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二本角との戦い

 広い通路を二本角の魔獣が駆け抜ける。

 姿勢を低くした魔獣は、角を前面に突き出し、フェリクスをしゃくりあげるようにぶちかます。

 二本の角をフェリクスは剣で受け止めるが、魔獣の方が力が強く空中に飛ばされる。


「むぅ!?」


 空中で体を捻るフェリクスを串刺しにしようと、二本角は体を回転し着地のタイミングを図る。

 しかし、ソフィアが氷の刃を放ち、二本角の動きを妨害し押し返す。


「すまん、助かった!」


 無事に着地したフェリクスは、腰を低くし敵の突撃に備える。

 それを見た二本角は、頭を振り上げ叫び声を上げた。


「私の後ろに!」


 ソフィアは魔法を詠唱しつつ前に走る。

 それに反応したフェリクスは後ろに飛び、お互いの位置関係をスイッチした。

 二本角の叫び声とともに展開された魔法陣から風の刃が飛ぶ。


「ストーンウォール!」


 地面から迫り上がった土壁により、風の刃を防ぐ。

 崩れ去る土壁の中から、ソフィアの横を掠めてフェリクスの放った風の槍が二本角の表皮を掠めた。


「まだだ!」


 自らの放った風の槍とともに飛び出したフェリクスは、攻撃を回避した二本角に間髪を入れず迫る。

 二本角は体勢を崩しつつも、頭を下げフェリクスの剣を受け止めようとした。

 しかし、回避行動で重心がうまくのらず、最初から角狙いのフェリクスの攻撃により片方の角が空中に舞う。

 怒り狂った二本角は、自らの体も顧みず、地面に展開した魔法陣から炎を撒き散らすが、フェリクスは、自らの周囲に風を発生させて炎を吹き飛ばす。


「ウォーターボール!」


 フェリクスのエアリアルと、ソフィアの放ったウォーターボールによって炎は瞬く間に鎮火させられる。

 炎を鎮火させられた二本角は、捨て身の攻撃で目の前のフェリクスを狙うも、姿勢を低くしたフェリクスは敵の突撃を受け止めた。


「ストーンシャワー!」


 フェリクスはタイミングを合わせて二本角を弾き飛ばすと、二本角の上から石の礫が降り注ぐ。

 敗北を悟った二本角は、回避も防御も取らず全魔力をもってフェリクスに風刃の槍を叩き込む。

 フェリクスも同様の魔法を放つが、相殺されなかった風刃の槍がフェリクスに迫る。

 しかし、地面からせり上がってきた土の壁によって、その魔法はフェリクスに届かない。

 安堵するフェリクスの横を、土壁を回り込んだ二本の風刃の矢が掠める。

 この行動を学習していた二本角は、風刃の槍に風刃の矢を混ぜて放っていた。


「ソフィア!」


 土壁の魔法が間に合わないと悟ったソフィアは、攻撃を回避しようとしたが判断が遅れ、一本が足を掠める。


「きゃっ!」


 ソフィアの足に激痛が走り。その場に転がる

 それを見た二本角の表情が満足そうにニヤつく。

 その間に後ろに回り込んだフェリクスは、二本のロングソードで首を挟み込むようにして首を刈り取る。


「ハッ!」


 フェリクスは、転がる首の眉間に剣を突き立て完全にトドメを刺す。

 すかさず怪我をしたソフィアに視線を向けると、彼女は自分の足首に回復魔法をかけており安堵する。

 その瞬間、一瞬の殺気を感じ取ったフェリクスは、ソフィアの名前を叫びながら彼女に覆いかぶさるように飛びつく。


「え!?」


 突如としてフェリクスに抱きつかれたソフィアは慌てる。

 しかし、彼の体が痙攣している事に違和感を感じたソフィアが視線をずらすと、苦痛に歪むフェリクスの口元がわずかに震えているのが見えた。


「我ながら、完!璧!なタイミング!」


 警戒し周囲を見渡すと、通路の柱の影から一人の男が姿を見せる。

 即座に敵を迎撃しようとしたソフィアだったが、自らもフェリクスと同様に口が痺れて震えている事に気付く。

 彼女は自分の体に視線を落とすと、脇腹に吹き矢のような物が刺さっているのが目に入る。

 

「どう?この麻痺毒の即効性、なかなかのもんでしょ!」


 ソフィアは自分とフェリクスに刺さった吹き矢を引き抜き地面に捨てると、薬を取り出そうと皮袋に手を伸ばす。


「いやいや、それはダメっしょ」


 男は吹き矢で腰にぶら下げた皮袋の紐を切って、地面に落とす。

 そこで意識を失ったソフィアは後ろに倒れこむ。

 男は手に持ったナイフをくるくると回しながら2人に近づくと、皮袋を足で蹴飛ばす。


「こんな奴らに真正面から行く奴はバカでしょ」


 ナイフを逆手に持ちかえた男は、2人に向かってまっすぐと振り下ろした。


「なっ」


 振り下ろされたナイフを、後ろ向きのフェリクスが手で受け止める。

 振り向いたフェリクスの眼光に気圧された男は、すかさず後ろに飛ぶ。

 落ちてた剣を拾い上げ、フェリクスはその場に立ち上がる。


「おいおい、化け物かよ」


 フェリクスは怪我してない方の手にロングソードを持ち構える。


「痛みのおかげで少し楽になったぞ」


 視界はぼやけ、いつもより力は入らない、それでもこの場でフェリクスが倒れれば2人とも殺されるだけだ。

 今は少しでもチャンスを作るべく、フェリクスは軽薄な男に対して虚勢を張る。


「はん、強がりだね!」


 男は剣で何度もフェリクスに打ち込む。

 フェリクスはその攻撃を受け止めるのが精一杯だった。


「ほらほら、ジリ貧じゃないですか」


 男は防戦一方のフェリクスにトドメをささず、剣で徐々に体を刻み弄ぶ。


「そろそろ飽きてきたなぁ、これで終わりにしましょうか」


 フェリクスの剣を弾き飛ばした男は、無防備な彼に向かって剣を振る。

 わざと体勢を崩したフェリクスは、口の中に含んでいた物を彼に向かって吹き飛ばす。

 男の右目に激痛が走り、剣を振り回す。


「クソっ!クソっ!クソクソクソ、クソがぁああああ!」


 フェリクスは、右目を抑え剣を振り回す男と距離を取る。

 右目に自分の放った吹き矢を返され男は、わざとらしく怒り狂う。

 鬼の形相でフェリクスを睨み付けると、視線をずらし嫌らしく口角を上げる。

 その意図に気づいたフェリクスは、ソフィアの体を覆いかぶさるように隠す。

 ニヤつく男の周りに魔法陣が浮かぶ。


「エアリアルカッター!」


 男はわざとらしく、2人を避けて風の刃を飛ばす。

 それでもフェリクスは体を微動だにせず、ソフィアの顔の横に両手を立てて覆いかぶさる。


「ははは、騎士道精神って奴ですか?くだらないな、死ねよ!」


 狙いを定めた男は2人に向かって風の刃を飛ばす


「へっ!?」


 しかし、男の放った風の刃はせり上がった土壁に防がれた。

 今日三度この土壁によって救われたフェリクスであったが、この魔法を放ったのはすでに意識を手放したソフィアではない。

 呆ける男は首筋に冷たいものを感じ、即座に横に飛ぶ。


「おい、てめえ、こいつらに何してる?」


 先程まで男のいた場所に、中年のおっさんが現れる。


「ハッ、くるのが遅えぞ相棒」


 満身創痍のフェリクスは、そんな状態でも目の前に現れた相棒に強がる。


「うるせえ、死に損ないはそこで大人しくしてろ、後は俺がやる」


 そう言って回復薬の入った皮袋をフェリクスに投げつけると、視線を敵に向ける。

 ブルノは味方を傷つけた敵に向かって殺気を飛ばす。


「ひっ」


 思わず後ずさりする相手の動きに合わせてブルノは前に出る。


「おい小僧、舐めた真似してんじゃねえぞ」

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