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フラン

現在プロローグから文章修正中です、

話の本筋は変えてませんが、描写を増やしているので文字数が増えております。

現時点で、1章終了時点までが修正済となっています。

そのために更新が少し遅れています、申し訳ありません。


追記 タイトル変更しました、修正作業完了しました。

「1週間ぶりね、ブルノ、フェリクス」


 エレオノーラさんが訪ねてきてから1週間が過ぎた。

 私達は彼女とともに、オスマルクの国境側にあるブルノとフェリクスが駐留するボーブルへと来ていた。


「お久しぶりです、マリアンヌ様」


 2人が私の前に跪く。


「すでに連絡してあるとおりに、我々は明日、シュタイアーマルクに駐留するアンスバッハ軍に向けて進軍いたします」


 カティアがテーブルに地図を広げると、2人も立ち上がり全員でテーブルを囲う。


「本作戦は、南方のノルマルクから派兵される軍が本隊となります」


 ナタニエルが地図上の駒を動かす。

 エレオノーラさんからの伝令によると、今回はギュスターブ殿下の方からも兵が派遣されており、全体の指揮権はそちらにある。


「我々の作戦内容は、敵を北から牽制しつつ、飛空挺への突入部隊のサポートをするのが主な目的だ」


 3艇のうち1艇には、私達が向かう事になっている。


「ナタニエルはここに残り部隊を指揮します、フェリクスとブルノとソフィア先生は私と共に敵の指揮官が乗っていると思われる飛空挺に突入します」


 今回は、ドミニク、マティアス、カティアは私と同行せず、ナタニエルと行動を共にする。

 私たちは、エレオノーラさんから伝えられた作戦内容の詰めの確認作業を行い、翌日の出陣に備え早めに就寝した。







「オスマルク、ならびにノルマルクからの進軍を確認!」


 オペレーターの1人が飛空挺の艦長に報告する。


「ふん、無駄なことを」


 アンスバッハはシュタイアーマルクを陥落させた後、飛空挺の魔力を最充填させつつ、本国にいる自分たちの派閥からの援軍を待ち、ヴェルニエ侵攻のための戦力を整えた。


「全軍戦闘準備、三番挺は下方の射線の通りやすい平野で敵に先制攻撃、そののちに上空からアルムシュヴァリエを降下、同時に地上軍が進軍して敵を蹂躙する」


 命令を受けたオペレーターは各隊に指示を出し、三番挺は地上軍と共に南方に進軍を開始する。

 先行する三番艇が首都の上空から離れると、遠見で前方を確認していた兵士が声をあげる


「前方の空中に多重魔法陣確認!」


 三番挺の艦長が笑い声をあげ、手で顔を抑える。


「バカが、この距離で届くわけないだろ」


 目標と100キロ以上離れている状態で魔法を放ったとしても、魔力が分散するだけだ。

 もし仮に届いたとしても、飛空挺の魔法障壁がある。

 減衰した威力の魔法など、この飛空挺の魔法障壁の前では焼け石に水だろう。

 そして何より、長距離からの魔法狙撃にはもう一つ大きな問題がある。


 その時である、飛空挺を大きく外れ、上空に一筋の光が流れる。


 そう、魔法が届いたとしてもこの距離を正確に当てるなど不可能なのである。


「ハハハ、一応魔法は届くみたいだぞ、魔法障壁くらい張っておいてやれ」


 指揮官につられて兵士たちも笑い声を上げる。

 先の戦いで完勝したアンスバッハの兵たちは、敵を完全に油断していた。


「へ?」


 ほんの一瞬だった、超長距離から放たれた何かが魔法障壁をいとも簡単に貫き、飛空挺の司令部に着弾すると、一瞬のうちにその場所が吹き飛ばされる。

 司令部を破壊された飛空挺はコントロールを失い、地上へと落下を始める。

 地上軍の一部は退避が間に合わず、落下する飛空挺に押しつぶされ瓦解する。


「なんだあれは!?」


 後方に待機する一番挺の艦長が、座席から身を乗り出す。


「わかりません、超長距離から何かが放たれたとしか」


 画面をみるオペレーターが困惑する。


「艦長!上空の魔法陣消滅しております」


 前方を監視する兵士が声を上げる。


「連射はできないようだな、引き続き前方を監視しつつ魔法障壁を展開しろ」


 緊張から手が汗ばむが、艦長は部下を落ち着けるためにも冷静を装う。

 敵の1回目と2回目の攻撃はまるで違った、おそらくだが1回目の射撃で距離を修正して、2回目で当ててきたと思われる。

 あの攻撃が再チャージまでどれくらいのスパンが必要かは不明だが、ここにとどまっていても、オスマルクの方に侵攻したとしてもあの脅威からは逃れられない。

 かといって、後継者争いをする他の派閥を振り切って戦争を仕掛けた彼らが、アンスバッハに逃げ帰る選択はなかった。


「全軍、先程の狙撃方向に向かって進軍、あれをどうにかしなければ私達の未来はないと思え!」


 一番挺の艦長が命令を下すと、二番艇を見ていた兵士が声をあげる。


「二番挺から発光信号を確認、北の上空から何かがこちらに向かってきている模様です」


 一番挺の艦長は席を立ち上がる。


「急速回頭!二番挺とともに飛来物に対して攻撃を開始する!」


 急速回頭した一番挺は二番挺と並び、謎の飛来物に対して迎撃を開始した。







「こちらフラン、目標の撃墜を確認、任務を終了し本体と合流する」


 フランは長尺の武器を棒状の金属に戻すと、腰に巻いたベルトについた筒に仕舞う。


「あとはエレオノーラ達に任せておけば大丈夫ね」


 立ち上がったフランはその場から撤収しようとしたが、なにかの気配を感じ一歩下がる。

 すると、フランの目の前の足元に一本のナイフが突き刺さる。


「ま、これだけ派手にやってれば目をつける奴もいるよね」


 木陰から十数人の黒装束を纏った者達が現れると、そのうちの1人が口を開く。


「上空に浮かんだ魔法陣が仇となったな、貴様は危険だここで仕末する」


 男達は上空に浮かんだ魔法陣から、フランの位置を確認しこの場所へと急行した。

 男達がかけつけてみれば、女は魔力を使い切ったと思われる状態、護衛もつけず1人で行動、全てが襲撃者にとっては都合のいい状態だった。

 ゴーレムとの戦い以降、グルーエンバーグ陥落の戦いから表舞台に出てきたフランは敵にとって脅威だった。


「んー、誘い込まれたとは考えないのかな?それとも君達も捨て駒なのかな?」


 フランはいつもと変わらぬ態度で、人差し指で顎をトントンしながら思案を巡らせる。


「強がりを!」


 襲撃者達が動くと同時に、フランはベルトについた筒状の中にしまってある別の金属の棒に手をかける。


「やらせん!」


 襲撃者の1人は持っていた剣を振り下ろすが、フランは攻撃を回避すると同時に、敵の手首を掴み他の襲撃者に向かって投げ飛ばす。

 敵が怯んだ隙に、足首に巻いたナイフホルダーからナイフを取り出すと、1人の襲撃者の頸動脈をナイフで切り裂き、他の襲撃者の胸元に入り込み心臓を刺突すると、そのまま彼を盾にして敵の攻撃を受ける。


「クソがっ!」


 フランは、先程手にかけた金属の棒を筒から引き抜き形状変化させると同時に、ナイフを持っていた方の手を離す。


「なっ!」


 フランは彼女の長尺の武器を短くしたような武器を手に持ち、敵に向かって引き金を弾く。

 すると、乾いた音とともに数人の兵士が心臓や頭部を貫かれ地面に倒れる。


「なんだそれは!!」


 フランは次々と引き金を弾き、リーダー格の男以外の襲撃者達が次々と地面に転がる。


「これは銃よ、貴方もアンスバッハの飛空挺を見たでしょ、どっちもこれからの新しい技術よ」


 乾いた音とともに武器を地面に落とした男は、手首を抑え焼けるような痛みに叫ぶ。


「これからは魔力がなくても戦える時代が来るわ」


 フランは転がる敵の額に向けて、銃口を突きつける。


「バカな!貴様からは魔力を感じる、それは魔法だろう!!」


 男は動揺し瞳を揺らせる。


「ええそうね、私がさっき使ったのは魔法だし、これは私専用だけど、同じようにこの形に金属を加工すれば量産できるし、これで撃てるのは魔法だけじゃないのよね、ま、うちの隊長は全部終わった後に量産するみたいだけどさ」


 フランは笑みをこぼす。


「出来損ないの私でも、戦えるようにしてくれた隊長には感謝しないとね」


 ハイエルフの女性と、魔力を全くもたない人間の男性の間に生まれたフランは、幸いにも母の血を色濃く受け継ぎ、ハイエルフと同様、潤沢な魔力をその身体に宿していた。

 だが、魔力を持たない人間の血の方を精霊や神らが嫌った結果、彼女には加護が全く与えられず、その魔力は宝の持ち腐れとなっていた。

 彼女の持つ金属の棒には、精霊や神の加護だけを強制的に使役する魔術式と呼ばれる詠唱文が刻まれており、魔力を流すだけで予め決められている形状に変化する、その状態から更に魔力を流すと、魔法陣が起動し魔法が放たれるという仕組みである。


「貴様達さえいなければ!ギュスターブはあと少しで処刑されるところだった、それを急に現れたお前達が、お前達は一体なんだ!」


 男は声を荒げ、唾を飛ばす。


「少し喋り過ぎちゃったね、大量に魔力を使った後は気持ちが高揚しちゃうから、饒舌になっちゃうんだよね」


 フランはごめんねと呟くと、引き金を弾いて男を始末する。

 銃を金属の棒に戻したフランは、金属の棒をくるくると回しながらその場を後にした。




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