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魔鳥との戦い

「それじゃ、行ってくるわね!」


 領主邸の前でみんなに出立の挨拶をする。

 今回は、私以外の従者メンバーは全員待機だ。

 ブルノ筆頭に従者たちは食い下がったが、ヴァルトシュタイン卿が周りを説得した。

 ヴァルトシュタイン卿は、今回の戦闘に直接手は貸せないものの、私を敵の前まで送迎してくれる運びとなった。

 そして、私が負けた場合の保険でもある。

 私が勝てそうにない場合は、ヴァルトシュタイン卿が責任をもって連れて帰る、その条件で従者たちは納得した。


「ところで、徒歩で現場までいくんですかい?魔力の節約のためにも馬で行った方がいいんじゃないですか?」


 ブルノが周りをみて訝しむ。


「その事なら問題ない」


 ヴァルトシュタイン卿はその場にしゃがみ込む。


「失礼」


 そう言うと、ヴァルトシュタイン卿は片手で私を抱き上げる。

 突然のことに従者達が慌てるも、私は落ち着くように促す。


「しっかり、掴まっていなさい」


 彼は槍の石突の部分で地面を叩く。


「風よ!」


 私たちの周囲が風に包まれ、空へと浮かび上がる。


「なっ!」

「これは!?」

「...すげぇ」


 それぞれが驚きの声を上げる。

 風の魔法で空を飛ぶのは非常に難しく、そんなことができる人間はかなり稀だ。

 私も、訓練の最中に初めて見せてもらった時は驚いた。


「あとはよろしくね!」


 遠ざかっていくみんなに向けて、いつもより大きな声をかける。

 その後、ぐんぐんと加速して目的の場所へと駆ける。

 風の衣でくるまれているから向かい風もなく、移動はかなり快適だ。

 あっという間に目的地付近にたどり着き、魔鳥のいる手前の森の中へと降り立つ。


「私が同行するのはここまでだ、あとは教えた通りに頑張りなさい」


 私はいつ戦闘になってもいいように、ハルバードを召喚し握りしめる。


「はい!色々とありがとうございました」


 ヴァルトシュタイン卿にお礼を言うと、私は魔鳥のいる方向へと進む。

 少し歩くと森を抜け、開けたところに出ると、大きな岩の上に爪をたてた、どでかいカラスのような魔鳥が現れる。


 私を視認した魔鳥は甲高い叫び声を上げると羽ばたき、こちらにむかって風の刃を飛ばす。

 咄嗟に石突で地面を叩き、自分の周囲に氷の壁を展開させる。

 3ヶ月前のゴーレムとの戦いをきっかけに一皮剥けた私は、フェンリルの力を幾分か使いこなせるようになっていた。

 フェンリルを体内にとりこみ従えている事により、氷の魔法は無詠唱でも100パーセントの能力で使える。


「今度はこっちの番よ!ファイアトレイン」


 敵の攻撃を氷の壁で防いでる間に、魔法の詠唱を終わらせた私は、壁が崩れると同時に敵に向かって魔法を放つ。

 放たれた魔法は地面を走り、炎の軌道を描きつつ敵に迫るも、魔鳥は空を飛び、すんでのところで攻撃を回避する。


「まだよ!」


 目標が上空へと逃げたタイミングで、私は魔法をその場で爆発させて、上空へと炎が昇り立つ。

 ファイアトレインは2段構えの魔法で、今回の対魔鳥戦のために急遽仕込んだ魔法の1つで、爆発するタイミングは任意で発動できる。


 炎を掠めた魔鳥は甲高い鳴き声を上げ、こちらを睨み付けると急降下してきた。

 風の刃が氷の壁で塞がれたために、学習し直接攻撃に切り替えたようだ。

 私はハルバードを構えて投擲すると、魔鳥は寸前で浮き上がり、足でハルバードを蹴落とす。

 ハルバードは自動追尾だが、ヴァルトシュタイン卿の訓練で万能ではないと学習した。

 例えば少しかすっただけでも当たり判定がつくし、魔力を直接干渉させて追尾を解除する事も可能である。

 また、こちらが投擲する方向が目標と全然違う場合は、自動追尾の強制力が働くのに再演算の時間がかかる。


「やはり、こちらの武器の特性は知っているみたいね」


 敵の急降下を防いだ私は、再びハルバードを召喚すると、複数の氷の刃を周囲に展開させて、敵へと放つ。

 魔鳥は空中を旋回し、投擲される氷の刃を次々と回避していく。

 私はその間に新しい炎の魔法を詠唱する。


 氷の刃が途切れると、ハルバードに軌道を逸らされないように、魔鳥は旋回しつつこちらに向かって迫る、

 目前まで敵を誘い込むと、私はほとんどの魔力を消費して周囲に炎の壁を展開させる。

 魔鳥の視界を防ぐほどの高さの炎の壁を展開させるも、こちらが何かしてくると読んでいた魔鳥は寸前で急停止し炎の壁の前でホバリングする。

 敵の作戦を読み切った、と思った魔鳥は、歓びの鳴き声をあげる。


「残念、私の勝ちよ」


 その瞬間、上空よりハルバードが急降下し魔鳥の片翼を貫く。

 先程まで歓びの声をあげていた魔鳥は、一転、痛みから甲高い鳴き声をあげる。

 炎の壁で敵の視界を防いだ後、身体能力強化を使い真上にハルバードを飛ばした後、自動追尾による強制力が働き、ハルバードが上空で旋回すると、目標に向かって急降下したというわけだ。


「ハルバード!」


 私はすぐさまハルバードを右手に召喚すると、斧槍部を鎌の形へと変化させる。

 周囲に冷気を纏い、炎の壁を解除せずそのまま突っ切る。

 痛みで集中力を乱され、ずれた位置から突如として目の前に現れた私に戸惑った魔鳥は反応が遅れ、私が振り払ったハルバードに残った片翼が刈り落とされる。

 すかさず、返す刃で鉤爪の部分で敵の喉元を叩くと、武器を手放し開いたくちばしの中へと資金ん距離からファイアボールを打ち込む。

 喉を潰され、鳴き声もあげられずその場でのたうち回る魔鳥から距離を取り、徐々に氷漬けにして半身を地面と固定させると、私はハルバードを右手に召喚する。


「これで終わりよ」


 私は魔鳥に近づき、ハルバードを突き刺すと、フェンリルを封印した時と同じ魔法陣を展開させる。


「さぁ!魔鳥よ、私の物になりなさい!」




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