第2話
バーを出たおれたちは、タクシーを拾い、党の仲間が待つという池袋へ向かうことにした。電車では乱交パーティに巻き込まれるため、正常な異性愛者は移動にはもっぱらタクシーを用いるのだ。
ヨシさんが早稲田通りで手を挙げると、早速タクシーが捕まった。車内に乗り込み、目的地を告げると、運転手が話しかけてきた。
「アナタたち、アツいわね。羨ましいわあ」
運転手はオカマだった。
ヨシさんは作業着のポケットからおもむろにバタフライナイフを取り出すと、慣れた手付きでカシャッと開き、オカマの喉を切り裂いた。
「ギャー!」
オカマの運転手が喉を抑えながら叫ぶ。鮮血が飛び散る。ヨシさんは、バタフライナイフを逆手に持ち替え、オカマの運転手の腹をめった刺しにした。
「ウワー!!」
しばらくすると、オカマの運転手は叫び声を上げなくなった。事切れたようだ。
「吉田くん、降りるぞ」
そう言ったときにはもう、ヨシさんはタクシーを降りていた。おれも、ヨシさんを追いかけてタクシーを降りる。
ヨシさんはバタフライナイフに付いた血糊をぬぐうと、カバンから2リットル入りのミネラルウォーターをとりだし、返り血を洗い流しながら言った。
「ダダの作業着はいいぞ。なにしろ撥水性がすごい。カマ野郎の返り血も、こうして水をかけてやれば綺麗に洗い流せる」
「そのための作業着だったんですね…。しかし、なにもいきなり殺さなくても…」
「同性愛者の治療は不可能だ。それなら殺してやったほうがよかろう。それに、今のは密室で2対1だった。絶好のチャンスだったじゃないか」
「そ、それもそうですね」
「タクシーの運ちゃんには高齢者が多いが、高齢者に同性愛者は少ない。次はたぶん、まともな運ちゃんに当たれるさ。ま、気を取り直して池袋に向かおうじゃないか。あ、途中で水を買うのも忘れんようにしないとな」