆられながら、王子の背中にしがみつく。
馬はまっすぐ城に向かっている。
「悪いが、しばらくはダンジョン探索は休止だ」
王子が背中越しにそう言った。
低く、淡々とした口調だったが、胸中は穏やかではないだろう。
「戦争が始まる」
そうなるだろうってことくらいは分かっていた。
思ったより早かったな。
もう少し時間が欲しかったが、まったく準備ができていないわけじゃない。
間に合うだろうか。
城に到着した。
でもそこはいつもの俺たちの部屋ではなく、それよりさらに奥にある、一番立派な建物だ。
「ついてきてくれ」
さっと馬から下りると、足早に進む。
赤いじゅうたんと、格調高い土の壁、高く高くそびえ立つ塔は、ヨーロッパらへんにありそうな、サラダなんとか教会を思い起こさせた。
扉に近づくと、王子に気づいた門番が何も言わずに扉を開ける。
すんごい豪華な人力自動ドアだな。
えらくなった気分。
そこには、またさらに豪華な景色が広がっていた。
ロビーは、家一軒入るんじゃないかという広さ、一面に敷かれた赤いカーペットと、6畳分くらいありそうな大きな肖像画が目に入った。
この肖像画は王と王妃だろうか。
ヒゲがゴージャス過ぎて、威厳がありそうだな。
王子は、無駄に2方向からカーブを描いている階段の近い方を駆け上る。
肖像画の下の、これまた威厳がありそうな扉を門番が開けてくれた。
「父上! なぜプキトルに使者を送った! これがどういう意味か分かっているのか? わざわざ開戦のタイミングを教えているようなものだ!」
王子は部屋に入るなりそう言った。
王子の父上、つまり王か。
ここは、謁見の間みたいなものか。
赤いカーペットの、何段か高い台座に、値段的にも高そうなイスに、ヒゲも衣服もゴージャスなお人が座っていた。
宝石を埋まった杖を持ち、宝石が埋まった王冠をかぶっている。
優しそうな目をしているな。
「ミグラス、礼をわきまえぬか。王族たる者、落ち着きをもて」
王が諭すような口調でそう言う。
低く落ち着いた声だ。
「落ち着き!? そんなことを言っている場合か! 今に戦争が始まってもおかしくはないんだぞ!」
いつもは落ち着いて、器量が大きい感じがする王子が、ここまで情動に任せているのは新鮮だな。
それだけ事態が逼迫しているということか。
「分かっておる」
王はそう答えた。
「分かっている? 兵も武器も十分でないこの状況で戦争が始まってもいいとでも?」
「時が経てば十分な準備ができるのか? 十分とはなんだ?」
王が静かに言い返すが、言葉にならない怒りが含まれているの感じる。
王が言葉を続ける。
「いつまで民が蹂躙されるのを見届ければいいのだ? きっと街灯だけでは終わらない。集落と民の命がいくつも失われたが、今度やつらが打つ手はなんだ? 被害はどれくらいになる?」
少しの間が流れた。
「もうこれ以上、我が民が失われていくのを黙って見てはいられん」
王は本気で言っているようだった。
情に流される王は無能説あるが、俺は嫌いじゃない。
「しかし、負け戦の被害は、その比ではないだろう。父上は今の戦力で勝てると思うのか」
王子が、先ほどの感情にまかせた口調ではなく、感情を抑えた声でそう答える。
少し冷静になったか。
「無論だ。こちらにはアルテミスのご加護と、何より我々には鉄より硬く、決して折れない強い意志がある」
おいおい精神論かよ。
めっちゃ負けるフラグやん。
「せめて、飛空船ができるまで待って欲しかった……」
王子は誰に言うでもなく、そう呻いた。
本当今さらなんだけど、のんびり作ってて申し訳ない。
そんな事情があるなら、もっと急かしてくれても良かったんだが……。
「飛空船、か。そこもとが異国技師のヒデオか。プキトルの回し者ではあるまいな?」
詮議をかけられた。
今さらそんなこと言われてもな。
「この者は十分に国に貢献してくれている。王とはいえ、失礼な発言は許さん」
何か言い返した方がいいのかと思っているうちに、王子が言ってくれた。
嬉しいこと言ってくれるじゃないの。
「フィガロからの報告も受けているだろう」
王子がそう付け加える。
そういや、裁判官の生意気ショタっ子、元気にしてるかな。
残念ながら、魔法を教えてもらうのは、戦争が終わってからになりそうだ。
「あの魔法でも抜け道はある」
王がそう反論する。
民には情が厚いけど、よそ者には冷たいのね。
正しい感性だ。
「あの気球を見ただろ? こちらに利する兵器を、簡単に技術提供してくれる敵などいない」
兵器のつもりじゃなかったんだけどな。
まあ、そんなことを言っている場合じゃないか。
「なぜ、そう言い切れる。いざという時に気球とやらに何かが起きれば、我が兵は全滅だ」
「なら、ずっと疑っていればいい。承認は得たはずだ。責任は俺がとる」
王子はそう言い残して、部屋を出てった。
「ええええ……」
思わずそう言葉を漏らした。
コミュニケーション頑張れ……。
リア充の権化みたいな性格しているクセに、親子の会話は不得意すぎだろ。
「許してくれ。国を預かるものとして、ああいう物言いになったのだろう」
王の間から引き返している最中、王子はそう言った。
「俺は良い王だと思うぞ。俺は好きなタイプだな。それより、国の権力者同士があんな言い争いしてどうする。親子ゲンカかよ」
親子だった。
「ふ、ヒーローに諭される日がくるとはな。すまない。確かにそうだな。しかし、今回の件で民の命が無駄に奪われる。誤った判断だ」
まだ腸が煮えくりかえっているらしい。
王に対する態度と俺に対する態度が違うな。
王とは親子だから遠慮のない言い方にもなるか。
それにしても、つき合いも長くなってきてるし、俺にそんなに気を遣わなくてもいいのにな。
「まあ、要は俺たちの準備が終わればいいんだろ? 命がけでやってやるさ」
俺の言葉に、王子は意外そうな顔をした。
「お前が俺らの国の事情をくんでくれるのか?」
「当たり前だろ? 何を今さら。これまでの恩もあるし、俺はこの国とお前らが好きなんだ」
「ヒーロー……!」
王子が俺の肩を抱く。
「やっぱり、お前は俺のヒーローだ!」
その目にはうっすら涙を浮かべている。
「泣くなよ。まだ何も成し遂げてないじゃないか。これからが踏ん張りどころだぞ」
「ああ! やってやろう! 俺たちの国を救うんだ!」
ふふふ。任せたまえ。
大いに救ってやるさ。
プキトル国よ、ケンカを売る相手を間違えたな。
切り札が飛空船だけだと思うなよ?
魔改造された俺の闇デッキ達が火を吹くぜ!
ひゃっはああああああーーー!
今日もお読みいただき、ありがとうございます!