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ソフィア先生の魔法講座

「本日の午前中はソフィア先生の授業になります、昼食後ーーー」


 朝食後の紅茶を嗜む余韻の時間に、ローレリーヌから今日の予定を確認する。


 9年前、ブルノとフェリクスらに助けられたらしい私達は、この地を治めるシュタイアーマルク辺境伯レオポルドに引き取られた。

 らしいと言うのは、乳幼児だった私にその頃の記憶がないからだ。

 だから、父と母がどんな人だったのかは、周りの人達から聞いただけの事しかわからない。

 幸いにも、私の母方の祖父にあたる彼の元で、私は何一つ不自由なく生活を送らせて貰っている。


 私と同じく両親を失ったローレリーヌは、住み込みで私の専属のメイドとして仕事に従事している。

 当時、騎士団から離れていたブルノも、私が引き取られるのと同時についてきたが、騎士団には復帰しなかったようだ。

 なんでも私兵の方が動きやすいといいう理由で、現在はお屋敷の警備として雇われている。

 私にとってはブルノは親戚のおじさん、ローレリーヌは母親代わりというより年の離れたお姉さんという感覚が近く、周りに人がいない時は砕けた会話をしたりしている。


 貴族の娘となった私は、祖父が雇った教師達に多くの事を学んでる最中である。

 貴族は12歳になったら貴族学校に通うことになるが、それまでの年齢は自宅で家庭教師から学ぶのが一般的だ。

 私は学ぶことが好きだったようで、特に今日の教師であるソフィア先生に会うのは、とても楽しみにしている。


「では、まいりましょう」


 紅茶を飲み終えた私は席を立つと、先生を出迎えるべく、教鞭を受けるために用意された部屋へと向かった。







「ごきげんよう、マリアンヌ様」


 先生はお手本のような綺麗な姿勢で挨拶をしてくれる。


「ごきげんよう、ソフィア先生」


 私たちは軽く朝の挨拶を交わし、目の前のソフィアと呼ばれた女性に着席を促す。


 ソフィア先生は、私達人間の耳より長く尖った特徴的な耳を持つハイエルフの女性だ。

 そしてもう一つ、人種とは別に彼女の特異な特徴をあげるとしたらその身丈だろう。

 ソフィア先生はフェリクスと同じくらいかそれ以上、190cmを超える身長は女性にしては非常に珍しく、その身長もあって金のロングヘアーや銀の瞳、足元まで隠す白の祭服がよく目立つ。


「今日は、今まで学んできたことを軽く復習しましょう」


 どうやら今日の授業は復習のようだ。


「はい、よろしくお願いします!」







「私たち人間やエルフなどの亜人種は、基本的に精霊の力を使って術を行使しています」


 私は、ソフィア先生の前に立って、先生から教わった内容を説明する。


「この際、術を使うにあたって重要なのが詠唱と加護持ちの有無です」


 詠唱や加護のあるなしによって、消費する魔力量や威力は変化する。


「加護の中でも基本的な精霊は四大精霊と呼ばれ、風の精霊シルフ、水の精霊ウンディーネ、火の精霊サラマンダー、土の精霊ノームがこれに該当します」


 他にも光や闇、四元素からさらに特化した木や雷や氷の精霊や、錬金や探知、睡眠、魅了など特殊な状態異常に特化した精霊も確認されている。

 また、加護を与えるのは精霊だけではなく、幻獣や神族、悪魔等の加護を与えられる希少な者もおり、数や能力などその全貌はまだ解明されていない。


「加護を賜る基本的な方法としては、精霊は各地の村や町などの精霊祭の時に、神族の加護は神殿の礼拝時に、悪魔や幻獣の加護は直截的な本人との契約で、それぞれ賜ることができるとされています」


 中には寝てる時に夢の中で、向こうから加護を押し付けに来る場合もあったり、そのパターンも一概ではない。

 ちなみに私は、火の精霊サラマンダーと、歌の女神エウテルペーの加護を賜ってる。

 前者は物心ついた精霊祭の時に、後者は昨年の礼拝で賜った。


「次に、魔力量は瞳の色で判別できます」


 私達は生まれ持った時から魔力の量が決まっており、瞳の色はその人間の魔力の総量であるとされている。

 ただし、生まれた時から全ての魔力が引き出せるかと言えば、そうではない。

 魔力の総量はイコール使える魔力ではなく、幼少期から魔力を引き出す鍛錬を積むことで使える量が増える。


「黒色の瞳は魔力がほとんどない人で、茶系色は平均値、青や緑系また紫の瞳は平均より多く、それより更に多いのが、金や銀、赤とされています」


 普通の人間のおよそ3割が黒目、人間の約半数が茶系色、残り2割が青や緑、紫の瞳とされている。

 また、エルフ族の99%は青や緑系色の瞳で、紫色の瞳は魔力量自体は青や緑と変わらないが、この色は人族の王族に多く特殊な加護持ちが多い。

 金や銀色の瞳は、一部の神族やハイエルフのみが持ち得る色で、赤色は魔族の中でも高貴なる者の象徴とされている。


「また、特殊例として青と緑のオッドアイやマジョーラカラーも極少数だが存在し、私はこれに該当します」


 こちらは金や赤、ソフィア先生の銀色の瞳の者より魔力の総量は少ないが、通常の緑や青や紫より多く、人間が得られる中では最上とされている。

 戦いの中では、こういった情報も重要で、自分より魔力が高いやつには挑まない、というのも状況判断の一つとされていますが、結局は魔力量の違いでしかありません

 ブルノのようなブラウンの瞳でも、実践経験や戦闘センスで魔力を上回る相手を凌駕する者も存在するから先入観を持たない方がいい。

 なぜなら、私は全くと言っていいほどブルノに勝てる気がしないからだ。


「以上が魔法に関する基本的な情報になります」







「はい、よくできました、勉強なさってますね」


 ソフィア先生は満面の笑みで微笑む。

 この笑顔に、一体どれだけの男がやられたのだろうかと、余計なことを考える。


「では、それを踏まえた上で、日課の魔力総量を増やすために鍛錬を始めましょう」


 地味だが、勉強と同じで、何事も日々の積み重ねが重要だ。


「はい!」


 私たち2人は席を立ち上がると、日課の訓練のために中庭へと向かった。




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